第60話 異常性
静かな夜の森、風の音しか聞こえない空間、その中を歩いていた。
「ねえ、カイロ。本当にこの方向であってるの?」
「あってますよ」
ぼくは、学園長とリゾートさんといっしょにリリアとサーケットさんが捕まっているヤンキーさんのもとに向かうため森の中を歩いている。しかし、リゾートさんは、ぼくのことを疑っている。まぁ、ただ森の中を歩いているに過ぎないからな。
「見えてきましたよ」
そこら一帯の木がなくなっている場所が見えてきた。ぼくたちはその場に着くと台が見えて、その台の上の方にリリアとサーケットさんが十字架で捕まっており、台にはヤンキーさんが座っていた。
「ここで、待っていてください」
「うむ、よいぞ」
ぼくは、学園長とリゾートさんにそう言うと森がなくなっている中心部まで、歩いていった。歩いている最中に気づいたことがあった。それにしても、土の上に小石が多く落ちているな。多分これは、ヤンキーさんの仕業でしょうか。
「ここかな?」
ぼくは小石が唯一落ちていなかった場所で立ち止まって、リリアとサーケットさんの様子を見た。どうやら、2人とも命に関わることはなく、ただ怪我を負っている状態であった。まぁ、リリアは目覚ませいて、カレンは気を失っているけど。
「ヤンキーさん、来ましたよ」
「遅かったじゃあねぇか!!」
「ごめんなさい」
とりあえず、素直に謝っておいた。リリアとサーケットさんに酷い目に合わないために。これは、無理かもしれないけど、試してみるか。
「あのヤンキーさん」
「あん?」
「リリアとサーケットさんを解放してください」
「無理に決まってんだろ!!」
やっぱり、駄目か。なら、この手で行きますか。
「じゃあ、ぼくは、学園長に手助けしてもらいますね」
ぼくが学園長に手助けをしてもらうか、リリアとサーケットさんを解放するかの2択から選ばせるか。
「ぐぬぬぬ」
やっぱり、学園長が怖いのか。焦ってる、焦ってる。学園長って強いっていう情報は広まっているらしいし。まぁ、ぼくは、知らなかったけどね。
「どちらにしますかぁ?」
少し煽り口調で言うとヤンキーさんは、怒った顔になった。ヤンキーさん程度、今のぼくより相当弱いから勝てるから、リリアとサーケットさんの解放の方を選んでほしいな。さて、ヤンキーさん、どうする?
「せめて片方だけだ!」
「両方共です」
「チッ…………」
駄々をこねるヤンキーさんに対して、鋭い目つきで問いかけるとヤンキーさんは、舌打ちをしながら、下の方を見ていた。
「……………なら、ヤンキーさん」
ぼくは、一向に決断しない、ヤンキーさんにもう一度問いかける。
「あん?」
「リリアとサーケットさんを解放したら、真面目に戦ってやる。でも…………」
「でも、何だ?」
ぼくは、魔力を外に溢れ出して、ヤンキーさんに見せつけるように魔力の質を強めた。
「でも、解放しなかったら、お前を一切相手にせずにリリアとサーケットさんを助けて、お前の相手を学園長に任せる」
「クソが!!」
ヤンキーさんから変なオーラが出ているし、やっぱりヤンキーさんは、ぼくとのタイマンを望んでいるから、学園長に変わってもらうことが嫌なんだろうね。なら、さっさと解放したらいいのに。
「さっさとどちらか選べ……………これは、命令だ」
ぼくは、魔力でヤンキーさんを脅さながら言う。
「クソが!!!!! もう、いいフリーダムとサーケットを解放してやる!!」
「それでいい」
やっと解放してくれるよ。めんどくさかったな。
解放されたリリアがサーケットさんをお姫様抱っこしながら飛んできた。
「カイロ、ありがとう」
「いいよ。それに、ぼくが悪いみたいなものだし」
「あはは、でも、気をつけてね。ヤンキーの力は、とても強いよ……………だって」
「能力」
「うん、知っていたの?」
「だいたい察している」
リリアに勝ったっていうことは、少なくとも能力の力がないと無理だし、それに、ヤンキーさんにあるあの力は、人間が持っているはずがない力だからな。リリアが負けるのも仕方ないこと。
「ヤンキーさんの能力のことは、言わないでね」
「え? 大丈夫なの? ヤンキー野郎に私の能力は、発動しなかったんだよ」
「ヤンキーさんの能力のこともリリアの能力が発動しなかった原因もぼくは知っているからさ。学園長のところに行ってください」
「わかったよ。なら、私のその原因ってやつをあとから説明してね」
「はいはい、わかりましたよ」
返事をするとリリアは、学園長のところに向かって行った。
さーてさーてとこっちの準備は、できているからいつまでいいけど、学園長は、ぼくの準備に気づいているのかな?
まぁ、いいんだけど、ヤンキーさんは、気づくはずもないからさ。絶対に、気づくことは、一生ない。
「ヤンキーさん、準備はできてますかぁ?」
「できてんに決まっているだろが!!」
こんな挑発に乗るなんて、アホだな。
まぁ、遊んでやりますか。
「お前ら、出てこい!!」
「やっぱり………」
ヤンキーさんの掛け声と共に小石が魔物に変わっていった。更に、木が大型の魔物に変わった。ぼくが予想したように、木や石が魔物に変わる能力だった。多分、支配することもできるな。
えっと、ウルフが50体、ゴブリンが150体、オークが100体、ベリグマーが25体、トロールが10体、ゴーストが15体、ゴリラタイガーが20体、スケルトンが30体で、合計400体か、こんなものか。
魔物の魔法を使う個体がいると聞いたが、炎魔法を使うのがその中で18体、光魔法を使うのが15体か。思ったよりもいるな。はぁ、めんどくさいな。
「はぁ、やりますか」
ぼくは、魔物の軍体の中に突っ込んでいった。
◇◇◇
リリア、カレン、ネオン、そして、ニルの4名は、カイロの戦闘を観戦していた。
「カイロ、さっきから、何をしているの?」
リリアが疑問に思っていた。
戦闘が始まってから、5分ほど経っていた。しかし、何故かカイロが魔物を倒した数は、10体ほどであった。しかも、その倒し方が、他の魔物を使った倒し方だった。
リリアは、そんなカイロを見て、あの程度の魔物なら、すぐに倒せるはずなのに、何で倒したいないんだろうと。
「さあな、だが、カーラレスには、考えがあるようだがな」
「ん?」
リリアの問いにニルが面白いのを見るように答えた。リリアは、そんなニルの方を見ると目隠しをしているのに「何がわかるのだろうか?」と思っている。
「う〜ん、今どういう状況?」
カレンが起きて上がってきて、状況を聞いてきた。それにリリアが対応して、話していた。
「今、カイロのやつ、更に8体倒した。ペースが上がってきている」
ネオンがカイロの状況を伝えていた。しかも、カイロの魔物を倒すスピードが上がってきている。
「入試試験の筆記試験、問一」
「え?」
ニルが急に言い出した。3人共、急に言った学園長に言葉によって、戸惑っていた。
「えっと、四大魔法を答えなさいですよね」
ネオンが答えた。
「ああ、そうだ」
「急にどうしたのですか?」
「フリーダムよ。この問題の正答率は、99.9%」
「え?」
「たった1人だけ、この問題をミスった者がいる」
「それって…………もしかして…………」
「カーラレス、たった1人だけ、問題をミスった」
「じゃあ、何で合格することが…………」
リリアが言っていることは正しい。
入学試験の筆記試験は、前半の問題ほど簡単で後半になるにつれ難しくなってきている。そのため、前半の問題で間違えた者は、合格が難しくなっている。
「最終問題、魔力とは何か答えなさい」
「それがどうしたのですか?」
「正解したのは、たった1人。その唯一の正解者が、カーラレスたった1人」
魔力については、この世界では、まだ知れ渡っていないため正答する者はいない。しかし、カイロやニルなど強者は、魔力については、普通に知っている常識だった。
「え? じゃあ、何でカイロは、問一なんて間違ったのですか?」
「わざとミスったってことですか?」
「「え?」」
カレンの言葉にリリアとネオンの声が重なった。
「そうだ、サーケット。カーラレスは、前半の全ての問題を間違えて後半の全ての問題を正解した」
「狙ったということですか?」
「そうだ」
「それが、何故今?」
「カーラレスの異常性」
「異常性?」
リリアが聞き直す。
「止まった」
そのとき、カレンがカイロの動きが止まったと言った。カイロは、魔物を合計で33体を倒したところで止まった。
その瞬間、月が雲によって、光が一切入らないように隠れた。
何も見えない空間ができあかった。




