第73話 一か八かの
勝負は拮抗していた。
攻めれば、守られて。守られば、攻められる状況を繰り返していた。この状況が続けば、明らかにこっちの体力が底をつき、敗北へと繋がる。それに、コンビネーションも私達よりか、向かうの方が明らかに上だ。それでは、ダメだ。今だに、ユンカとヨンカの情報を共有できていない現状。とりあえず、それをするために隙を作らなければならない。
「カレン、隙を作れる?」
私はユンカとヨンカに聞こえないぐらいの声量でカレンに聞くと、彼女は頷いて、手をそっと私の前に出し、少し下がっていてということだった。私はカレンよりか、ラインを下げた。
『風雷暴乱』
カレンは風と雷の混合魔法を放ち、ユンカとヨンカを私達に近づけなくさせた。私はその瞬間、カレンを掴み、少し後退した。
「カレン、あの2人の戦闘スタイルってわかる?」
「わかります。ユンカは防御系の魔法をメインに戦い、ヨンカは攻撃系の魔法をメインに戦います」
言われた通りだ。あの2人が攻めてくるときはヨンカを主軸として連携しており、逆に守るときはユンカを主軸に守っていたな。
「それなら、私達が攻めるときはヨンカを狙おうか」
「うん、そうですね。それでいきましょう。私がユンカを引きつけます。その間にリリアちゃんはヨンカを狙ってください」
「よし、それでいこう。分断作戦をしようか」
作戦タイム終了。
まあ、とりあえず、やってみますか。この作戦で。
『四想天化』
私は4属性の魔力を身にまとい、剣を構えた。
徐々にカレンの魔法は無くなっていき、ユンカとヨンカ、2人の姿が見えた。やはり、ユンカがすべて守ったか。それにしても、まだ無傷か。
『雷暴攻』
カレンが高速でユンカの目の前に移動し、そのまま雷をまとった拳でアッパーした。それをユンカはギリギリで回避したが、カレンが続けて繰り出したドロップキックにはガードをしたが飛ばされていた。ヨンカがカレンに攻撃しようとしたが、カレンがヨンカに目も向けずにユンカの方に高速で移動していった。私はカレンが行った方に回り込み、カレンとユンカの方にヨンカを行かせないように立った。
これで、私とヨンカの1対1になる。
遠慮せずに戦える。
『ブースト』
ヨンカはそう唱えると私に突撃してきた。私の剣とヨンカの拳が交わると空中に火花が閃く。瞳に焼き付いたその光が、とても美しくに思えた。
剣を右から左へ、横薙ぎに振るう。ヨンカはそれに対し、腕で受け止め、もう片方の拳でカウンターとして殴りかかる。
「……っ」
顔目掛けて向かってくる拳に対して、首を横に倒し回避しようとした。だが反応が一瞬遅れ、拳は私の右頬をかすたれ。
拳は音も抵抗も無く、私の頬を浅くかすれたため、頬から血が少し流れる、鋭い痛みに私は顔を顰めた。
「ぐぅッ!?」
ここまで感じた拳とは感じが違う痛みだった。まるで剣に切られたような痛みだった。私はゼロ距離の状態からさらに左足で一歩前へと踏み出し、ヨンカの左頬を向けて回転しながら右足で蹴りつけた。その行動はヨンカは既に両方の腕を使っていたため、ガードすることができずにもろに当たることになった。
「くぅッ!」
「はぁッ」
ヨンカは痛みによって後退りし、間合いが少し空いたことから、私は回転の勢いを利用して右下から左上への斬り上げた。しかし、その攻撃はヨンカがさらに背後へと後退することで回避され、剣は何もない空中を斬るだけとなった。これが当たっていたらダメージを負わすことができたのに。それにしても、なんだこの感じは蹴りつけたとき、当たった感触はまるで鉄のようなものだった。そして、拳は剣のように鋭い。もしかして、彼女が唱えたブーストと言う魔法は、剣になることか。
まだ、能力は使わない。彼女のここぞの一撃のときに使う。ネオンが能力を知っていたように、私が知らなかっただけで他にも能力を持っている人がいるかも知らない。そのために常に能力を使っていたら、対策をとられるかもしれない。だからこそ、ここぞのときにだけ、能力を使おうか。
「今のは痛かったよ。なかなかやるね」
「そっちこそ」
「リリア、あんた、剣士から格闘家にでも変更したら。そっちの方が強くなりそうだけど」
「それはありがとう。でも、私は格闘家になるつもりないよ。それに、私は剣士じゃあないよ」
「なら、なに?」
「魔法剣士『風火土水龍の核』」
「まじか…………」
各属性に所属する4頭が現れた。ヨンカはそれを見て、引き攣った顔で驚いている。
「行け」
左手をヨンカに向けながらそう言うと4頭の龍は彼女に襲いかかった。ヨンカはそれらに対して、腕で受け止めたり、回避したりして、なんとかしていた。そんな彼女に私は剣を振りかぶった。ヨンカは当たる寸前で回避し、剣は空を切った。ヨンカの拳が飛んでくる。私は目を使い、それを回避し、龍と剣で彼女に攻撃を繰り出す。彼女も負けずと拳を繰り出す。
攻めて、防がれ。守って、攻められる。まるで示し合わせたかのように、交代で繰り返される剣と龍、拳、それぞれの攻撃、どれだけ続けているのだろうか。
ゆらゆらと揺れ動く視界、呼吸が上手くできず息も上がっている。剣を持つ腕は震え、足は一歩動かすごとに激痛が走っていた。服もボロボロになり、肌も見えるようになっていた。
彼女はまだまだ余裕そうだった。やはり、クラス対抗戦が始まってからの戦闘した数がでているのだろう。このままいったら、私が負ける。早く彼女を倒して、カレンの方に向かわないと行けないのに。
4頭の龍が消えた。
すると、彼女の動きが更に速くなった。一つ一つの拳が鋭く、重くなっていく。だか、これというチャンスが一向に来ない。このままだとジリ貧だ。そして、私の方が先に体力が底につき、敗北してしまう。
まだ、負けるわけにはいかない。最後の力を振り絞って、なんとかして勝たなきゃ。
「くぅッ!」
ヨンカの拳が剣を持っている手に当たり、一瞬、体制を崩した。ヨンカはその一瞬の隙も見逃さなかった。彼女の拳が私の左頬に当たり、私はその勢いで後退り、倒れそうになった。なんとか踏み止まったが彼女の一撃が来る。これはかわせない、もう足にかわすだけの力が残ってない。なら!! これに賭けるしかない!!
私は能力を発動し、彼女の一撃を腹に喰らった。
「がはぁッ」
私は喰らった衝撃で地面を転がった。地面と衝突するだけで痛い。もう魔力は切れた。私がなんとかの思いでヨンカの方を見ると彼女は苦しそうに地面に手をついている。どうやら、成功したようだ。一か八かの能力が、彼女にとって、この一撃は相当なものだったようだ。ここまで耐え凌いだかえがあった。でも、私は動けなかった。もう、動くほどの体力が残っていなかった。気合いだけでもいい、立ち上がらないと。
今がチャンスなんだ。立ち上がって動け、そして、倒せ!!
「あ、あぁぁぁぁぁぁ!!」
声を振り絞りながら立ち上がって、ふろふろの足で転けそうになりそうながらもゆっくりと彼女に近づいていく。彼女はどうやら、立てないようだった。あとはトドメを刺すだけ。
「………ッ!」
突然背中に衝撃が回った。私が思考を回していると今度は前から蹴りを喰らっていた。蹴ったのはユンカだった。と言うことは背中の衝撃はカレンが私にぶつかったっていうことか。私はカレンを巻き込みながら転がり続けて、岩にぶつかり止まった。
体全身に痛みが回った。




