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どちらが王妃?  作者: kanaria
第3章 自覚編
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2 侵入者の正体 

会議の中断を受けて舞はとりあえず部屋に戻ることにした。

しかし部屋の扉を開けると、ミシェナとアリシアたちが掃除をしている。


これは私が居たら邪魔にしかならないだろう。

魔法を使いながらテキパキとやっている。

だが、意外と時間がかかりそうだな。

普通に掃除するよりは楽そうではあるが、始めたばかりのようだし。


「えっ?マイ様?会議は終わったのですか?」


扉を開けたまま気まずそうに立っている舞を発見してミシェナが声を上げた。


「ああ、会議は中止になった。何だか変な人物が現れたからさ。ところで部屋には入らない方がいいだろうか?」


舞のこの問いかけで4人が慌てて顔を見合わせる。

それを見て舞はクスリと笑った。


「じゃあ、書物の宮に行ってくる。」


4人のすまなそうな表情に対して気にしないでほしいと笑いかけてから書物の宮へ足を運ぶ。


何を読もうかな。

今読みかけの本は特にないし。

突然現れた男について調べても本に書いてなさそうだ。

そういえばこの国って住民票とかあるのだろうか?

まあ、あったとしても顔写真とかないだろうからあの男かどうか判別出来ないだろう。

見せてくれるかどうかも分からないし。


考えながら歩いていると魔女族長のマリネージュと出会った。


「あら、マイ様じゃない。今日の会議はお疲れ様ね。初めてだから疲れたでしょう?」


「いや、思ったほど疲れてないな。途中で中断したおかげだと思うが。」


笑いかけてきたマリネージュに微笑み返すとマリネージュが舞の手を握る。


「じゃあ晴れてるし庭に行かない?今日の会議で聞きたい事とかもあるでしょう?知ってる事ならなんでも答えてあげるわ。」


最後の言葉が舞の耳に入った瞬間、景色が変化した。


ああ、またこのパターンか。

前にアーシアにやられたな。

というよりまだ返事してないぞ。

転移は返事を聞いた後でにするべきだと思う。

此処がどこにある庭だか分からないし。


うんざりとしながら周りを見渡すと近くに東屋が見えた。

マリネージュはそこに舞を連れて行く。

そして、どこからともなく椅子やテーブル、ティーセットなどを取り出して紅茶を入れ始める。


えっ!?

お湯ってどこから出てきた?

それ、飲んでも平気なのか?


椅子などが突然現れるのには慣れていたが、口に入れる物が現れるのは初めてで目を丸くする。

そのままじっと見ているとマリネージュが笑った。


「どうしたの?そんなに喉が渇いているのかしら?」


勘違いをしているマリネージュにそんな事はないと首を振る。

しかしお湯の事がすごく気になりティーポットから目を離さずに聞く。


「その紅茶は大丈夫なのか?突然現れたお湯で入れていたが……。」


その言葉を聞いて、丁度良く紅茶を入れ終わったマリネージュがお腹を抱えて笑いだした。


「も、問題ないわ。このお湯は調理場の水を此処に浄化しながら転移して沸騰させたものだもの。」


「そうなのか。……、確かに変な事を聞いたかもしれないが笑いすぎだと思うぞ。」


今だ口元を押さえているマリネージュに文句を言うが笑いは一向に治まらない。

なので舞は紅茶を飲みながら待つ事にした。

その紅茶が冷めたあたりでようやくマリネージュの笑いが治まる。

なんとなくすました雰囲気でマリネージュが紅茶を飲んだ。


「それで何が聞きたいのかしら?わたくしはただ誰かとお茶をしたかっただけだから、質問に答えるわよ。そういう約束だしね。」


いや、約束してないぞ。

私が口を開く前に連れて来ただろうが。

だがまあ、いろいろ知りたかったしちょうど良いか。

軽い質問からする事にしよう。

突然現れた男は誰だとか聞いても知らない可能性が高いだろうし。


気づかれないようにため息をついてからマリネージュを見る。


「そうだな、まずあの場に居た全員が持っていた書類について教えてくれないか?」


「書類?ああ、あれは事前に聞かされた議題について個人個人が調べた物よ。」


「個人で調べるのか?今回のは子供関連の議題だからゴーレム族長が用意したのではなく?」


舞が驚いて聞くと、マリネージュは不思議そうな顔をした。


「ええ、個人で調べるわ。ただ魔女族が何かを新しく開発した場合はわたくしが全員分の書類を作るけど。」


それって効率が悪くないか?

しかも個々で持ってる情報が違う訳だし。

議題に大きくかかわる族長が全体向けの書類を作成したうえで個人の調べた物を使った方が良いと思う。

今夜にでも魔王に言うか。


とりあえず結論を出して次に知りたい事を聞く。

とは言っても、もう聞きたいのなんてひとつしかないが。


「そうなのか。では話しが変わるが、突然現れた男は誰だか知ってるか?」


するとマリネージュがニヤッと笑った。


「あの男は東の魔国の第3王子らしいわよ。なんでも魔王様が魔王太子時代、上級魔獣に東の魔国に吹っ飛ばされて、その時に仲良くなったらしいわ。会議の後にシュドルクから聞き出したの。」


お茶に誘ったのはこれが言いたかったからか。

とはいえ魔王様至上主義の吸血鬼族長が話したという事は知られても良い情報って事だよな。

だが東の魔国と西の魔国は仲が悪いはずなのに王子と仲良くしている事が知れて大丈夫なのか?

しかも東の魔国に魔王が行っていたなんて驚きだ。

これは誰でも知っているのだろうか?


悩み始めていたところで突然近くから声が聞こえて来た。


「なになに?俺の話?照れちゃうなー。」


驚いて声が聞こえた方向を見ると例の青年が居た。

隣では魔王が苦い顔をしている。

魔王を見て舞とマリネージュは立ち上がった。

魔王が立っているのに自分たちが座っているのは流石にまずい。


「あら、魔王様。先ほどぶりですわね。散歩でしょうか?」


マリネージュが青年を無視して魔王に挨拶をする。

魔王も普通にマリネージュに返事をした。


「ああ、少しな。」


「えっ、俺の事無視?悲しいな。ほんとに泣いちゃう。」


会議の時と同様に青年が両手で顔を覆い泣き真似をする。


えっと、これは私も無視するべきか?

それだとかわいそうな気がするんだが……。


3人を舞が窺うがその間もマリネージュと魔王の話はあちらこちらに移動する。


「最近上がってきた研究結果だがあれは実用的でないな。もう少し簡易化出来ないか?」


「すぐにというのは難しいですわ。あれでも結構簡単にしたのですから。」


「ふむ。だが、あれでは使えない。」


「おーい、俺の事見えてる?」


考え始めた魔王の顔の前で青年が手を振るが魔王は一切反応しない。


うーん、第三者として見てると面白いな。

だが、私も空気的な扱いじゃないだろうか。

居ても居なくても良さそうだ。


「やっぱり無視!?酷過ぎでしょ!目も耳もあるはずなのに。」


青年はそう叫んだ後、ふと思い出したように舞を見た。


「あ、そういえば君ってさっきの会議に居た子だよね?俺はローラント・マクバニー・ウエヴァンスだよ。よろしくね。」


「マイ・アマミヤです。よろしくお願いします、第3王子殿下。」


先ほど得た知識を使い、ウインクをしてきたローラントに軽く頭を下げるとローラントがペチペチと舞の肩を叩いた。


「もー、硬すぎるよ!俺の事はローラントで良いから。あと、敬語もやめる事。俺は魔王位を継がないからぜんぜん偉くないし。」


「ですが……。」


困って周りを見渡すと魔王とマリネージュが黙って注目していた。


いつの間に!?

っていうより見てるんだったら何か言って欲しい。

一応敵国の王子なんだろう、この男は。

いくら敵意がないからといって扱い方が分からない。


焦ってしまい嫌な汗をかいていると魔王がまたもローラントの肩を掴んで消えた。

その後はおしゃべりを続けるような空気でもなく、マリネージュとわかれた。

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