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9.ゲーマー


黒魔道士は最強ジョブの一つ。けれどそれは扱うプレイヤーの腕に左右される。弱点属性の把握や魔法の効きやすい部位を狙うエイム力、多くの敵への攻撃を可能にする視野の広さ、MPを効率的に使う感覚と勘……プレイヤースキルの領域であり、おそらくNPCとして枷がある皆には習得できないもの。


(それに、教えたとしても魔族襲来の日までにできるようになる保証は無い……だったらその分幸せな時を多く村のみんなと過ごした方がいいんじゃないか)


「わかった。それじゃあ今度、任務でダンジョンへ行ったときにでも」


「ほ、ほんと!?ありがとう!!」


嬉しそうに微笑むコクエ。けれど明るい彼女の顔とは逆に俺の心には暗い影が落ちる。それから他愛のない話をしてお昼を回ったころに解散した。件の魔獣は現れず、コクエは残念そうにしていたができるだけ彼女を「戦い」から遠ざけたかった俺は胸をなでおろした。


それからの記憶はおぼろげであまり覚えていない。ただ、ずっと考えていた。無駄なことだと何度も首を振り気分が落ちた。そして気が付けば再び丘の上へと来ていた。遠くに落ちていく燃ゆる太陽と、のぼる二つの月。いくつもの星々が姿を現し、きらきらと輝きだす。


綺麗だ。何年経っても、この美しさは色褪せることはない。


(でも、この景色が美しいのは……俺がリンだからだ)


前のキャラクターの時だってこの星空は何度も見ていた。たしかにその時も美しいとは思った。なんどもSSを撮り、食事をとる時は無駄にキャラクターをこの場に放置したりしていた。

でも、今みているこの全てはそれよりも、比較にならない程……綺麗に感じる。


あの頃と今で何が違うのか、もう俺は理解している。だからこそこれほど頭を悩ませているんだ。


「……俺、皆を失いたくないんだ」


この世界で暮らすうちにNPCである彼らは、俺のかけがえのない大切な人間へとなってしまった。

避けられない魔族襲来のイベントが【LASTDREAM】の始まりの物語で、避けられない悲劇。割り切るしかない運命。けれどそうだと解っていても……心がそれを許さない。


「グルルル……」


――ふと背後から獣の唸り声が聞こえた。


見れば巨大な熊の魔獣、ファントムグリズリーが仁王立ちしていた。レベル15。これが村人の言っていた魔獣か。

杖を差し向け、戦闘態勢をとる。その時、ふと気が付いた。


(……高揚感がない)


いや、それはそうか。今のおれからすれば低レベルの魔獣だ難なく倒せるし……この魔獣ならドロップ品もたかが知れている。

どうせやるなら高レベルの攻略が難しい……。


(そういや俺ってなんでこのゲームを始めたんだっけ?)


俺は廃人と呼ばれる類のゲーマーだった。ソロで数多の敵を屠り、高難度クエストをいくつも踏破してきた……そうだ、不可能と呼ばれたクエストを不可能だとされるジョブでクリアした。


……俺は、そういう人が無理だというものにこそ燃える。そういうプレイヤーだったはずだろ。

頭のネジが外れていて、他者を凌駕する執着心、俺が一番プレイヤースキルがあると豪語していたあの頃を思い出せ。


そうだ、俺は――不可能を可能にする、ゲーマーだ。



――振り下ろされる剛腕を紙一重で躱し、腹部に『マジックバースト』を放つ。ゼロ距離でヒットしたそれは「ボン!!」という白光の爆発と共に、ファントムグリズリーの巨体を軽々吹き飛ばす。

樹木へとたたきつけられた魔獣は断末魔を上げる間もなく逝ったようだった。


リキャストされるアイコンを眺めながら、お母さん、ラッシュ、コクエ、ウルカ、カムイ……村に暮らしている皆の顔を思い出す。


(死ねばどうなるかわからない、実質リトライ不能。一度きりの挑戦で、しかも高難度コンテンツをソロでクリアする、そのさらに上の難易度……いいね、面白い)



「――俺が皆を守る」




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