8話 謎の少年
皆さんお久しぶりです。
はい、何のお知らせもなく突然二ヶ月も休載のような形になってしまい本当に申し訳ございませんでした。
実は作者が約一ヶ月間に渡りスマホを没収されており執筆することができませんでした。(あとの一ヶ月はふつうにやっていなかっただけです)
これからまた怒られない程度のスマホ利用を心がけながら執筆活動を続けていきたいと思いますので引き続きよろしくお願いします。
また、前話の最後の数行を削除しました。ろくにプロットを作っていなかったせいで少し繋がりがおかしくなってしまったのが理由です。
地面も見えないほどにごった返した人混みの中、少年は奇妙なほど器用に雑踏の間をすり抜けながら逍遥していた。
少し俯いたような姿勢のまま歩を進めていた少年だったが、ふと顔を上げると巨漢にその視界を塞がれた。しかし少年は避けるそぶりも見せずに直進する。
当然避けられると思っていた男は一瞬面食らったような表情を浮かべるも、次の瞬間にはニヤリと笑い、男の方も大きな動きで少年にぶつかりにいった。
この光景を視界の端に収めていた人々は皆、小柄な少年が巨漢に弾き飛ばされるような状況を想像しただろう。両者の体格を考えれば、それは極めて妥当な予測と言える。
しかし、結果は違った。ただしどう違ったのか分かった者は通行人たちの中にはいなかった。
ただ見えたのは、目を疑ってしまうような結果だけ。
男の踏み出した先、そこに少年の影は既になかった。代わりに少年がいたのは男の隣だ。何事もなかったかのようにそこに現れたーー少なくとも周りにはそう映った――少年は軽く男にぶつかるようにした後、悠然と歩み去って行った。
♦︎
「銀貨三枚に銅貨五枚かぁ。 しけてんなー」
別に金がなくて盗みをしているわけではないが、やはり少額だといささか盛り上がりに欠ける。そんなことを考えながら戦利品を手のひらの上で弄んでいた少年は、次の獲物を探して視線を動かす。
すると、ちょうどいいのが見つかった。
まさに盗んでくださいと言わんばかりの無防備さで巾着を右の腰に下げた小太りの男。少年には、その中身が硬貨であること、さらにその中に金貨が含まれていることまで分かっていた。
獲物を決めたら、あとは適当に近づくだけ。
もう慣れ始めてスリルも何も感じなくなってきていたが、何となくまた盗みを繰り返してしまう。
すれ違う瞬間よろめくようにして軽く相手の右半身にぶつかり、それと同時に素早く巾着を掠め取ってまた何食わぬ顔をして歩き出す。
金貨ニ枚に銀貨と銅貨が五枚ずつ。どうやら当たりだったようだ。
上機嫌で歩いていた少年だったが、前から歩いてくる自分と同じくらいの歳と思しき二人の少年を視界に捉えた。
片方が握っているのは銅貨五枚。困り顔でもう片方と何やら話しているため、夕飯を食べたいが所持金が足りずに途方にくれているといったところか。
親の店で何か食べさせてあげようかとも考えた少年だったが、ついでに少しからかってやるのも面白いかと思い二人に近づいていった。
♦︎
道の模様とにらめっこをしながら夕飯のことを考えていた俺だったが、ふと視線を上げると前を歩く小太りのおっさんと向こうから歩いてきた子どもがぶつかっているのを見た。
子供といっても、歳は俺と同じか少し上くらい。
よろめいてしまったように見えたがどうしたのだろうか。
まあそれより何より夕飯だ。ファイも隣でウンウン言ってはいるが、やはりいい案は思い浮かばないらしい。
心許ない資金である銅貨たちを見つめてみるも、何も変わらない。
「あーあ。やっぱそこのラートン串を2本ずつ買って、あとは家帰って何か食べるか?」
ラートン串はリネールの名物だ。油がたくさんのったラートンの肉を串に刺し、それにタレをつけて焼いた人気の食べ物。
ただ、数本で腹がふくれることはない。やはり家で食べるしかないようだ。
「そうだね……」
少し残念ではあるが仕方ない。そう思い特に意味もなく握った銅貨を投げ上げた。
—―あれ。
硬い感触が返ってこないことに違和感を覚え、右手を見てみるとそこにあるはずのものは見つからなかった。
「ねえそれ、返して」
隣でファイがちょうど今すれ違った少年に向けて怒気を孕んだ声音で言った。
こいつが俺たちの金をとったのか?だが全然気付かなかった。
「あれ、気づいたのか」
面白がるように少年はファイに答える。そして、五枚の銅貨をこっちに投げ返してきた。
「ほらよ」
通りで立ち止まって話している俺たちに通行人のうち数人は不思議そうな視線を向けてくるが、まるで意識していないようだ。
「まあそんな怒るなって。晩飯でも食えなくて困ってんだろ? うちで食わしてやるよ」
そして得体の知れない彼は今俺たちが一番欲しがっていることを言ってきた。
作品中で少し違和感を感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、これから解決されると思います。