ある日森の中(あ)くまさんに出会った
誠意の連日投稿!
イェイ!(・∀・)v
少し時間は戻り、雨水紗耶香は森を歩いていた。
出来るだけ空間圭から離れるため、立ち止まらないで歩き続けた。
彼のそばにいると、この子が嫌がる。
理由を聞くと、嫌な臭いがしているようで。
自分にはわからないから何もできないが、せめて出来るだけ離れてあげる。
さて、だいぶ離れたところまで来たが、未だ森が切れる気配がない。
だいぶ歩いたが、ここまで獣道くらいしか道がない。
ここがどれだけ深い森かよくわかる。
(…どうしたの?)
紗耶香は、その子の異変に気づいた。
聞いてみると、凄く臭いのが近付いてきているらしい。
紗耶香は、圭が近づいてきたのかと思いムッとしたが、直後にそれは勘違いだと気づかされた。
ボンッ
破裂音と共に、炎が上がる。
その子が、炎の方から臭うと言う。
空間圭は空間魔術を使うはず。
紗耶香は炎の方へ駆け出した。
時を同じく、本堂詩織も森を歩いていた。
本当は雨水紗耶香を追うつもりであったが、行くのが早すぎてすぐ見失ってしまった。
「全く、自分勝手なやつばかりだ」
敵陣の中で単独行動など、危険だ。
圭も紗耶香も隠密行動が得意なら構わないが、相手も空間魔術を使うのだ、探そうと思えばすぐに見つかるだろう。
それなのに圭は二人を追い払い、紗耶香はいつの間にか居ない。
自殺願望でもあるのか、と詩織は思った。
「!?」
それは偶然だった。
たまたま空を見上げていたから気付けた。
突然、直径五十センチほどの火の玉が飛んでくる。
それが視界に入ったから回避することができた。
気が付かなければ、詩織は消し炭になっていただろう。
「おやおやぁ?避けられちまったよぉ!」
「!?」
若い男の声が響いてくる。
見ると、老人と二人の若い男が空から降りてくる。
響いてくる声の主は若い男の片割れだ。
詩織に避けられたのが意外だったのか、声には驚きが含まれていた。
歪んだ笑顔と一緒に。
詩織も同様、驚きの表情を露にしている。
こちらは、男たちのような存在が、こんなところで出てくるという驚きだ。
男たちは黒く光る翼を広げ、降りてきている。
魔術などではなく、翼で空をとんでいるのだ。
彼らは『悪魔』。
西洋に現れる、神と対になる存在だ。
彼らの恐れるべきは、その身体能力と、『魔法』だ。
悪魔は魔術ではなく魔法を使う。
彼らの魔法は、一般人の中にたまにもっている人が居る、異能力に近いところがある。
どの魔法も強力なもので、そして身体能力の高さ誇る厄介な怪物だ。
そんな化け物が三体も現れた。
詩織は今、絶体絶命に近い状態となっている。
「貴様らは、悪魔だよな?何故ここにいる」
「何故かってぇ?はぁ!?しらばっくれてんじゃねぇぞ!」
「待てよ、ディー」
詩織は時間稼ぎのための質問をする。
しかし、どうやらそれが勘に障ったようで、詩織に怒鳴りかかろうとする。
それをもう一人の悪魔が止める。
「なんだよ、フール?」
「よく考えてみろ。あの男は違うだろ?ってことは、もう逃げられてるんだ。殺さずに場所を吐かせた方がいいあとフールって渾名やめろってんだろぶち殺すぞ」
「殺すぞ?よしぶち殺してやらぁ!」
「ちげぇわカス!」
フールと呼ばれた男がディーという男を殴って止める。
ろくに話を聞いていないディーのせいでプチコントみたいになってはいるが、詩織は問答無用で殺されそうになっている。
内心、かなりドキドキしている。
「これこれレーデンディス君、フール君、彼が暇しているぞ」
ここまで黙っていた老悪魔が口を開いた。
若い二人の悪魔が口を閉じる。
ディーという男はレーデンディスと言うらしい。
「少年よ、ワシはオーンという」
「それは、ご丁寧にどうも。俺は詩織だ」
「うむ、シオリ君、何故ワシらがここへ来たか、じゃったのう。それは、数日前の嫌がらせへの仕返しといったところじゃのう。ワシらはかなり迷惑したんじゃなぁ」
オーンという老悪魔は当時のことを思い出しているのか、うんうんと頷きながら話す。
ただ、
「生憎、それは俺とは関係ない話だな。俺も敵を追ってここへ来たのだからな」
「うむ?そうなのか。ふむ…ふむ、残念じゃが…魔術師協会には、知られる訳にはいかんのぅ」
「!?」
オーンが考えた後に放った言葉は、戦闘開始の引き金となった。
詩織はまだ、自分が魔術師協会の者とは言っていない。
言うつもりも無かったので、オーンに協会の者と気づかれたことに一瞬動揺したが、皇居でのことを知っているのなら、当たり前のようにわかること。
なので、動揺は一瞬だったのだが、一瞬の隙が命取りとなるのが魔術師達の戦場だ。
気付いた時には、ディーの放った火球が眼前まで迫っていた。