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どちらが王妃?  作者: kanaria
第2章 西の魔王宮編
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番外編 侍女たちの集い

アーシア視点です。

魔王様が来た後、悶々とするマイ様を見ていたら下がるように言われた。

少し残念。

もっと見ていたかったのに。


「あの、アーシアのマイ様に対する感情は本当に愛玩なのですか?」


侍女の控室でぷうと膨れているアーシアを見てミシェナが話しかけてきた。


「うん。アーシーは伴侶がもう死んじゃったから。それに伴侶の好きとお気に入りの好きはぜんぜん違う。」


「えっ、アーシアは愛してる方がいたんですか!?」


「そうだよ?」


そう答えるとミシェナが何かブツブツ言い始めた。

耳を澄ませてみると負けたとか色気がとか言っている。


変なの。

アーシーが好きな人いたらおかしいのかな?

誰にでも伴侶は出来ると思うんだけどな。

だって、片想いでも伴侶は伴侶だし。

自分にとって唯一無二の人を伴侶って呼んでるだけでしょ?

ミシェナだってそのうち出来るんじゃないかな?


「ねえ、アーシーに伴侶がいるとおかしい?」


「いえ、おかしくはありませんが、あまりに予想外というか……。」


「ふーん、そうなんだ。まあ、今のアーシーを見てもいるとは思わないよね。それに伴侶が死ぬとたいてい後を追うしアーシーにいたとも思わないかな。実際に結婚は出来なかったし。」


「結婚出来なかったって事はその方には既に別の伴侶がいらっしゃったのですか?あ、嫌な質問をすいません。」


はたと我に返ったミシェナが申し訳なさそうな顔をした。


「別に気にしなくていい。その人に伴侶がいた訳でもないし。」


「そう、ですか。」


気にしなくていいと言ったのにミシェナは徐々に落ち込んでいく。


どうしたんだろう?

具合が悪い訳でもなさそうなのに。

あ、伴侶が死んだ人に伴侶の話をするのはだめだった。

だから落ち込んでるのかな?

真面目だね。


「アーシーはね、伴侶が死んで初めてこの人が好きだったって自覚したんだ。だから気づいた時にはもう遅かったんだよ。」


クスリと自嘲気味に笑いながらミシェナを見た。

するとミシェナが泣いている。


「なんで、なんでそんな風に笑いながら言えるんですか!?アーシアにとってはもう過去の事なんですか?だから、だから今も生きていられるんですか……?」


「ちがう。過去のことなんかじゃない。だってアーシーはまだ彼に捕らわれているから。でもね、後を追って死んだところで彼は喜ばないと思うから、死なないようにがんばって今がある。これはアーシーの誇り。姉さまたちには迷惑かけちゃったけど。」


そう言ってミシェナを見るとミシェナの目にもう涙はなかった。

ただ不躾な事ばかりを言ってしまった後悔だけがある。


「ごめんなさい。」


「別に謝る必要はない。彼のこの言葉のおかげでマイ様に会えたし。」


微笑んで言うとミシェナもぎこちなく微笑み返してくれた。

そして、ミシェナが喉が渇いたと言ってお茶を淹れ始める。


やっぱり、ミシェナもかわいいよね。

マイ様ほどじゃないけど。

マイ様のかわいさは罪だと思う。

特に魔王様がからんだ後とか。

もうやばい。

抱きしめてぐちゃぐちゃになでまわしたい。

恋する乙女って本当にかわいい。

恐らく本人は自覚してないけど。


アーシアの思考が危険な方へいっているとミシェナからストップがかかった。


「アーシア、何を考えてるんですか?変態っぽい顔になってますよ。」


「む、アーシーは変態じゃない。ただマイ様の事考えてただけだもん。」


「マイ様の事を考えるだけでどうしてそんな表情になるんですか!?」


「お気に入りだから?」


「……、ここで否定できないのが魔族の怖いところですよね。」


怖いところ?

普通じゃないのかな?

もしかして人間の大陸にいる間に毒された?

アーシーたちよりいたのは短かったはずだけどなあ。

でも順応力が高いとこうなるのかもしれない。


「別に普通だと思う。マリネージュ姉さまもそうだし。」


「そういえば魔女族長様もお気に入りには触りたがる方ですよね。マイ様が抱きつかれていたという情報が……。」


「へえ、抱きつかれてたんだ。でも魔族って気に入った人には触りたいし側に居たいって思うものじゃない?それとも堕天使族はそんなことないの?」


ふと思ってミシェナに聞くとなぜかミシェナが慌てた。


「い、いえ、堕天使族も同じですね。どうやら人間の習慣に毒されていたみたいです。」


「それ自体は悪い事じゃないけど気をつけないといけないかもね。」


何気なくそう言うと再びミシェナが落ち込んだ。


「そう、ですよね。人間の大陸に行く時堕天使族長には注意されていたんですが……。はあ、気を引き締めないと。」


「うーん。周りに教えてくれる人がいるなら問題ないんじゃない?アーシーも姉さまたちもおかしかったら教えるよ?」


するとミシェナが目を見開いた。


……?

何か変な事いったかなあ?

表情豊かなのはいい事だと思うけど……。

そういえばマイ様も表情が豊かだよね。

初めての人に会った時とかは隠してるみたいだけどうち解けるとコロコロ表情が変わる。

まさか魔王様に対してもそうだと思わなかったけど。

いつの間に仲良くなったんだろう?


ミシェナの表情を見ながら考えているとミシェナが急に笑った。


「ありがとうございます。そこまで言ってもらえるとは思ってもいませんでした。」


「確かにそうだよね。基本魔族って魔王様と伴侶とお気に入り以外どうでもいいし。」


「でも、やっぱり親族とそうでない人では少し差が出ますよね。」


「そう?ただ単に知ってる人か知らない人かの差だと思うけど?」


「そうでしょうか……。」


考え込んでしまったミシェナに今度はこちらから質問してみる。


「ねえ、いつの間にマイ様と魔王様が仲良くなったか知ってる?」


「へっ?いつの間に?ああ、多分夜じゃないですか?マイ様の寝室は魔王様の寝室と繋がってますから。」


「え、あの扉って魔王様の寝室につながってるの?それって大丈夫?開かないから分からなかったけど……。」


いくらマイ様のよく変わる表情が好きだからといって魔王様に襲われて泣いてるマイ様は見たくない。

まず第一にまだマイ様は魔王妃になると言ってない。

まあ一応好意を持っている相手だから大丈夫?

うーん、微妙。


不安になりつつミシェナを見るとミシェナも不安そうな顔をしている。


「大丈夫だと思います。というより信じたいというか……。」


「あの部屋って勧めたのミシェナじゃなかった?」


「ええ、少しでもマイ様と魔王様が仲良くなってくださればと思って。でも今考えると危険ですね。どうすればいいでしょうか?」


「今さらどうしようもないよね。大変な事にならないように祈るだけ。」


「……、そうですね。」


ミシェナが再び泣きそうな表情になったので頭を軽く叩いた。

するとミシェナの顔が赤くなる。


「それはクセですか?」


「くせ?ああ、あたまに触るのがってこと?それなら、くせかな。彼がよくやってくれたから。」


「そうなんですか。良い人だったんですね。」


「うん。とっても優しい人だよ。」


思い出しながら言うと、突然ミシェナがハッとした顔をした。


「もしかしてその方って魔王様とも関係が深い方だったのですか?」


「そうだね。深かったかな。でも、どうして?」


「先ほど魔王様もよくマイ様の頭を触っておられたので。」


「そういえばそうだね。彼はね魔王様の教育係だった人だから影響をうけたのかも。でも頭以外さわる場所ないとも思う。」


そう言うとミシェナが驚いてカップを落とした。


あれ?

どうしたんだろ?

変なことは言ってないよね。

でも、ここまで取り乱すのってめずらしい。

カップは割れてないけどこのままだと紅茶が床に到達する。


「ま、魔王様の教育係だった方ですか。アーシアの好きだった方は。」


なぜか突然復活したミシェナがこぼれた紅茶を拭きつつが信じられなさそうに呟いた。


「なにか変?」


「いえ、優しいというところが想像出来なかったもので。あ、えっと、すいません。」


「そう?たしかに仕事はきびしかったけど、それ以外は優しかったよ?」


「そ、そうですか。」


ミシェナがなんとも言えない表情を浮かべる。

それを少しの間見ていると、マイ様の夕食の準備をする時間になった。


んー、休憩はおわりだね。

マイ様の食事を持っていかなきゃ。


少し名残惜しく思いながらもミシェナと一緒に部屋を出て姉さまたちと合流した。

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