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どちらが王妃?  作者: kanaria
第2章 西の魔王宮編
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2 ミシェナは天然?それとも腹黒?

「魔王様を笑わせるなんてさすがですマイ様!」


魔王の執務室を出て歩き出すとすぐにミシェナが興奮した面持ちで舞に話しかけてきた。

舞はミシェナが何に興奮しているのか理解できず首をかしげる。


「何がだ?」


「魔王様は無表情な方で笑う事は滅多にありません。それに笑うといっても口角を上げる程度で声をあげて笑うなど聞いた事もありませんでした。」


「そ、そうなのか?」


「はい。しかもお笑いになるのはお怒りの時がほとんどでとても恐ろしいんです。」


ああ、怒ると笑うタイプは怖い人が多いからな。

その上顔立ちが整っているからよけい怖さが増しそうな気がする。

とはいえ、さっきはあんなによく笑っていたのに普段は笑わないのか?

しかし、あまり笑わない人だから笑顔に違和感があったのかもしれない。

それならなぜあんなに笑っていたんだ?

確かに馬鹿な事はしたが声をあげて笑った事も無いような人を笑わせるほどおもしろい事をした覚えはないぞ。

それとも魔族の笑いのツボは人間とずれているのだろうか?

そもそも魔族と人ってどれくらい違うんだ?

ミシェナたちを見ていると普通の人とあまり変わらないように見えるし違いが分からない。


「ミシェナ、魔族の笑いのツボは人と違うのか?」


「はっ?どこからそんな疑問が出…………失礼しました。」


舞がミシェナに問うとミシェナはピタリと立ち止まり、眉を寄せ本音が漏れかける。

しかし、言い終わる前に気づき慌てて頭を下げた。

そんなミシェナを気にせずに言葉を続ける。


「えっとだな、私はそこまでおかしな事をしたつもりは無いのだが普段笑わない魔王様がお笑いになったのだろう?だから魔族の笑いのとツボは人とずれているのかと思ったんだが。」


「ああ、そういう事ですか。魔族の笑いのツボと人の笑いのツボはそこまでずれておりません。おそらくマイ様が真顔でおぼけになるのをおもしろいと思われたのだと思います。」


「そ、そうか?」


おぼけになるってぼけにおをつけるとさらに悪く聞こえるんだな。

本人に悪意が無い分心にぐさぐさくるな。

私の心がガラスで出来ていたらもう粉砕しているだろう。

ガラスのハートの持ち主じゃなくて良かったかもしれない。

まあ、ガラスのハートで出来ていたらこの世界に来る前に壊れて自殺か殺人かをしていただろうが……。


この世界は地球よりも優しい。

美羽にとっては厳しいかもしれないが、私からすれば本当に楽だ。

魔王妃候補になった事で様変わりをしたとしてもミシェナやアリシアたちがいてくれれば私は地球にいたころよりも幸せだろう。

そういえばアリシアたちはどうなったのだろうか。

あの3人なら普通について来そうだ。

魔族らしいし。


舞の考えが少しづつずれていく中ミシェナは魔王の執務室での出来事を思い出し口元を緩めていた。


「特に最後の礼はおもしろかったですよ。マイ様は普段しっかりなされているぶんおぼけになる時は盛大にぼけられるのですね。マイ様がこちらの世界にいらっしゃた初日の御夕食の時はこの世界の事に戸惑っていたのかと思っていました。ちなみに魔王様もそれがおもしろくてお笑いになられたんだと思いますよ。」


「私がしっかりしている?別にそんな事は無いだろう。魔王様はヴィルカイン王国での私の行動を御存じなのか?それはミシェナやアリーたちが報告したからか? それとも魔王様の騎士殿が?」


盛大にって酷くないか?

さっきといい今といいミシェナに悪気は無いようだが言ってる事はずいぶんと酷いぞ。

いくら私の心がガラス製でないとはいえちょっとは手加減をして欲しい。

ミシェナは天然なのか?

いや、多分本当に天然なんだろう。

まあそれは置いておくとして魔王の知る情報が気になる。

魔王は時間が許すなら知りたい人に対する人物像を他人から聞いて判断するよりも本人のとる行動などから自分で判断するタイプではないだろうか。

持っていた情報量からして他人に決定をゆだねないだろう。

短い時間しか話してないからもしかしたら違うかもしれないが……。

しかし、もし考えてる通りだとすると誰かが定期的に報告していた事になる。

どんな報告をしていたのだろうか?

あまり変な事ばかり報告していないでいて欲しいものだ。


「私はマイ様の事を報告しておりません!それに多分ですがアリシアたちも報告はしていないと思います。」


ミシェナが声を荒げた。

舞にはそれが分からず首をかしげる。


「仕えている主から命じられれば報告するものではないのか?」


「私たちのマイ様に対する忠誠心を疑うおつもりですか?いくら魔王様の命だとしてもマイ様の情報を渡すつもりは一切ありません。それにより殺されたとしてもです。」


「すまなかった。」


予想以上に強い思いに驚きつつも舞はミシェナに頭を下げる。

それを見て慌ててミシェナは付け足す。


「あ、頭を上げてください。私達も最初は忠誠心でなく自分本位な考えでしたから。なにしろマイ様とヴィルカイン王国の王太子妃は召喚された当初魔力をお持ちではありませんでした。魔力が無いという事は魔王妃として失格です。私たちは魔王妃様を魔王様のもとにお連れするという使命を持っていたので2人が失格ならば魔王妃様をお連れする事は出来なくなるでしょう。そんなことを報告すれば私達の立場が悪くなる可能性があります。それが嫌で報告をしなかったのです。申し訳ありません。」


「謝る必要は無い。それは当り前の感情だろう。だが、となると魔王様の騎士殿が報告していたのだろうな。」


「はい。シュドルク様は魔王様の騎士であるとともに魔王様の刺客たちを率いている方ですから可能性は高いです。」


「そうか。」


確かにミシェナの話を聞く限りではミシェナやアリシアたちが私の事を報告していた可能性は低そうだ。

しかし魔王の騎士とは魔王の持つ刺客のトップか。

となるとヴィルカイン王国で私の事を見張り、魔王に報告するの程度たいした事ではないだろう。

部下に見張らせれば良いのだから。

しかし騎士が刺客とはなかなかすごいな。

魔王の騎士ってことは相当身分の高い人物だろうに。

いや、まずこの国に身分制度はあるのか?

もしかして実力主義とか?

魔族ってことは人ではない。

全員が人とは比べ物にならないほどの魔力を持っているはずだ。

そんなのが自分よりも力の弱い者に従うのだろうか?

そうなると魔族は実力主義の可能性が高いのかもしれない。

まあ、これは部屋でミシェナが教えてくれるだろう。


舞が考える事を放棄した時ミシェナが舞に質問してきた。

どうやら話したり考え込んだりしている内に魔王の言っていた宮の入り口についたようだ。


「ここが生活していただく宮ですが、マイ様はどういった部屋がお好きですか?」


「部屋?そうだな、日がほどよく当って豪華すぎない部屋か良い。」


「わかりました。ですが、この西の魔王宮にヴィルカイン王国のような場所はありませんからご安心ください。」


ヴィルカイン王国的な所がない?

ヴィルカイン王国の王宮は英知えいちみや以外全てが豪華過ぎて成金趣味っぽかったというのにここにはないのか?

なんとすばらしいんだ。

ここに来るまでの間周りをしっかり見ておくんだった。

そういえば魔王の執務室も金ぴかとかではなかったな。

あの部屋は繊細な細工がいたる所に施されていて美しかった。

完璧な和風でもないが西洋風でもなく、中華風でもないが優美な部屋だったと思う。

いろいろと混ざっているのだろうか?


舞はそんな事を考えつつ周りを見まわす。

すると目に入るのは全て豪華過ぎずかと言って安っぽくない美しい模様などである。


何だか日本にある西洋風の豪邸にありそうで無さそうな雰囲気だな。

優美という言葉がこれほど当てはまりそうな場所で暮らせるとはなんて幸せなんだろう。

あのヴィルカイン王国の金ぴかから抜け出してこうなるとはすごく感動だ。

やばい、泣けてくる。

あそこはピカピカしすぎて目に毒だった。


舞が感動しているとミシェナがひとつの部屋の前で止まった。

そして扉を開く。


「この部屋はいかがでしょうか?日当たりも良くて魔王妃候補であるマイ様にちょうど良いくらいの大きさだと思います。」


「……、広すぎないか?」


目の前に広がる部屋はヴィルカイン王国で舞が使っていた部屋2部屋と同じくらいの大きさがある。

1部屋でだ。

この他に寝室などがある事は間違いないだろう。

ヴィルカイン王国でさえ寝室と別に1部屋と風呂、トイレがあったのだから。

しかしミシェナは気にしていないようだ。


「今のマイ様は魔王妃候補なのですから当然です。しかも他に候補は無くマイ様は魔王妃になるのが決まっているような御方なのですよ?このくらいでないと逆に私が宰相様から怒られます。」


「……怒られるのか?」


「はい。」


この部屋は私には広すぎて不相応だと思うのだが、ミシェナの言う通りならヴィルカイン王国と同じくらいの部屋に通す方がまずいのだろう。

それにミシェナも怒られると言うし、腹をくくるか。


「分かった。この部屋でいい。」


舞がそう言った次の瞬間ミシェナが嬉しそうに微笑んだ気がした。


「ありがとうございます。ちなみにこの部屋は今見えている部屋の他に寝室と面会室、風呂場、トイレ、専属侍女室が2部屋ついています。」


「やっぱり部屋を変え「られませんよ。」」


舞の言葉を遮りミシェナは笑った。

そしてこの時が舞の中でミシェナが実は天然ではなく腹黒ではないかと疑問を持った瞬間であった。

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