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かゑ  作者: ローリング・J・K
2/4

10月の冷気がカーテンをふるわせ、吹奏楽の音色を部屋に回折させている。

一方で、どうも明瞭とは言えない荒声や金属音を鳴らしているのは野球部らしい。


放課後の校舎ではだいたいどの教室にいてもこのような環境音が当たり前だろうが、この部屋はそれに加えて視聴覚室と隣接しているのが問題だ。

と言うのも、放課後の視聴覚室は軽音楽部の部室として使用される。

その為、俺は図書委員という職に就いている限り、この廊下一筋の隔壁を越す微妙に下手な歌声を聞き流さなければならない。


だが、窓から聞こえる環境音とその反対側から聞こえるドア越しの騒音に、何故だか俺は優劣を付けられなかった。

冷たい空気の混ぜた音色が、耳に入る音までをも清涼的にしているようだった。

しかし、その感覚を共有できるのはこの部屋に居る2人のみだ。


去年から設立された自習教室が予想以上の人気らしく、図書室に勉強目的で来る人間は減り、ましてや金曜日の今日では、ここに来る少数派の勉強家や、単純な読書家も、明日に迫る休息の誘惑に打ち勝てず、休日に思いを馳せて帰路についていた。

その為、いつもは2~3人の生徒が見られる教室が、今では手のひらを返したようにガラリとしている。


俺達はその教室を自分の部屋かあるいは別荘のような感覚でくつろぎ、ここを数あるうちのひとつの自分の居場所として捉えていた。


司書はもちろんいるが、金曜日に定例の職員会議がある関係で、昼休みと放課後の仕事の内、放課後では滅多に会うことは無い。



だが、、

やはり異性と二人きりでひとつの部屋にいるというのは緊張する。

ひょいと一瞬だけ彼女に目を散らすと、俺は急にシャツのたるみが気になって、んんと喉を鳴らしながらベルトにシワを押し込んだ。

本を読み直す直前に腕時計を確認し、4:30まであと28分もあるなぁと緊張的なため息が漏れた。

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