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どちらが王妃?  作者: kanaria
第3章 自覚編
30/45

1 突然の侵入者 

朝起きてからミシェナたちとおしゃべりをしたり魔族に対する知識を深めたりし、夕方には魔王と共に魔法の使い方を練習していたらあっという間に1か月が経った。

その間は特に何もなく平和に過ごす事が出来た。

だが、今日はいつもと違う予定が組み込まれている。


はあ


何で私が西の魔国の族長会議に出なければいけないんだ?

私は族長じゃないぞ。

部外者が参加するなんて本来はあり得ないだろう。

どうせ結婚しなくても参加するようになるから今回から参加しろという魔王の言葉から上手く逃げきれなかった自分が恨めしい。

どこまで魔力主義なんだ?

別世界から来た私にまで参加を強制とは。

確かに結婚しなくても何らかの役職には就くと言われていたが、まさかそこまで高い位とは思ってもみなかった。


心の中で文句を言っていたが会議の場に着いてしまい、気持ちを入れ替えて扉を開く。

すると既に魔の9大貴族全員がそろっていた。

全員が後から入ってきた舞を見、それから書類に視線を戻す。

どうやら舞の参加を事前に知っていたようだ。

みな真剣な顔をして書類を見ている。

そのため円形の机にある2つの空席のうちどちらに座って良いかと声をかけるのも忍びなく悩んでいると、宰相であり淫魔族長のウィングベルトが顔を上げた。


「おはようございます、マイ様。マイ様の席はそちらです。」


手で指し示してくれた席にお礼を言ってから座る。


そういえば今日何を議題について何も知らないぞ。

本当に何で此処に居るんだろうか。

拒絶するような空気ではないが意味が分からない。


またしてもモヤモヤした感情が生まれ始めている時、扉が開いた。

そして魔王が堂々とした態度で部屋に入ってくる。

その間舞たちは立ち上がって頭を下げ続けた。


「頭を上げて座るがいい。」


椅子に座った魔王の放ったその言葉でようやく座る事が許される。

慣れない空気に少し緊張しつつ顔を上げると、魔王と目があった。


「お前たちも知っているだろうが、今日からマイが参加する。これはマイが別世界から召喚されたため我らとはまた違った知識を保持し、尚且つ魔力量が私に匹敵するためである。異論がある者はいるか?」


そう言って魔王が魔の9大貴族たちを見るが誰も反論をしない。

恐らく事前に話をつけていたのだろう。

魔王はひとつ頷くと再び口を開いた。


「では、本日の会議を行う。」


その言葉で立ち上がったのはウィングベルトだ。


「本日の議会で主題となるのはここ数百年深刻な問題になっている育児放棄による個体数の減少についてです。詳しい話をゴーレム族長お願いします。また、マイ様は急な御参加でしたので議題を伝えられず、申し訳ございません。」


深々と舞に頭を下げるウィングベルトに気にしないで欲しいと笑いかけると、ウィングベルトは微笑み返して座った。


議題は育児放棄による個体数の減少か。

確かに問題だな。

そういえばミシェナも言っていた気がする。

だが数百年も解決してないのは本当に酷い話しだ。

もっと前に何らかの手が打てたのではないだろうか?

それとも打った手がすべて失敗したのだろうか?

事前に話す内容を教えてくれたらもっと情報を集められたというのに悔しい話しだ。

まあ、参加を告げられたのが今朝だったし諦めるしかないか。


そう踏ん切りをつけてゴーレム族長を見ると彼は既に立ち上がっていた。


「はい、この問題は打ちだされた案の多くが失敗している事で有名な案件です。とは言え半魚人族、ゾンビ族に続いて吸血鬼族の個体数まで減り始めているために何とか策を練らなければなりません。」


魔の9大貴族の内3種族が既に減り始めているのか。

手を打っても失敗してこうなってしまったとは結構大変な事だろう。

今の治世が種族ごとに仕事を任せるという態勢だから特に問題が顕著になる。

ある種族の数が減るという事はその任されている仕事をする人数の減少に直結する訳だし。

とはいえ、子どもは手がかかる上に邪魔だから捨てるという魔族の根本的な思考を変えるのは難しそうだ。

すでに挑戦していそうだしな。


ゴーレム族長が言い終わり座ろうとすると魔女族長が口を開いた。


「なぜ前回の子どもがいらない場合はゴーレム族に渡すという習慣を身につけさせるという事案がその3種族で失敗したのかしら?あれで魔女族と堕天使族は減少が止まったというのに。原因が知りたいわ。」


その言葉を受けてゴーレム族が再びしっかりと立つ。


ほう、疑問はその場で言って良いのか。

口をはさんだ魔女族長に誰も何も言わないし、これが普通なのだろう。


会議の進行の仕方を知って舞の口角が少し上がった。


「原因はゴーレム族まで渡しに行くのが面倒というのが理由の大半を占めると考えられます。この3種族は魔女族や堕天使族と違い王都で子育てをしません。半魚人族は水中、ゾンビ族は湿気の多い場所、吸血鬼族は人気ひとけのない場所で子を育てます。」


「となると自分たちドラゴン族や人狼族も数が減り始めると危険という訳か。」


ゴーレム族長の話を聞き、ドラゴン族長が椅子に座りなおす。


「いえ、ドラゴン族と人狼族は一度に産む子供の数が1人ではないので一概に言う事ができません。恐らくドラゴン族は一度に2、3個の卵を産み、人狼族は4、5人の子を産むため個体数が減っていないのだと思います。」


その言葉でドラゴン族長と人狼族長は表情を多少緩めた。

しかし今度は半魚人族長が食って掛る。


「その理由じゃとわしら半魚人族は数が減らない事になるじゃろ!!何しろわしらは上級魔族の中で最も多く卵を産む種じゃしな!」


立ち上がって興奮気味にそう言った瞬間、突然机の上に男が現れた。

あまりの出来事に魔王と舞以外の全員が戦闘態勢に入る。

しかし魔王はそれを制すと侵入者に皮肉笑いを向けた。


「お前が来るという話しは聞いてない。それに今は会議中だ。理由によっては捕縛するが?」


それに対して侵入者も怯んだ表情を見せない。


「いや~、悪かった。まさか会議中だとは思わなかったんだよ。ただジェラルドが結婚したって聞いてさ。気になったから来てみたんだって。それに会議してるんだったら侵入者用の結界張っておけば良かったのに。」


あまりに軽い発言に魔の9大貴族たちが殺気立つ。


な、なんなんだこいつは。

周りの怒りをあおってるとしか思えない。

だが魔王の様子からして魔王の知り合いか?

しかし魔王が結婚したなんて事もない。

もう意味が分からない。


舞の混乱を余所に魔王と机から降りた侵入者の話は続いていく。


「侵入者用の結界なんぞ張る必要がない。盗聴と盗視用の結界だけで十分だ。侵入してくるような馬鹿などそういないしな。」


「へえ、そういうもんか。んで結婚相手を紹介してよ。そのために来たんだし。」


魔王の皮肉を受け流して男が要求を言った。

そんな男の態度に魔王はため息をつく。


「私は結婚などしていない。」


「え、ほんとに!?うっわ、とんだ無駄足じゃん。」


「そうだな。さっさと帰れ。」


取り付く島もない魔王の言葉に男が両手で顔を覆った。


「せっかく東の魔国から祝いに来た親友をそうやって追い返すのか?冷たい奴だな。」


東の魔国という単語に吸血鬼族長以外の魔の9大貴族が反応を示した。

しかし魔王は気にした様子もない。


「泣き真似をするな。気色悪い。お前を親友と思ってもいない。」


そう言われて再び顔を上げた男が舞を見つけた。


「あれ?この子って魔の9大貴族じゃないよね?どうして此処に居るの?」


いる理由が自分でも理解できていない舞は唐突な質問に答えられない。

そんな様子を見て魔王が男の肩をガシッと掴んで消えた。


えっと、これって会議はどうなるんだ?

普通に中止だろうか。


消えた魔王にみんな茫然とする中、1人平然としていた吸血鬼族長が会議の延期を告げた。

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