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少女と白の心  作者: 連星れん
前編
23/198

黒い不純物


 黒い亀裂だらけとなった白い世界で。

 今にも崩れてしまいそうなひび割れた世界で。

 少女は一人、うずくまっていた。

 目から次々と溢れ出る涙を拭うこともせず。

 痛みで胸を掻きむしるように掴みながら、身を丸めていた。

 少女の回りには相も変わらず黒い霧が漂っている。

 ざわざわと黒く恐ろしいざわめきを発しながら、少女を逃がさないようにと隙間なく取り囲んでいる。

 だけど少女はもう耳を塞いでいなかった。

 黒い声に慣れたからではない。

 それが無意味だと分かったからだ。

 どんなにきつく塞いでも、それは身体に染みこむように聞こえてくる。

 痛みを伴って入り込んでくる。

 だからこそ少女は身体を丸めるしかなかった。

 外から入ってくる痛みに耐えるために。

 内から生まれる痛みに耐えるために。

 助けがこないことを少女は悟っていた。

 ここは少女だけの世界だと知っているから。

 本来は誰にも侵されることのない場所なのだと少女は知っているから。

 だから終わりのない苦痛に少女は一人、耐えるしかなかった。


 そうしてどれぐらい経ったころだろうか。

 ふいに少女は気づいた。

 黒いざわめきの中に、何かが混じっていることを。

 黒い声とは明らかに違う、異質なものの存在を。

 その不純物の存在に少女はぼんやりと、だけど確かに気がついた。

 そしてそれに気づいた途端、その不純物は形となった。

 ―――――。

 それは何かを言っているようだった。

 だけど少女には、それが何を言っているのか判別できない。

 声が遠いからではない。

 声が小さいからでもなかった。

 その言葉自体が知らないもののように理解できなかった。

 それでも少女には、それが黒い声とは別物だということだけは分かった。

 なぜならそれには、恐ろしさも、痛みも感じないから。

 ―――――。

 尚もそれは何かを言い続けている。

 ―――――。

 呼びかけるように何かを言っている。

 ―――――。

 次第にその声が近くなり、頭上までやってきたとき。

 少女は長いこと俯いていた顔を上げた。



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