番外編 魔族たちの話Ⅰ
この番外編はネタばれです。
お嫌いな方は飛ばして下さい。
ミシェナ
本日、魔王様が魔界にて魔王妃様の召喚を行われました。
しかし魔王様は何も準備をしておられないようです。
そのせいか、たまたま同じ時に召喚を行ったヴィルカイン王国に魔王妃様も行ってしまった可能性が高いとのことです。
そして魔王様は私に魔王妃様を連れて来るようにと命じられました。
他にも命じられた者がいるらしいですが、私は私なりにやらせてもらう事にします。
命じられてからは私自身がヴィルカイン王国に行き、リンロイ伯爵家の庶子であるというように周りの記憶を変えました。
そして王宮で働きたいとリンロイ伯爵に強請ります。
すると、ンロイ伯爵は庶子である私が邪魔だったようで、すぐに許可してくれました。
そこまで簡単に事が進むとは思っていなかったのでとても驚きました。
おかげで、ここまでにかかった時間が10分という短さです。
いざ王宮で働いてみると、伯爵令嬢ということもあり女官という役職でした。
しかし女官は王宮全体の事を仕事とするために個人につく事はあまりないという役職のようです。
これでは、魔王様の命令に従う事が出来ないかもしれません。
困りました。
仕方が無いので王妃さまが服を買いたいというのを非難してみることにします。
すると王妃様を否定した不快な女官ということで侍女になることがでしました。
侍女と言えば個人につく事が出来ます。
ホッとしつつ時間を見ると、魔王様の妻がヴィルカイン王国に召喚されてからすでに1時間近くたっていました。
やばい。
どうすれば魔王妃様に仕える事が出来るのでしょう。
そう悩んでいると、王妃様が皮肉っぽく王太子妃になれなかった片割れに仕えればいいとおっしゃりました。
王太子妃さまになれなかった片割れ?
という事は魔王妃様の可能性があるうちの1人は王太子妃ということでしょうか?
まずい。
王太子妃に仕える事が出来るのは女官と優秀な侍女だけです。
私は選択を間違えたのでしょうか?
ですが、もしかしたら片割れの方が魔王妃様かもしれません。
そうであって欲しいと思いつつ、片割れの方の侍女になる事を希望しました。
希望した後で私は王太子妃さまをなぜヴィルカイン王国が召喚したかなど、詳しく他の侍女から聞いておきました。
人間の大陸で騒ぎが起ってないのだから魔王妃様は人型になれるのでしょう。
体面をして驚きました。
片割れの方は魔王様と並ぶぐらいに美しい方だったのです。
ですが、彼女ははずれだったようですね。
少しも魔力が感じられません。
すごく残念ですが仕方のないことです。
王太子妃の方にも誰か魔族がついているでしょう。
それなら今回は私に出番はありません。
後は魔王様が魔王妃様をを得られた後で魔界に帰りましょう。
それまでは彼女……マイ様に仕えさせていただきます。
そうしてマイ様に仕えていたのですが、大変な事になりました。
マイ様にも王太子妃さまにも魔力が見られません。
まさか魔王様の召喚が失敗したのでしょうか?
ですが、それを魔王様に報告すると私の立場が悪くなる可能性があります。
とりあえず半年ほど様子を見てから魔王様に報告しましょう。
その内どちらかに魔力がみられるかもしれません。
魔王様の命令に逆らう事は出来ませんが、自分の立場も大事です。
そして、マイ様に仕えてから1か月近く経ったある日に王宮の地下から圧倒的な魔力が放たれました。
放たれたとは言っても攻撃性を伴っていたりした訳ではなくただ魔力があふれ出たという感じです。
その魔力はあまりに大きく、人間の魔術師では100人いても出せないぐらいの量でしたので気になり、そこに行ってみます。
驚いた事にそこには同じ侍女のアリシアたちがいました。
この地下は王族でも滅多に知っている人がいないぐらいなので、普通の侍女が知っているはずがありません。
なのでアリシアたちも魔族なのだろうとあたりをつけて聞いてみます。
すると予想のと同じ答えが返ってきました。
ですがアリシアたちの魔力と先ほどの魔力では力の大きさがあまりに違いすぎると思ってあたりを見まわすと、マイ様がいらっしゃいます。
まさかマイ様にあれほどの魔力が?
今までには一度も感じなかったのに?
しかし先ほどの魔力は自分のだというようにマイ様は質が良く濃度の濃い魔力を纏っていらっしゃいます。
これだけ魔力があれば魔王妃になれるかもしれません。
私は自分の中から歓びがこみ上げてくるのが分かりました。
たった1か月の間にかなりマイ様の事が好きになっていたようです。
マイ様を魔王様にお見せしなければ。
私はマイ様を連れて魔界へと転移しました。
アリシア
わたくしたち3姉妹は三つ子という事もあって、とても仲が良いの。
そして魔の大陸にいるのに飽きて少し前に人間の大陸にやってきたわ。
その時に周りの記憶をアニシアが変えて、ヴィルダン子爵家の子どもという事にしたの。
この時は、7歳ぐらいの子どもとなっていたわね。
それで11歳の時、3人一緒に王宮の侍女になったわ。
別に断ることも出来たけれど、王宮で侍女をやるのもおもしろいかと思ったの。
そこで侍女として最初に仕えたのは王女様だったわ。
王女様は我儘で仕えるのも結構大変だったわね。
何度か殺してやろうかと考えるぐらいに。
それでも殺すのはさすがにまずいと思ってはたからは頑張っているように見えるぐらいに仕事をしたのよ。
それから1年ぐらいたって魔王様から呼び出されたわ。
何でも魔王妃様を召喚しようとしたんだけど、誤ってわたくしたちの居るヴィルカイン王国に魔王妃様が召喚されてしまったらしいの。
お互いに知らなかったとはいえ、同時に召喚の儀なんて行わないで欲しいわ。
まあ、魔王様に直接言える訳ではないけど。
あの方のお怒りは本当に怖いもの。
後は魔族が魔王様に逆らえないっていうのも理由のひとつかしら。
これは基本的に、だけどね。
自分にとって本当に愛おしい者のためなら逆らえるらしいわ。
わたくしにはまだそんな存在はいないから分からないけど。
あっと、いけない。
話がずれてしまったわ。
えっと、魔王様に呼び出された所まで話したかしら?
その後は魔王妃様を連れて来るように命じられたの。
まあ、魔王妃様が誤って召喚されたのはヴィルカイン王国の王宮らしいから、なんとかなるかしら。
それで、わたくしたち3人は王宮に戻ったわ。
そうしたらちょうど良く召喚されたらしい2人が審査の間から出てきたの。
2人を見て驚いたわ。
だって2人とも魔力が一切無いんだもの。
でもこの事を魔王様に報告すればわたくしたちの立場が悪くなる可能性があるわ。
アーシアは強いからこの程度の事では何もないかもしれないけど……。
だから3人で話し合って1年間様子を見る事にしたの。
だって、こんな事で無能だと思われるのは嫌だし。
でも様子を見るなら、どちらかに侍女として仕えてしまった方が良いわね。
侍女ならば側に居る事もできるんだもの。
そうするなら、どっちの方が仕えていて楽しいかしら?
最初に出てきたのはかわいい顔をしている少女だったわ。
それに続いて出てきたのは大人びて綺麗な顔をした女性だったわ。
綺麗な顔の人ってたいてい性格が悪いって言うじゃない。
それなら、かわいい顔の子に仕えようかな?
そう思ってアニシアとアーシアを振り返ったの。
そうしたらアーシアが綺麗な顔の人の方が魂が綺麗って言ったの。
あれには驚いたわ。
だって、綺麗な顔の方が性格が悪いと思っていたんだもの。
でもアーシアがそう言うなら間違いは無いと思って、綺麗な顔の女性に仕える事にしたわ。
わたくしたちは、真剣に仕事をやっているように見せていたから綺麗な顔の女性の侍女になるのは簡単だったわね。
そして、その綺麗な顔の女性は王太子妃になるのを拒んだ人物だって事が分かったの。
それを聞いてその女性に興味を持ったわ。
だから話しを出来るチャンスを待ったの。
待っている間にもう1人の侍女ともはなしたわ。
彼女は女官から侍女にされたって聞いていたけれど、かわいい感じの人間だったの。
人間にしてはとても良い子ね。
王妃を邪魔したという噂があって身構えてたけど予想と違ったわ。
その後わたくしたち3人はその綺麗な顔の女性の風呂を担当する事になったわ。
そこで話しをしてみて、わたくしはその女性の事が気に入ったの。
なんとその女性は“主様”って呼ぶのをやめて欲しいと言ってくれたのよ。
あれはとても嬉しかったわね。
そこで、わたくしは自分がどれだけマイ様の事を気に入っているかを知ったの。
まさか魔族の中でも高い地位にいるこのわたくしが人間に好意を持つなんてね。
でもまあ、マイ様なら良いかしら。
綺麗で性格も良いし。
顔や容姿の事を言うと思考が暗くなるくせがあるみたいだけど、それぐらいなら全然問題ないわ。
そんなこんなで1か月が経ったの。
あの日は皇太子妃のお披露目パーティーの準備に駆り出されていたわね。
それで準備を手伝っていたら、アーシアが魔力を使って王宮の地下に転移したのが分かったのよ。
アーシアが魔力を使うなんて何があったのかしら?
よく分からないけれど何かあったのかもしれないから王宮の地下に転移したの。
そうしたらマイ様がいて驚いたわ。
でも、そんなのよりもマイ様が転んで魔力がマイ様を包みこんだのに驚いたの。
しかもその魔力はマイ様の中に入り込んでしまうし。
だけどマイ様なら大丈夫ってなぜか思えたの。
他の2人はすごく心配そうだったけれど、わたくしの予想が当たってマイ様は問題なく目覚めたわ。
アニシアなんかは泣きそうになっていたわね。
普段無口なあの子が良く喋ったもの。
それから少しして、ミシェナがこの地下に現れたのよ。
現れ方も転移して来ましたって感じだったから、すぐにミシェナが魔族だって分かったわ。
だって魔術師ならば現れるより前に魔法陣が浮かぶんだもの。
残念なことに人間の持つ魔力じゃ何をするにも魔法陣が要るのね。
かわいそうに。
それでお互いに魔族だって事を確認したの。
でも、その後にミシェナはマイ様を連れて転移したわ。
さすがにそれは許せなくって、転移していった場所を調べてわたくしたちも転移したのよ。