表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どちらが王妃?  作者: kanaria
第3章 自覚編
33/45

4 襲撃者と吐き気

その夜もまた魔王は来なかったが、昼間に行ったナイフ投げのおかげか舞の気分は晴れていた。

3日ぶりにすっきりとした気分のまま眠りについた舞を起こしたのは小さなもの音だった。


何だ?

音がしたような……。


はっきりとしない頭のまま上半身を起こすと鈍く光る物が視界に入った。

とっさに体を後ろに倒すと背後でトスッと何かが刺さる音が聞こえる。

黒い影が近づいてきたので、それの正体を確認する暇もなく舞はベットから転がるように降りた。


ヤバイ!

このままだと危険だ。

何とかしないと。

いつまで避けられるかだって分からない。

さっきまで避けられたのが奇跡だ。


またも投げられたナイフのようなものをギリギリで避け、枕の下に腕を突っ込む。

しかし何者かが背後に立つ気配がしたのでとっさに魔法で風の刃をとばす。

すると背後の気配は消えたが、またもナイフのようなものが飛んできた。


っ、どこからだ!?

何人部屋に侵入したんだ?

全く分からない。

何か良い手は……。


焦り、パニックになる寸前で先日魔王に教えてもらった事を思い出す。


「暗い中で人間は物が見えにくいのだろう?であるなら補助魔法で見えるようにすればいい。足りない物は魔法で補えば良いだけだ。魔法というものは使いたいと思えば使える。そろそろお前に教える事はなくなるだろう。」


そうだ。

私は幸い全属性の魔法が仕えるのだし何とでもなる。

今この状況が鮮明に見たい!

昼間に見ているように。


縋るような気持ちで枕の下のナイフを握りしめると、周りの景色が一気に色彩を帯びた。

すると黒い服に身を包んだ者が1人寝室の入り口付近に立っているのが見える。

そこに向かってナイフを投げるが黒服の人物はさらりとかわす。

その人物がかわしながら投げてきたナイフを結界ではじくとその隙に人影はいなくなっていた。


消えた!?

まずい!

どこに行った?


焦って気配を察知するための魔法を使うともうこの部屋に居ない事が分かった。

途端に体から力が抜け、その場に座り込む。

すると部屋の異変に気づいたミシェナが現れた。


「ま、マイ様!?まさかお怪我でも!?」


充満する血のにおいに気付いたミシェナが慌てて舞に駆け寄ってくる。

しかし舞の背後で倒れている黒服の人物を見て警戒態勢をとった。

その後一瞬でその人物が死んでいるという事を魔法で確認したミシェナは舞を抱きしめる。

温かいぬくもりを感じて舞は気を失った。





ふと軽く頭を撫でられた気がして目を覚ますと辺りは夕日によって赤くなっていた。


誰もいない?

撫でられたと感じたのは気のせいか。

それよりも、ここはどこだ?

私の部屋ではないんだが……。

何でこんな所に?


とりあえずベットから降りて部屋を見わたす。

頭から眠気がなくなると気を失う前の出来事が思い出されていった。


あ、襲撃者が……。

魔王妃候補になった時点である程度予想はしていたが実際に起こるとやはり怖いものだな。

思い出すだけで手が震える。

このような形で命のやり取りをするなんて。

それに、いくら自分が助かるためとはいえ他人を傷つけた。

あの時風で作った刃は完全に当たっていたはずだ。


何とも言えない思いになり唇をかみしめた後、頭を横に振った。


今は感傷的になっている場合じゃない。

とりあえず状況を確認するべきだ。

あの後どうなったのかも気になる。


少し気を緩めれば甦ってくる人を傷つけたという思いを出来るだけ頭の隅にやり部屋から出た。

するとそこではミシェナとアリシアたちが心配そうな顔をしていた。

舞が現れた事に気づいた4人は一目散に近づいてくる。

しかし、どう声をかけていいのか分からないようで口を開こうとしては閉じるという行動を数回繰り返す。

それが魚が口をパクパクさせるのと似ていて舞は笑った。


「心配をかけたようですまない。まさか気まで失うとは思ってなかった。深窓のお姫様でもないのにな。それであの後どうなったかが知りたい。教えてくれないか?」


いつもと変わらない様子の舞に4人とも複雑な表情を浮かべたが、それについては何も触れずにミシェナが答えた。


「襲撃者の数は不明です。これはマイ様がお目覚めになってから窺わなければならないと吸血鬼族長様がおっしゃられていました。また、襲撃者は恐らくすべてが人間の大陸の者だと思われます。魔族であればマイ様に襲いかかれるものが限られてきますのでわざわざ人間の大陸から暗殺者を用意したのでしょう。部屋に倒れていた者が人間でした。首謀者は今だ分かっていません。」


「分からない事だらけという訳か。それで私は吸血鬼族長に会いに行けばいいのか?」


「その前にまずお食事をとって下さい。」


そう言ってミシェナがアリシアたちに目くばせをした。

すると3人は一度その場から消え、パンやスープ、サラダを持って再び現れる。


うっ、気持ち悪い。

食べ物のにおいがやたらと鼻につく。

これでは食べられたものじゃない。


「悪いが食欲がない。出来れば下げて欲しいんだが……。」


舞が真っ青な顔をして片手で鼻と口を覆うのを見てアリシアたちは急ぎ食べ物を別の場所に転移させた。

そしてミシェナが風の魔法を使ってにおいを散らせる。


「すまない。助かった。」


少し顔に赤みの戻った舞が顔から手を退かす。

そこにアーシアがコップに入った水を渡してきた。

お礼を言ってから受け取る。

舞はその水を飲み、ようやく落ち着いた。

それを見てミシェナたちは唇をかみしめる。


「あの、先ほどの食べ物は何がいけなかったのでしょうか?出来るなら何かお食べになって下さい。」


ミシェナが必死に言うが舞は首を横に振った。


「なにがいけなかったのか分からない。食べ物すべてのにおいが鼻についてしまって。作ってくれた人にも申し訳ない事をしたな。だが、とりあえず今は何も食べたくない。1食抜くだけならそこまで問題もないだろう?」


「確かにそこまで問題にはならないかもしれませんが……。」


「いえ、問題になるわよ。だってマイ様は朝も昼も食べてないのよ。今抜けば今日一日何も食べてない事になるわ。」


複雑な表情をしたミシェナに変わってアリシアが反発をした。

しかしアーシアがアリシアを諌める。


「誰にだって食べたくない時はある!それにマイ様ほどの魔力があれば1年ぐらい食べなくても生きていける。」


えっ!?

1年食べなくても生きていけるのか?

驚きの新事実だな。

地球では絶対に有り得ない。


いささか他人事のように感じながら目を丸くしているとアリシアが怒りをあらわにした。


「何余計な事を言っているのよ!いくら1年食事しなくていいと言っても3日くらい食事しなければ頬がこけたりするわ。それに食べないでいられるのは魔力を消費しながら生活しているからであって体に問題がないわけではないの!」


「だからと言って食べ物のにおいであそこまで顔色の悪くなる人に無理矢理勧めても吐くだけ。」


「においの少ない野菜の千切りとかなら食べれるかもしれないでしょ!」


「でも、「アーシア、庇ってくれてありがとう。そうだな、においのほとんどない野菜の千切りとかなら食べれるかもしれない。ほんの少量で良いからもらってきてくれないか?」


舞の味方をしてくれているアーシアにお礼を言いつつアリシアにそう言うと、ミシェナがその場から消えた。

そして手にキャベツの千切りのようなものの少し入った皿を持って現れる。


「とりあえずにおいの少ない物を持ってきました。ですが無理はなさらないでください。」


心配そうな表情と共に差し出された皿を持ち、椅子に座る。

舞が以前頼んで作ってもらった箸を使いそれを口に入れると恐ろしいほどの吐き気がこみ上げてきた。

行儀も悪い上に作ってくれた人に申し訳ないがトイレに駆け込む。

少し落ち着いてトイレから出ると、アリシアとミシェナが真っ青な顔をしている。

それに気にしないで欲しいと言ってから千切りを片づけてもらった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ