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世界の闇は陰にて嗤う  作者: おれんじじゅ~す
GW ~空間の魔術師~
27/46

留守番を言い渡された子供は親の過保護に呆れる

宿題で時間がとられて辛いの


そろそろテストです

ストックはないです

はい、お疲れ様です

泡餓がズボンを穿いてからそのまま一日が経過した。


「二人とも、こんばんは。もうメンバーは揃っているよ」


圭と泡餓は聖山の元へやってきた。

場所はとある空き地。

正確に言えば協会が所有する敷地で、とにかく広い。

大規模魔術の実験に使われもする場所だ。


転移魔術起動後、敵がこちらへ攻撃を行ってきたとしても民間人には危害が加わらないようにするためだ。

この転移魔法陣が一方通行だと言っても、敵の力はまだ未知数。

念には念を、ということである。


「彼らが今回、君と共に突入するメンバーだ」


そこにはテントがあり、圭と同年代くらいの男女一名ずつがくつろいでいる。

女はお菓子を食べている。

男の方は紙に何か文字を書いている。

聖山が「二人とも、来たよ」と声を掛けると二人が圭の方を向く。


「彼女は雨水紗耶香(あまみず さやか)、雨雲の分家の娘さんだ」

「…」


紗耶香は圭を無言でじっと見つめる。

何か言いたげではあったが、そのまま視線を手元のお菓子に戻した。


「で彼は本堂詩織ほんどう しおり、詩織君は変な方法で魔術を発動するから面白いよ」

「人の趣味を変だ面白いだと言うのは不快だよ」


詩織は聖山を少し睨んで、手に持っていた紙とペンをしまう。

そして圭の方をちらりと見て、改めて聖山に向き直る。


「聖山、これで三人揃った。そろそろ行くんだろう?」

「あぁ、そうだね」

「ちょっ、ちょっと待つっす」


二人の会話に違和感を覚えた泡餓が待ったを掛ける。


「どうしたんだい?」

「あの、三人って…」

「あぁ、君はメンバーじゃないよ泡餓君」

「えぇ!」


忘れてた!という感じで言う聖山。

思いもよらない言葉に、無駄にでかい声を出す泡餓。

てっきり自分も行くんだとばかり思っていた。


「俺は行かないんすか?」

「行かないよ」

「マジっすか?」


てっきり自分も行くんだと思っていた泡餓は面食らった。


「マジっすよ。危ないからね、泡餓君はお休み」

「…実家が関係してます?」


泡餓は声のトーンを下げて聞き返す。

そこに含まれる感情は呆れが見え隠れしている。

実家と何かあったのだろうか。


「どうだろうねー。とりあえず泡餓君は、俺と一緒に待機」

「…はぁ」


聖山は泡餓の質問をはぐらかし、泡餓は呆れのため息を吐く。

答える気はないのだと理解した。


「まぁ気にする必要はないよ。相手のことがよく分かってないんだから、危険を回避できるやったーくらいに思ってればいいさ」

「…まぁ、それもそうっすね」


聖山の適当な感じがする宥めに、もうどうでもいいや、という感じで返す泡餓。




「おい聖山、なんで突入メンバーが若いんだ?」


圭が、疑問に思っていたことを質問する。

実力があればいいというのは納得出来るが、若年層しか居ないのは変だ。

普通に考えて、ベテランの方が実力がある。

もはや新人の方が実力が高いのだろうか。


「空いてる人が居なくてね、無理やりひねり出したらこうなったた。まぁ実力はそれなりにあるから大丈夫」


こほんっ、と咳払いをし、声のトーンを下げ真剣に話し始める。


「三人とも、第一優先事項は無事に帰還することだ。帰還方法は、圭君が転移魔術を使う」


皇居に残っていた魔法陣を手本に圭が徹夜で描いた、転移魔術の出口がある。

帰るときは圭が魔法陣を編んで、そこに転移する。

既に動作確認は済んでいる。


「相手は格上だからね、絶対に油断はしないように。さて、そろそろ準備をしようか」


紗耶香と詩織は立ち上がり、それぞれの荷物を手に取る。

圭は徹夜で描いてきた出口用魔法陣を広げる。

聖山は後方にあるいくつかの荷物から、一メートル四方の魔法陣が描かれた紙を、圭の魔法陣の隣に広げる。

これが今回の敵地への入口だ。

泡餓は留守番で、簡易テントの前に座っている。


三人の準備が終わり魔法陣の上に乗る。

紗耶香と詩織は緊張の面持ちで、圭は普段通りの表情で。


「じゃあ三人とも、絶対に生きて帰ってくるんだよ」

「起動するぞ」


聖山は転移する三人を、心配そうに見送った。

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