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どちらが王妃?  作者: kanaria
第2章 西の魔王宮編
18/45

3 魔の大陸について

まずは部屋をの中を見てみる事にした。

すると、寝室に開かないドアがひとつある。


なんだこれは?

開かないぞ。

飾りか?

いや、なんか嫌な予感がする。


「ミシェナ、このドアは何に使うんだ?」


舞が聞くとミシェナは曖昧あいまいに微笑んだ。


「それは後でお教えします。まずは魔の大陸についての説明をさせてください。」


「あ、ああ、分かった。頼む。」


舞はミシェナの言いにくそうな表情で嫌な予感を高めた。

しかし魔の大陸の説明はしてもらわなければ困るのでそっちを優先する事にする。


「魔の大陸は2つの国に分かれています。ひとつは西の魔国と言われるこの国で、もうひとつは東の魔国と言われる国です。この2つの国は元々あまり仲が良くなく、戦争がいつ起こってもおかしくない状態が続いています。まあ、これはいつもの事なので心配する必要は無いでしょう。」


「心配が無い?戦争が起りそうなのに?」


「はい。もう600年近くこうなので心配していては身がもちません。ただ、きっかけがあれば戦争になると言う事を頭の隅にでも入れておいてください。」


「分かった。」


もう600年も睨み合ってるのか……。

人だったら戦争が起ってるんだろうな。

魔族は意外と気が長いのかもしれない。


「次に魔族や魔獣について説明します。魔族と魔獣の違いは人型がとれるかとれないかです。とれるのを魔族、とれないのを魔獣といいます。魔族は上級魔族と下級魔族があります。これは魔力の量で決まりますが、上級魔族となれる種族は決まっています。この国では魔の9大貴族の種族が上級魔族で、それ以外は下級魔族です。」


「上級魔族となれる種族が決まっているというのは種族ごとに魔力量が決まっているという事か?」


「それはだいたい決まっていますが、同じ種族の中でも1番強い力を持つ者と1番弱い力を持つ者の差はかなりあります。ただ、上級と下級では越えられない壁があるのです。上級の最下位と下級の最上位では倍ぐらい魔力量に差があります。」


「そうなのか。」


ふむ、だから上級と下級で分かれているのか。

確かに倍違えば別の種族が上級になるのは難しいだろう。

魔の9大貴族と言うぐらいだから上級は9種族いるのだろうな。

そういえば魔族は上級と下級に分かれていたが、魔獣は分かれていないのだろうか?


「魔獣の位分けはどうなているんだ?」


舞がそう聞くとミシェナは少し驚いた顔をして答えた。


「魔獣は上級魔獣、中級魔獣、下級魔獣に分かれています。これもまた魔力量の違いによって分かれているんですが、魔族よりも簡単に見分けがつきます。単体で生活していて話せる上に博識なのが上級、単体もしくは群れで生活していてまあ、話せるかなというのが中級、単体または群れで生活していて話せないのが下級です。」


「どれくらい話せるかで見分けられるのか。群れっていうのは同じ種族だけの群れか?」


「いいえ、違う種族が混ざっている事もあります。それに、下級の群れに中級が混ざっている事もあります。」


「えっ、そうなのか?」


「はい。こういう事もよくありますね。」


下級の群れに中級が混ざるのか。

すごいな。

下級からすれば生き抜くための知恵だろうか。


「そうなのか。ところでミシェナは何でさっき驚いたんだ?」


「あ、えっと申し訳ありません。あれはですね……、マイ様が質問するのは魔の9大貴族の事だと勝手に勘違いしてしまったんです。」


「そうだったのか。変な事を聞いてしまったようだな。すまなかった。」


「えっ?い、いいえ、マイ様が謝るほどの事ではございません。」


……さっきからミシェナは焦り過ぎではないか?

私は何か変な事でもしたか?

だが、やはりミシェナは天然っぽいな。

これで実は腹黒だったら名役者だろう。

いや、今はそんな事よりもこの大陸の情報を少しでも聞き逃さないようにしなければ!

そうしなければ何も分からないまま魔王妃にさせられてしまうかもしれない。

魔王も悪い人ではなさそうだが、突然結婚はないよなぁ。


「ところで、その魔の9大貴族について教えてくれないか?」


「あ、はい。魔の9大貴族とは上級魔族のトップに君臨する者の事を言います。それで、この9大貴族にあたる上級魔族の一族は吸血鬼族、魔女族、淫魔族、堕天使族、ゾンビ族、ゴーレム族、人狼族、ドラゴン族、半魚人族の9種族です。この9種族は魔王様の指示で動き、それぞれに役割があります。」


「役割?」


「そうです。役割は各種族が特に秀でているものを使うように出来ています。たとえば、闇に紛れるのが上手く、速さも速い吸血鬼族は暗殺や情報収集が担当です。」


秀でているものを使うのか。

良い役割分担だな。

適材適所っていうやつか。

それにしても吸血鬼族って万能すぎないか?

それともこれが上級魔族だと普通とか?


「他の種族は何に秀でていてどんな分担になってるんだ?」


「そうですね……、魔族も人でいう非戦闘要員と戦闘要員に分かれているので戦闘要員に属するものからお教えします。魔王様の陸軍は小回りが利く戦闘をする上に戦闘時には獣化し陸では2番目に強い人狼族の担当です。空軍は戦闘時にドラゴンとなり空から強力な炎や氷などを吹くドラゴン族の担当となっています。また、海軍は水中で息が出来いつまでも水中に潜っていられ、戦闘時には半魚人化する半魚人族の担当です。」


「なぜ陸では2番目の人狼族が陸軍の担当なんだ?陸軍はやはり小回りが利く方が良いからか?」


「それもありますが、1番の理由は1番強いゴーレム族が戦闘に向かないからです。」


「戦闘に向かない?1番強いのにか?」


「はい。ゴーレム族は確かに力が強く体もゴーレム化すれば他を圧倒するほど硬くなり攻撃がききにくいのですが不器用なんです。さらに迷子になる事も多く、戦闘にはこれ以上ないほど不向きです。その上魔力を表に出すのも下手で総合的な戦闘能力ですと人狼族に劣ります。ですから人狼族が陸軍なのです。」


「そうだったのか。」


ゴーレム族は力が強く防御力も高いのにそれをも霞ませるほどに不器用なのか。

確かにそれなら人狼族に戦闘を任せた方が良い。

上手い配置の仕方だ。


「では非戦闘要員ははどうなっているんだ?」


「非戦闘要員は人間でいう文官とかなり違っているので理解しにくいかもしれません。意見反映の地位についているのは人をまとめるのが上手い淫魔族です。その上淫魔族は夜のお相手をしています。ですから民の本音を聞きやすいのです。ですから宰相には淫魔族長が就いています。財政は与えられた仕事をしっかりやりお金にあまり興味のないゾンビ族です。医療は治癒能力に長けている堕天使族となっています。また、研究・開発は興味のある事をとことん追求する魔女族となっています。先ほど話題になったゴーレム族は子供関連の仕事全般です。ゴーレム族以外の上級魔族は育児放棄をしやすいので人間とは違い子ども関係の問題が起り易いのです。その点、ゴーレム族は不器用ですが優しく、孤児などの世話も喜んでやるのでとても良い配役になっていると思います。」


「すごいな。これは昔からこうだったのか?」


「いいえ。今の魔王様が魔王就任後まずなされた事です。」


「そうか。今の魔王様はすごい人なんだな。」


「はい!私もとても尊敬しています。怖いところもありますが、これ以上ないほどすばらしい方です。」


臣下に此処まで思われるとは……。

いい魔王なんだな。


そんなことを考えながら舞は自然と微笑んでいた。

その笑みは優しさを含んだ柔らかな笑みでミシェナは目を見開く。


「どうかしたか?」


ミシェナが目を見開いたまま固まったので舞は心配そうに聞いた。


「い、いいえ。何でもありません。失礼しました。さ、最後になりますがマイ様が最初にお聞きになったドアは魔王様の寝室と繋がっております。」 


「魔王様の寝室!?どういう事だそれは!」


「ここは本来魔王妃様が使う部屋ですから繋がっていても不思議ではない事です。」


「魔王妃のための部屋?なぜ私がそんなところにいる?確かに私は魔王妃候補だがあくまでも候補ではないのか?」


「はい。マイ様はまだ魔王妃候補です。ですが、これを逃したら魔王様が魔王妃をとると言う事がないと思うのでチャンスを逃さない方がいいと思って……。」


説明をするミシェナの声はだんだん小さくなっていく。


これでは私がミシェナをいじめているみたいじゃないか。

というかチャンスを逃さずとはなんだ?


「まさかとは思うが魔王様は今まで魔王妃をとった事がないのか?」


「ありません。」


「今魔王様は何歳だ?話しを聞く限り就任したばかりという訳でも無さそうなんだが。」


「魔王様は153歳になります。」


「その間ずっと結婚した事がないのか?」


「そうです。」


「……、なぜ私は魔王妃候補になったんだ?」


「魔王様が召喚したからです。」


「では召喚はなぜ行われた?」


「私には分かりません。」


駄目だこれは。

というか何で魔王は一度も結婚した事がないんだ?

不能か?

不能なのか?

というかなぜそんな魔王が魔王妃の召喚をしたんだ!

これは魔王妃になるのが逃れられないという事か?

あくまで候補だったからどうにでもなると思って受け流したのが運のつきか。

いや、魔王に嫌われれば出来るんじゃないか?

臣下から好かれるようないい人にあまり嫌われたくないが仕方がない。


「あの、マイ様、申し訳ありませんが魔王様に嫌われた者は死が待ち受けていますから変な事は考えないで下さいね。」


舞の表情の変化を見ていたミシェナはなんとなく舞の考えている事に気づき、釘をさした。

それに対して舞は頭を抱えてしゃがみこんだ。

いくらズボンだからといって普段の舞はしないような行動にミシェナは罪悪感をひしひしと感じ、重い空気が室内を覆った。

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