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少女と白の心  作者: 連星れん
その後

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99/203

大陸暦1977年――01 朝


 瞼裏に光を感じて目を開けた。

 ぼんやりと見慣れた天井が視界に入ってくる。それを視界と同じくハッキリとしない意識のまま見ていると、左横から「おはようございます」と挨拶の言葉が投げ掛けられた。


「あぁ……おはよ……」


 そう条件反射で返してから違和感を覚える。目覚めてすぐに声をかけられるなんて、ここに住むようになってから一度もなかったことだ。

 私は怪訝に思いながら声がした左側に顔を向ける。まだ焦点が合わない視界に入ってきたのは白色と緑色だった。それがなんであるかを動いていない頭でぼんやりと考えているうちに、先に視界が鮮明さを取り戻した。


「……!?」


 それを認識した途端、私は思わず飛び起きた。

 勢いよく上体を起こした私を、フラウリアが驚くように濃い緑色の目を見張っている。

 そう。フラウリアだ。フラウリアが自分の寝床にいる。

 私はそのことに動揺しながらも、なぜここにこいつがいるのかを考える。

 ……そうだ。昨夜は風が強くて、こいつが家の鳴る音を怖がって、ええと、それであれだ。あのあと結局一緒に寝床に入って、話しているうちに先にこいつが寝落ちして、私も眠くなったからそのまま寝たんだった。

 フラウリアは動揺が抜けきらない私を瞬きしながら見上げている。なにか言ったほうがいいのだろうか、しかしなにを言えばいいのだろうか、と悩んでいるうちにフラウリアは小さく笑みを漏らすと「身支度してきますと」とベッドから降りて部屋を出ていった。

 それに返事もできず見送り、そのまま扉を見続けてしまう。

 そうしてしばらく呆然としていると、動いていなかった頭が次第に覚醒してきた。それに伴って昨夜のことが鮮明に思い起こされ、柄にもなく顔が熱くなる。

 あれだけ他人に見られるのが嫌だった無防備な寝姿を晒してしまったとかどうでもいいと思えるぐらいに、昨夜の出来事は恥ずかしい。自分から誰かを抱きしめたいと思うだなんて、幸せで泣いてしまっただなんて、今考えただけでも羞恥で悶えそうになる。

 そのことにいてもたってもいられなくなった私はベッドから下りると、洗面場へと入った。それから冷たい水で顔を洗って身支度をする。そうして身体を動かしているうちに顔の火照りも頭も気持ちも大分、落ち着いてきた。

 ……あれだ。フラウリアは特に気にした様子はなかったのだから、変に意識するな。

 いつも通りだ。いつも通りでいればいい。

 そう自分に言い聞かせるように思うと、身支度を終えて自室を出た。



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