始まりの合図-1
long long 文章しちゃった
令和に決まったけど、他の案よりはましかなぁと思ったよ
エスなんちゃら語に翻訳しちゃだめだよ?
なんて思いながら翻訳引いてみたらReiwaになってて草
今日も今日とておやすみなさい
三月二十日 昼 都内某ビル内にて
「――以上で報告を終わります」
「わかった、引き続き調査を頼む」
「はい。では、失礼します」
私は頭を下げ、部屋から退出する。
ここはとあるビルの一室。
一見何でもないただのオフィスビルに見えるが、実際は魔術師協会が所持するビルの一つである。
私はここに、高校一年生のときから三年間所属している。
魔術協会とはその名の通り、魔術師たちが所属する組織だ。
魔術を扱うことができる者を魔術師と呼び、魔術師協会に所属できるのは基本的に魔術師のみとしている。
この組織は政府公認で、隠れて魔術関連の省庁も存在し、時折外交関連に関わることもある。
もちろん、一般には魔術の存在すらオカルトの類としてしか知られていないため、混乱を防ぐために情報を完全に秘匿している。
よって、魔術省庁についての報道は一切されない。
魔術師協会に国境は存在せず、例え外交関連で良くない関係であっても両国にある魔術師協会には関係なく、必要なときは協力体制をとる。
魔術師協会は世間から隠れなければならないので、不便にならない程度に地方ごとに支部が置かれている。
私が今いるここは関東支部、または本部とも言われている。
私が先程行っていたのは、上から指示された事柄の調査報告だ。
魔術師協会の仕事は、危険な思考を持つ野良の魔術師の監視、魔術が要因の災害からの市民の保護など、魔術関連の他、特殊な事件の解決が主である。
そしてその内の一つ、魔獣と呼ばれるモノ達からの依頼を私が受けることになった。
本来、所属僅か三年目の新人が一人で仕事をすることはないのだが、私の能力がこの依頼に最適で、十分な実力があると認められた。
これは相当誇れることで、私としても嬉しいことではある。
ただ、一人は少し厳しいと思うのが本音だ。
私が受けた依頼についてだが、依頼主は火鳥だ。
死んでも灰となって蘇るため不死鳥とも呼ばれている。
内容は不死鳥の子供の捜索だ。
『人の世界を見るんだ』と巣を飛び出していったそうだが、それ以来連絡がないらしい。
それはただの家出なのでは?と思うが、親鳥たちによると、日本のどこかに居るはずなのに、その存在を感じられないという。
何かによって存在を遮断されているからどこにいるのか感じられないのかもしれない、そこで私の出番だ。
私は特殊な眼を持っている。
普通では見えないような、人が持つ魔力の流れや性質を視ることができる。
この眼の力で、子鳥を探し出すというのが私の仕事内容だ。
ただ、視ることができても、ヒントすら無ければどこを探し視ればいいのかわからない。
改めて、人手が欲しくなる。
「姉貴、終わった?」
「あぁ、優魔の方は?」
「俺の方はもう少し」
「そうか」
いつの間にかエントランスまで戻ってきていた。
これは私の弟で、今年から高校一年生になるので私の仕事のついでに、魔術師協会に所属する手続きを行いにきた。
あ、受付に呼ばれたようだな。
「じゃあ、ちょっと待ってて」
魔術師協会は高校一年生から所属できるようになっている。
所属した新人は、出来ること次第で変わるが、部署に引っこ抜かれたり自分で売り込んだり、必要なときに呼ばれて作業等を手伝ったり知能の低い魔獣が街に現れないか監視したりする。
自分で売り込むと言っても、まぁ部活のようなものだ。
自分のことをアピールして、能力や人柄がその部署にあまりにも合わない者を除いて所属できる。
あ、人手…
いや、一人程度では変わらないからやめよう。
「あ、未咲さん、こんにちは」
「こんにちは、奈美ちゃん。今日は所属の手続きに?」
「そうなんです、これからは未咲さんのお役に立てるようがんばります!」
「ははそうか、声がでかい」
こちらの、自分が大声になっていることに気が付いて顔を赤くして俯くのは井浦奈美ちゃん、私たちが諸事情で引っ越す前に家族ぐるみで仲が良かった。
仲良くするのはいいのだが、私みたいなのをすごい人、みたいに尊敬してしまっているのはいただけない。
確かに実力はあるかもしれないが、憧れられるのは、な。
「どうかしたんですか?」
「いや、なんでもない。ところで、奈美ちゃんは所属したい部署はあるのか?」
「はい!もちろん未咲さんのも――」
「却下」
「なんでですか!」
「いや、だって、私の仕事はそう簡単に終えられるものではないから。下手したら、奈美ちゃんの高校生活が危うい状態に――」
「問題ないですよ!未咲さんの下へ行けるなら本望です!」
「声」
「あぅ」
「まぁとにかく、私の入ってる部署はともかく私の仕事を手伝うのは、メインにしない方がいいよ」
明るいのは好ましいが、もう少し現実を見てほしいのが現状だな。
仕事は適材適所で行う方がいいんだから、奈美ちゃんの能力が活かされる部署に入った方がいいと、私は思うんだ。
奈美ちゃんとしても、私としても。
いや、でも、変な奴がいる部署に入られても困るな。
あのチャラナンパ師に目を付けられると、奈美ちゃんは押し負けそうだ。
そう考えると、奈美ちゃんは勧誘したほうがいいのか?
あのナンパ師の目に入らない内に。
「未咲ちゃんじゃん。奇遇だねぇ。お仕事?」
「うわ、出た」
「えぇ何その言い方、酷くない?まるで虫が出たみたいな。僕ちん泣いちゃうよ?あれ、無視?虫だけに。って未咲ちゃーん?」
この腐った口とカビた脳味噌を持っているイケメンは雨雲令。
こいつは一言で言えば類い希なる天才。
二言目を付ければそれを無駄遣いする猿である。
「…その腐った口を閉じて回れ右をして帰れ。ついでにカビた脳味噌も取り替えてきな」
「ヒドい」
令の家系はとても有名で、実力のある一族であった。
雨雲家は代々、水に関する魔術を得意とし、温度を操る氷魔術を創り出すことを一応の目標としていた。
家としての目標がそれなだけで、氷魔術の研究に手をつけないものもいた。
だが、その目標を遂に達成したのが、このナルシストだ。
十年程前、齢僅か十歳にして不可能と言われていた魔術を完成させたのだ。
完成させる少し前、彼の家で、ある大事件が起こったのだが、それのおかげで完成させることが出来たのだと言う。
魔術は基本的に理論を理解出来なければ発動できないため、他人に理解できるよう考えているらしいが、その大事件によって彼は一人になってしまっているため、恐らく伝えられていくことはないだろう。
こんな奴が、ただ一人の氷魔術の使い手というのは、私としては不快なのでさっさと誰かが使えるようになってほしい。
「どしたの、オレの顔をジッと見つめちゃって。もしかして惚れた?」
「煩いから黙っていてくれ」
少し低い声が出てしまったようで、令は少し動揺している。
普段私の受け答えで動揺することはないから分かる、私は少しストレスが貯まり過ぎているようだ。
「えっと、未咲さん、こちらの方は?」
「見ちゃだめだ、奈美ちゃん、目が腐る」
「ヒドいよ!てかその子誰?可愛いね、俺は雨雲令だよ」
「あ、どうも、井浦奈美です」
「よろしくね、奈美ちゃん」
私の忠告を無視して挨拶してしまった奈美ちゃん。
危ない、こいつの魔の手がすぐそこまで迫っている。
「げっ、なんでこんなところに変質者が。姉貴から離れろやコラァ!」
丁度いいタイミングだ、令の注意が奈美ちゃんから離れる。
「あ、クソ弟君久し振りだね出口はあっちだよ」
「出口に促そうとすんな」
「令、いつまでここに居るつもりなんだ?自分が言ったとおり出口はあっちだぞ?」
「い、いやだなぁ冗談だよ、冗談。オレとゆう君は仲良しだよぉ?」
私が少し怒気を込めて言えば言うことをすぐに聞いてくれるのはまだましな方か。
グゥ~
音の出所に顔を向ければ、再び顔を赤くして俯く奈美ちゃんの姿が。
「お昼ご飯にしようか」
誰が言ったか、ここでの用事は済んだのでお昼を食べに行くことにする。
「なんで令がついて来るんだ?」
「ここでの用事が終わったからだよぉ」
「それは理由になってないんだが」
どうせ何を言ってもついて来るつもりなんだろう、もういいや。