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どちらが王妃?  作者: kanaria
第2章 西の魔王宮編
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10 微かな疑問とアーシア 

「まったく、なんなのかしら。昔から無礼な奴だとは思っていたけれど此処まで酷いなんて知らなかったわ!」


部屋に戻ると同時にアリシアが愚痴を言った。

それにアニシアも加えて口を開く。


「本当にそうですよね!マイ様に対して面倒がどうとか言うなんて信じられません。」


「待って下さい。アリシアとアニシアは冷静になるべきです。私も最初はそう思ったのですが何だか少し違うような気もします。それに、マイ様は何かお考えになっています。アーシアも。」


荒野ではアリシアやアニシアと共に憤っていたミシェナが2人を諌め、舞とアーシアに視線を向けた。

2人も舞とアーシアを見つめる。

3人の視線を感じた舞は少し悩む素振りを見せながら口を開いた。


「シュドルクは私の性格を見るためだけにあのような態度をとったのだと思う。怒らせると本性が出るからな。それが見たかったのだろう。おそらく魔王様に剣を捧げているのではないか?」


そう言われてアリシアとアニシアは何かを考え始め、ミシェナは納得した顔をした。

姉たちの難しそうな表情を見てアーシアが舞の言葉に付け足しをする。


「吸血鬼族長が魔王様に剣をささげているのは有名なはなし。たしかに吸血鬼族長は口を開けば嫌みばっかり言ってるようにかんじるけど、これって魔王様に関係がある時以外で話しをする事があんまりないから。それに魔王様が魔王なられた時すぐに改革をしたでしょ?この不満が魔王様に出来るだけ向かないようにするために反対派の意見を徹底的に排除した上に反論を一切許さなかったのが最初の悪い行動だったし。」


「ちょ、ちょっと待ってくれないかしら。吸血鬼族長がしゃべらないなんて聞いた事がないわよ?無礼なのは有名だけれど……。それに魔王様が魔王位についてすぐの吸血鬼族長の話も信じがたいわ。」


アーシアの言った言葉によって更に混乱したアリシアが片手を頭に当てた。

それにアニシアも頷く。

しかしアーシアはため息をひとつつき、黙ってしまう。

そのためミシェナが舞を一度チラッと見た後話し始める。


「吸血鬼族長が魔王様関連の事以外に関してあまり話さないというのは聞いた事があります。これについてはどの吸血鬼族の人に聞いても証言してくれると思います。吸血鬼族長が無礼だというのは改革が行われた時のイメージが強いのでしょう。まあ他にも魔王様が行った事に対して下手に不満を言うと痛いところを突いてくるのも原因だと思いますね。とはいえ筋が通っていれば魔王様にその声を届けたりもするようなので完全に悪いとは言えませんが。」


それを聞いてアリシアとアニシアの眉間にしわが寄った。


「確かに辻褄つじつまは合うわ。でも、それだけだとわたくしが長年持っていた吸血鬼族長のイメージが強くて納得できないのよ……。」


そう言われても嫌な顔ひとつせずにミシェナは答える。

それに対してアーシアは飽きてしまったのか窓の外を眺めっている。

舞も今日初めて会ったシュドルクに対しての情報が全くないので午前中に教わった魔族の本能などを思い返しながらぼんやりと話を聞いていた。

しかしそれも終わってしまったのでミシェナたちの様子を眺める。


白熱しているな。

そういえばシュドルクは魔王の騎士だった。

となるとこういった話も真剣に聞くべきなんだろうがどうのも興味がわかない。

まあ、とりあえずシュドルクは一般的には悪いイメージを持たれているが実際は魔王一筋の魔王馬鹿って事だけ覚えておけば良さそうだ。


今日は教わった事が多かったせいか、あまり動いていなかったのに眠くなってしまった舞はそこまで考えて目を閉じた。

するとすぐにアーシアが近づいて来る気配がした。


「つまらないから、別のところに行こう?」


「勝手に出て行くのは良くないのではないか?」


目を開いてそう答えた瞬間、アーシアが舞の手を掴んだ。

そして、気づいたら舞は外に立っていた。


「……、此処は何処だ?」


「庭。」


あまりに簡潔すぎる答えに頭を押さえながら周りを見渡すと、綺麗に咲き乱れている花々が見えた。


綺麗だな。

存在感を誇る花と静かに咲いている花が上手く調和している。

庭師の腕が良いのだろう。

ヴィルカイン王国の庭は存在感のある花だけで味気なかった。


「きれいでしょ?アーシーは庭が一番すき。」


「ああ、確かにすばらしい庭だ。だが、突然私たちが消えたらミシェナたちが驚くのではないか?」


「わるいのは姉さまたち。だから気配も消した。」


部屋に戻ったらミシェナたちに謝らないといけないな。

今頃慌てているのだろう。

本来ならすぐに部屋に帰るべきなのだろうが、どう行ったら帰れるのか分からない。

アーシアに言っても取り合ってくれなさそうだし。

まあ、そのうち帰れるだろう。


考える事を放棄してアーシアと一緒に庭を回った。

そして、気づいたら辺りは暗くなっていた。


さすがにやばくないか?

一応私は魔王妃候補だよな。

確か、庭に出たのは3時くらいだったはずだから少なくとも2時間半くらいは経過している。

探されてないか?

というか私も良く時間に気づかなかったよな。

自己嫌悪に陥りそうだ。


「どうしたの?」


不安そうな舞の様子に気づいたアーシアが聞いてきた。


「いや、魔王宮の人々に探されてないかと……。」


「だいじょうぶ、探されてない。魔王様にはマイ様がどこにいるか知れてるから。」


「そうなのか?」


「うん。魔王様にはアーシーの気配消しの結界なんてあってないようなものだから。」


そういえば当代魔王は歴代の魔王の中でも一番強い魔王だって聞いた気がする。

それがどれ程の魔力かは分からないが、アーシアの感じからすると恐ろしくすごいんだろうな。

だが、さすがに部屋に戻るべきだろう。


「探されていないのは良かったが、部屋に戻りたい。そろそろ夕食ではないか?」


「そうだね。でも、最後に行きたいところがある。」


そう言ってアーシアは舞の手を引っ張った。

それに抵抗せずついて行くと、突然目の前が開けた。


「これは…………。」


「とってもきれいでしょ?これは初春の夜にしか咲かない花なんだ。」


壮大な景色に言葉も出なくなってしまった舞にアーシアは話しかける。


「ここはね、この花のためだけに造られた草原なんだよ。白や黄色、水色に薄紫の花があるけど全部おんなじ種類なんだ。でも生命力が弱くて、ここにしかない花だよ。だから、傷つけると罰せられる。」


その後1時間ぐらい花に見惚れてから部屋に帰ると、既に8時だった。

そして、顔色の悪いミシェナたちが謝ってきた。


「「「申し訳ありません。」」」


「いや、別に気にしてない。それよりも勝手に部屋を出て行って悪かった。」


「いえ、悪いのは私達です。本当に申し訳ございませんでした。ですが、次からは一言言って下さると助かります。」


尚もバツが悪そうな顔をするミシェナとは反対に謝ってすっきりしたようなアリシアとアニシアは疑問をぶつけてきた。


「でも、こんな時間までどこに行っていたのかしら? 魔王様に聞いても魔王宮にはいるとしか教えてくれないし。」


「そうです。急にいなくなられたので何かあったのではないかと心配していたのに。」


それに対して別段不機嫌になるでもなく舞はアニシアを見る。


「庭にいた。詳しくは知らないが。」


それを聞いてミシェナとアリシアとアニシアはアーシアを凝視した。

そんな3人を一瞥してアーシアは口を開く。


「不可侵の庭と草原。」


「「「!!!」」」


驚いて声の出ない3人を見て舞は眉間にしわを寄せた。


「どうしてそんなに驚くんだ?」


「あそこは魔王様と庭の管理者しか入れない特別な場所の1つだから。」


アーシアからかえってきた言葉を聞いて舞も目を丸くした。

しかし舞が何かを聞くよりも早く、復活した3人がアーシアに質問を浴びせた。


「不可侵の庭と草原って下手に入れば殺される場所じゃないですか!マイ様に何かあったらどうするつもりだったのですか!?」


「どうしてそんな危険な事をしたのかしら?」


「というより、どうしてアーシーがそんなところに入れるの?」


妙に迫力のある質問をすべてアーシアは無視し、舞の食事の準備を始めた。

それを見て今の時間を思い出した3人は慌てて準備をする。

しかし3人の目には疑問の念が色濃く残っていた。

舞は不可侵の庭と草原が良く分からず、かと言って忙しそうな4人に聞く訳にもいかず、とりあえず頭の隅に追いやった。

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