第71話 炎と増加の拳
ヘルナ、アテナ、ユリハラの3人は、迷宮を攻略していった。そして、彼女達の目の前に迷宮の出口のようなところがあった。
「これが出口でしょうか?」
「そうじゃない」
ヘルナがアテナとユリハラに聞くと、ユリハラが全然わからないことが伝わってくるような返事をした。ヘルナは、そんなユリハラに呆れて、アテナの方を見た。彼女は、ずっと出口のようなところの方をじっと見つめていた。
「アテナさん?」
「…………ごめんです。ちょっと考え事してたです」
「そ、そう」
「で、なんです?」
「この先が出口か、どうかです!」
「出口です」
アテナは、確信しているように答えた。彼女は、考え事をしていたのではない。能力を使って、出口のようなところからペルエリックがいるか、どうかを判断していた。彼女自身、能力のことはなるべく内緒にすると決めているから、嘘をついた。
そんなことも知らずにヘルナは、「わかりました。ありがとうございます」と丁寧にお礼を言っていた。
「しゃあ、行こっか!」
ユリハラがふふんと出口の方に歩いていく、そんなユリハラのあとをヘルナとアテナは気を引き締めてついていった。
3人が迷宮から抜け出すと、砦の最奥の地に出ていた。そこには、待ってましたよという感じにペルエリックがどっしりと玉座に座っている。まるで、自分が王になったように。
「よく、突破したな、君達。私は、ここまで来る人は1人だと思っていたからね。君達が協力してここまで来たことに正直なところ驚いているよ」
ペルエリックは、はたかも自分よりか弱いのにここまで頑張ったとヘルナ達を見下していた。ヘルナとアテナは、挑発されていることに気付いていた。2人は、ペルエリックがC組での1位ということを充分に理解しており、自分達がペルエリックよりか、弱いということは、承知していることだったため、動揺せず、集中していった。でも、2人にとってユリハラのことが心配だった。ユリハラは煽り耐性が弱く、すぐに怒ってしまうような性格だったため、今にでも飛び出そうとしているのか不安になっていた。しかし、2人の心配のよそにユリハラは、硬直していた。ユリハラは、親しい人とは能天気でいろんなことを話す元気いっぱいの少女だが、初対面の人や親しくない人の目の前だと、緊張してまともに話せなくなって、親しい人や物陰に隠れるような少女であった。
つまり、ユリハラは、極度の人見知りだった。
「ユリハラさん?」
「どうしたのです?」
そんなこと、忘れていた2人は、様子が違うユリハラに困惑していた。それは、ペルエリックもそうだった。ユリハラがガクガク震え、ヘルナとアテナの後ろに下がっていくのが不思議だった。
(あいつ、1番初めに入ってきたよな?)
ペルエリックがユリハラの変わりように驚いていた。自信満々にペルエリックの前に出たユリハラだったが、ペルエリックを前にして、ユリハラは後からやってきたヘルナとアテナに隠れていた。
(………まぁ、よい)
ペルエリックは立ち上がり、3人のことを直に確認した。
「始めよう」
ペルエリックの言葉にヘルナとアテナは戦闘体制をとり、しっかりとペルエリックを見た。ユリハラはビビりながらも構えた。
4人の間に静寂な空気が流れた。
その空気を最初に壊し、行動したのはアテナだった。
アテナは一直線に加速していき、ペルエリックを貫こうとした。しかし、その攻撃はペルエリックに届くどころかその前に静止した。
「…………動かない!」
「おいおい、怖いなぁ」
ペルエリックは眼鏡のフレーム、クイット上げ、アテナを挑発するように言う。
「これで、1人目」
ペルエリックがアテナに対して、手のひらを向け魔法を放とうとした。アテナのその瞬間、敗北が目に見え目を瞑った。しかし、いくら経ってもペルエリックの攻撃が来ず、目を開けて現状を見た。
「え…………?」
アテナは思わず声が出ていた。
吹っ飛ばされたペルエリック、吹っ飛ばされたペルエリックの前に立っている身体中を炎を纏ったヘルナがいる。
「うわ!!」
突然アテナにかかっていた拘束が解けその場に倒れた。それに、ユリハラが駆け寄った。
「大丈夫?」
「大丈夫です。それよりもあの状況はなんです?」
「わっちにもわからない。急にヘルナの身体が炎に包まれて、気付いたらペルエリックが飛ばされていて、その前にはヘルナがいた」
アテナ、ユリハラの2人はこの現状をわからなかったがヘルナによいことが起こっていると言うことだけ理解していた。だが2人だけではなくペルエリックさえ戸惑っていた。
(どうなってやがる。なんとかガードできたが、この攻撃をもろに喰らった時にはまずいな。それに王女様のあの状態はなんだ)
ペルエリックはヘルナの状態について考察していた。世間一般に知られているヘルナの力は属性がない魔法を扱うこと、しかし現状ではどう考えてもその情報がデマであったとしか言えなかった。
(それにしても、さっきから私の作った空間なのにスキルが全然効いてない)
ペルエリックのスキル【作り上げる空間】
あらゆる地形に対して空間を作り、その空間を自由に操作することができるスキル
自身と他人に分かれており、自身は他人に対して、停止、弱体化の2つを付与することができる。さらに自身には増加、複製、放出の3つの得ることができる。
そして、この空間内では停止と弱体化は必中になる。
そのため、ペルエリックはヘルナを1番素早く対処しないといけないことを認識した。
ペルエリック、アテナ、ユリハラの3人はそこまで理解していなかったが問題であるヘルナ本人は気付いていた。
(この炎はガーネットさんから受け取った力でしょう。この状態ならアテナさんにやったみたいな停止が効かないってことでしょうか。ある一定のダメージを負わせると停止は解除されるですか。この力時間制限がありそうですね。なら、早めに倒すべき)
ヘルナはしっかりと拳を握り、力を込めた。
「行きます」
静かにそう呟くとペルエリックの元まで一瞬の間に移動し、殴りかかろうとした。しかし、ペルエリックはそれを予測していた。拳を避け、カウンターを繰り出そうとする。ヘルナはそれを避け、さらに拳を繰り出す。ヘルナとペルエリックお互いに高速に拳を繰り出し続けた。
しかし、それは長くは続かなかった。一発、たった一発をヘルナは頬に当たってしまった。その一発がこの拳の繰り出し合いにとってはとてもでかかった。ヘルナはペルエリックの拳を守ることしかできずに反撃する機会が生まれなかった。
これ以上はガードが崩れるとヘルナが思った瞬間。
『ヒール!!』
ユリハラがヘルナに回復魔法をかけ続けた。
「耐えてっす!!」
ユリハラが大声でヘルナに声をかけた。ヘルナはほんの一瞬、後ろを視界に捉え理解した。アテナが魔力を高めていた。ペルエリックもアテナのことが見えたため、壁から魔法を放出し出した。アテナとユリハラはノーガードでそれを喰らう。しかし、倒れることはなく、ペルエリックは何度も何度も魔法を放ち続けた。だが、2人とも倒れなかった。ペルエリックはアテナを倒そうと動こうとするがそれは叶わなかった。何せ目の前にヘルナがいたからだ。ペルエリックにとって、今この場で一番危険なのはアテナだが、ヘルナを一度見逃すと再び回復され、絶好のチャンスを失ってしまう。そのため、ペルエリックは魔法による攻撃しかアテナにできなかった。
「「「「はぁぁぁぁぁぁぁ」」」」
4人とも雄叫びを上げる。ユリハラの限界が来て、ヘルナがやられるか、アテナが先に魔力を高めきるかの2つに勝敗が揺らされた。
「ガハッ!!」
先に限界を迎えたのはユリハラだった。ユリハラはその場に倒れて、ヘルナへの回復がなくなった。ペルエリックはそれを見逃さずにさらに拳を強めた。ヘルナは耐え続けた。アテナを信じて。
「ヘルナぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
アテナの声が部屋全体に響き渡った。その瞬間、ヘルナは足に力を入れ、ジャンプした。ペルエリックもかわそうと足に力を入れるが力が入らなかった。ヘルナは防御をすると同時にペルエリックの足が負担になるように誘導していたからだ。ペルエリックは避けるのを諦め、アテナを停止させようとした。しかし、アテナは止まらない。何度も何度も停止させようとするが一向に停止しなかった。
アテナの渾身の一撃はペルエリックに見事に当たった。しかし、ペルエリックも諦めるわけにはいかなかった。攻撃が当たった瞬間に腹に力を入れ、カウンターをした。アテナは既に限界を迎えていた。そのため、カウンターを喰らい倒れた。ペルエリックは倒れそうになるのをプライドで倒れなかった。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
上からヘルナが拳を構えてペルエリックに向かって急降下してきた。ペルエリックも最後に力を振り絞って拳を構えた。
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
両者共に確信した、これが最後の一撃だとお互いの拳が交差した。
ドン!!!!
拳がぶつかった音が響いた。拳はお互い共、当たっており、2人共その場に倒れた。
ペルエリックは95ポイントを手に入れ、ヘルナは70ポイントを手に入れた。そして、4人はそのまま転送されていった。




