4話 リネールの英雄
かなり前回の投稿から間が空いてしまい、すみませんでした。
次回からもう少し投稿ペースを上げられるよう頑張ります。
飄々と鳴り響く笛の音とともに、武装した何かの仮装をした集団がこちらへ向かってきていた。
「あれは――騎士か何かか?」
「うーん なんだろうね」
よく見るとその集団はただ歩いているだけではなく、戦っている様子を演じているようだ。それに、全員が同じ格好をしているわけでもない。
一際派手な格好をした男が手にした木剣を振るうと、周囲の鎧をつけている男たちとは別の何かが仰け反り列から外れていく。恐らく、彼らは派手なやつにやられたという事だろう。
「おい、そこの坊ちゃんたち。 英霊祭は初めてか?」
「ん? ああ、そうだぜ 。 だけどおっさん何でわかったんだ?」
「物珍しそうにパレードを見てたからな。 あれはな、この国の英雄ヘラクレス様の戦いを再現してんだ」
へえ、英雄か。 聞いた事なかったけどなんか格好いい響きだな。
「そうなんだ。 でも、何でこの町でヘラクレス様? のためのお祭りをしてるの?」
「それはな、この町も昔ヘラクレス様に救ってもらったからだ。 なんでも、この町全体を覆っちまうくらいデカイ龍を倒したらしいぜ」
「マジかよ!」
昔はどうだったか知らないが、このリネールはかなり規模の大きい町だ。 それを覆っちまうくらいの生物なんて存在するのだろうか。
「もう少ししたらパレードもクライマックスだ。 流石にこの町ほどのデカさじゃないが、龍も出てきて戦うぜ」
「へぇ。 見てみたいね、オルター」
「ああ」
「だが、それが始まるのは一行が広場に着いてからだ。 もうそこで場所取りしてるやつらもいるし、その背のお前らじゃ後ろからは見えないだろうな」
「ええ!?」
期待していた分だけかなりがっかりだ。 というかこのおっさん、これだけ持ち上げといてそんなこと言うとか意地が悪いな。
そう思い、おっさんを見上げると、何か怪しい笑みを浮かべていた。
「だが、そんなお前らに朗報だ。 実は、広場には俺の仲間たちがすでに陣取っててな。最前列の一番いいとこを確保している――」
おっさんの話はまだ途中だが、だいたいこの後何を言うかは予想がつく。
隣のファイも同じようで、思わず二人で顔を見合わせてしまった。
「――だが、お前らは祭が初めてらしいしな。優しい俺たちは場所を譲ってやることもできる。」
そして一度わざとらしく間を空け、
「どうだ、お前ら。ヘラクレス様の龍退治を見たくないか?」
「「やっぱり……」」
「ん? なんか言ったか?」
「いや、なんでもないよ。 でもそんな良い話、タダでってわけにもいかないんでしょ?」
仕方ないから、ファイが自ら話を進めてやった。
「まあ、そうだな。一人銀貨一枚、二人合わせて銀貨二枚でどうだ?」
「いや、それはぼったくりすぎだろ、おっさん。第一、俺たちそんなに金持ってねえよ」
これは嘘だ。 だが、俺たちが夕飯代として貰ってきたのは銀貨三枚。高すぎるというのは本当の話だ。
「仕方ねえ。二人合わせて銀貨一枚、銅貨五枚だ。これ以上は下げねえぜ」
ファイとアイコンタクトを取り、この話を受けることを決める。
「分かった」
「よし、じゃあ広場に行ったらでっかいハゲに話しかけろ。 ザギルが言ってたって言えばいい。」
こうして、俺たちは英霊祭クライマックスを最前列でみれる場所を手に入れた。
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