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11.ペア


「ダンジョンの中にはお宝が多く眠る。どうだ?二人でここから入って回収しに行かねえか?」


「二人で……」


これは正直な話めちゃくちゃ嬉しい。ダンジョンの深部に行くしか目標のレベルに到達する方法がないと思っていたから、まさかの展開に笑みがこぼれる。

しかし、二人で……か。酔っ払いを連れて行くのは気が進まないな。いざというとき逃げられない人と行動を共にするのは危険すぎる。


「あの、クロウデウスさん」


「あ?みずくせえぞ嬢ちゃん。クロウでいいぜ」


「……クロウは、此処が危険な場所だってこと知ってるんだよね?そんな命の危険があるところへ踏み入ってまでお金がほしいの?」


そう聞くとクロウは目を見開き固まる。そしてすぐに首を振り、息を吐き、笑みを取り戻しこういった。


「あったりめえだろ。金があれば浴びる程の飲める酒が手に入る……こいつさえあれば俺はこんなしみったれた生活ですら幸せに思えるんだよ!理由はそれで充分ってもんだぜ!それに知らねえのか?酒は命の水なんだぜ?なら命を張るにたるだろうがよぉ!もうすぐで金が尽きて酒かえなくなっちまうんだ……そうなったら死んじまうからよぉ。……お願い」


やべえ、酒の飲み過ぎで思考能力がいかれてやがる。でもまあ、生き甲斐というものは必要なんだと思う。クロウが酒代を稼げたらとめよう。


「わかった。行こう……」


「おおお!ありがてええー!!」


歓喜するクロウ。そうして俺は洞穴からダンジョンへと侵入しようと体を滑り込ませる。しかしその途中でクロウに肩をつかまれ止められた。


「おいおい、まてまて!お前、今からいくのかよ」


「うん……なんで?」


「いや、こんな遅くまで帰らなかったら親が心配するんじゃねえか?」


「あ、たしかに」


「騒ぎになったらまずいだろ。入るのはもう少しよが更けた頃、村中の人間が寝静まったころがいいんじゃねえか?」


「……まあ、それもそうか」


クロウのいう通りかもしれない。もし俺が行方不明になり捜索されて、万一この場所が発見されれば、洞穴は封じられ二度と入れなくなるだろう。そうなれば今度こそレベル上げが困難なモノになってしまう。


「わかった。いったん帰るよ」


「おう。またあとでな」


「クロウはどうするの?」


「俺はさっきの丘で星でも見ながら酒を飲んでるわ。来たら声かけてくれ」


「うん、わかった」


クロウと別れ、帰宅すると家の前に人が集まっていた。陽が落ち暗くなったというのに俺が帰ってこないと心配したお母さんが近所の人に相談していたらしく、もう少しで村長に捜索願いを出すところだった。

クロウのいう通りだったな。あぶねえ。


そんなこんなで就寝時間。お母さんが眠りについたことを確認し、二階の部屋の窓から出る。見回りの大人に見つからないように慎重に丘へ。たどり着くとそこには寝っ転がっているクロウがいた。


「こんばんは」


「お、来たか!」


「……お酒、飲んでないの?」


ふと気が付く。酒瓶がテーブルの上に置かれ放置されていることに。クロウも酒臭さが消えている。


「おう。ダンジョンで泥酔しておっちんだらやべえからなぁ!二度と酒飲めなくなっちまう。酔い覚ましに薬草咬んでたわ」


おお、クロウにもちゃんとそういう常識はあるのか。思わず関心してしまった。ちなみに薬草にはアルコールを分解する効果があるらしい。


「さてさて、いこうか」


クロウはそういって腰にベルトを巻く。そこには小さなポシェットと短剣が二つ。


「……アルバダガー」


思わず俺は呟く。それはシーフの初期武器であり、懐かしくなりつい見入ってしまう。

そうか、クロウはシーフだったのか。


「お、知ってるのか?なんだ、もしかしてダガー系の武器に興味あんのか?」


「まあ、好き……かな」


俺がシーフを選んだのもダガーを使う戦闘スタイルが好きだったってのが大きい。じゃなければソロ最弱ジョブと呼ばれ揶揄されるシーフを選んだりしない。あと暗殺者って感じのジョブだからかっこいいし。


「ふーん、白魔道士なのにな。変わった奴だな、嬢ちゃんは」


「えぇ、クロウに言われたくないよ」


「お!いうねえ!ははは、そりゃ確かにこんな浮浪者に言われたくはねえわな!」


再び洞穴へと戻ってきた二人。先にクロウが入り、それに続く。降り立ったそこは、やはりさっき覗いた時にそうではないかと思った場所。


魔獣、デビルオークがいたボス部屋だった。


「うひゃあ、相変わらずすげえ遺体の山と匂いだこと……鼻がもげるぜ」


確かにここの腐臭は凄まじい。最初来た時、できる事なら二度と入りたくないと思ったほどだ。転生前では臭いの概念が無いゲームだったからなんとも思わなかったけど。


「って、あれ?クロウここ来たことあるの?」


「ん?ああ、まあな……もう十年くらい前か。まだ嬢ちゃんたちのような特別任務のパーティーが無かったころ、いち冒険者としてきたことがある。その頃はここにいた魔獣はデビルオークなんて化け物じゃなかったけどな……って、あれ?そういやデビルオークは?」


そうか。小さくてあまり記憶にないけど、確かにそうだった。あの頃はダンジョンを調べるために多くの冒険者や村人が立ち入ってて……そう、それでウルカの母親は。


「おい、どうした嬢ちゃん?ぼやぼやしてたらあっという間に夜明けだ。早く行こうぜ」


「あ、うん」



――二人は11層への階段を下った。




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