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世界の闇は陰にて嗤う  作者: おれんじじゅ~す
GW ~空間の魔術師~
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フライパンでカキン

『税抜』を『脱税』と読んでしまって死にたくなりました

おやすみなさい

ガンッ


「いっでぇ!」


意気揚々と飛び出した詩織は、瞬間何かにおもいっきり頭をぶつけました。

何にかと言えば勿論、圭の不可侵領域。


「本堂、バカだなぁお前。護ってんだから突然飛び出そうとすんなよ」

「え、えぇ…」

「…格好つけた報い」


不可侵領域の性質を知らなかった詩織は別に悪くないが、圭と紗耶香に責められる可哀想な詩織君。


「空間、行くから解いて」

「バカかお前、解いた瞬間にやられるだろ」

「解いた瞬間に攻撃を始めるから問題ないが、まぁそうだな。合図をしたら解いてくれ」


解いたと気付かれれば攻撃されるのは当然であるので、オーンに気付かれないように何かをする。

何かは詩織が魔術で何かするのだろう。


「『光る手の中、世界を照らす』」

「むっ」


圭の不可侵領域は空間を固定するが、外が見えているので光を通すことがわかる。

それなら強力な光を浴びせ目を眩ませ、こちらを見ていられなくすることも可能だ。


魔術の行使で眩しく光る手のひらをオーンに向けると、オーンは手で目を覆う。

突然懐中電灯を目に向けられたら吃驚するのが普通だ。

油断なく観察していたオーンに、僅かな隙が出来る。


詩織の魔術で見えなくなった瞬間、圭は領域を解除する。

圭はこの光を合図と受け取ったからだ。

そしてそれはその通りで、領域が解けた瞬間に詩織は飛び出した。


その速さは圧倒的で、オーンまでのおよそ二十メートルを一瞬で駆ける。

そして振りかぶった腕を振り抜く。


「ぬぅぅ」


オーンは腕を交差させ防御する。

その一撃は重く、オーンは守りの体勢のまま少し後ろに飛ばされる。

そこへ追撃するように詩織が蹴りを入れるが、オーンはそれを躱す。

詩織に向かって魔法を使おうとするが、詩織が常に高速で移動してくるため狙いが付けられない。

仕方なく体術で戦う。


詩織が使った魔術の効果は身体能力向上と思考能力向上、そして暗視効果付与だ。

詩織が先程言っていた「解いた瞬間に攻撃を始める」というのは言葉通り、一瞬でオーンの元まで行けるということだ。


詩織は、先ほどオーンが圭に向けて放ったときに若干のタイムラグがあることに気付いた。

そこから、魔法は瞬間には効果を現さないと考え、常に攻撃をし続けることを思い付いた。


圭の不可侵領域に頭をぶつけるマヌケだが、やるときはやる男なのだ。たぶん。


圭の方は、不可侵領域を解いてすぐに転移の魔法陣を編む。

突然強くなった詩織に呆けてる暇はない。

転移の魔法陣はとても複雑だ。

普通の魔術を中学数学とするなら、転移は高校数学だ。

難易度が一気に変わる。

それを全て暗算でやる辺り、圭は天才と言える。



「先程と違うてよく動くのぅ」

「そりゃあ、今この時に全てをかけてるからな」

「ふむ、まぁ、今仕留められぬともさして大きな問題は生じぬが」


圭が転移魔術を編み始めてからもうじき十秒が経つ頃、オーンが詩織に話しかけた。

その顔に焦りが見えないのは言葉通り、特に困ることはないからだろうか。


「じゃが、戻らなければ転移を受けられぬのじゃろう?」

「聞こえていたのか、地獄耳め。だが問題はねえ、よ!」

「なぬっ!」


拮抗を保っていた二人の攻防が崩れ、オーンの顔に拳が入り殴り飛ばされる。

詩織の動きが僅かに速くなったのだ。

それはつまり、若干手を抜いていたということ。

オーンが詩織を甘く見ていなければできなかっただろう。


「いや、甘く見ていたからこそ、じゃな」


詩織はオーンに嘗められていることを知り、それを逆手にとりオーンに一杯食わせた。

詩織は圭のもとへ戻っていく。

倒れていくオーンでは、追い付くことは出来ない。


また、魔法も間に合わないだろう。

オーンの魔法には、干渉する場所までの距離によりタイムラグが生じる。

詩織の速さには到底追い付くことは出来ない。

この距離では、魔法が発動する頃には既に転移をしてしまったあとだろう。



「じゃが、逃がさん」


プライドを傷つけられたオーンは自分でも気づかぬうちに、ムキになって腕を振る。

地面にあった手のひらサイズの石を、魔法で銃の弾丸並みの速さにして飛ばす。

だがそれは詩織の横を通り抜ける。

狙いは詩織ではなく、圭だ。


今意識を逸らすと、魔法陣は崩れてしまう。

だから圭は何もしない。

隣の雨水紗耶香を信頼して。


カンッ


オーンが放った石の弾丸は、金属音と共に弾かれた。

見えるのは紗耶香のフライパンを振り抜いた姿。

フライパンで弾き返したのだ。


詩織は叫ぶ。

もう辿り着く、


「空間!」

「ああ!転――」

「死ねクソ女ァァァ!!」

「!?」


そんなとき横から声が聞こえる。

そちらを見れば、血走った目で紗耶香を睨み、左腕を振りかぶっている悪魔ディー。

紗耶香はフライパンを振り抜いた姿勢のまま動くことが出来ない。

ディーはそのまま腕を突き出した。



グチャ ポタポタ


肉を貫く音。

滴り落ちる血液。

しかしどちらも紗耶香からではない。

ギリギリ間に合った詩織が、紗耶香の代わりに腹を貫かれている。


「この糞野郎邪魔しやがってぇ!」

「転移!」


詩織が貫かれようとも冷静に、圭は転移を発動する。

別に誰かが死のうが構わない、この冷酷さがときに冷静な判断を下すことが可能になることもある 。


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