幹部の悩み事
一人称なのか三人称なのか分からなくなりました
圭、泡餓が報告をして部屋を出て行ったあと。
「困ったなぁ…」
聖山洋一は悩んでいた。
理由は報告の内容だ。
聖山は圭の実力について、書面で確認している。
滅ぼされた空間一族の生き残り、
若くしてトップクラスの空間属性の使い手、
いくつもの犯罪組織を潰してきた実績。
そんな彼でも使えない転移の魔術。
それを使える相手など、今更数人を集めたところで勝てるとは到底思えない。
はっきり言って、無駄死にで終わるだろう。
敵の情報も引き出せない。
転移などというふざけた魔術を扱えるのだ、空間属性の魔術に精通していることくらいすぐに分かる。
隠密に特化した物を送っても、相手が魔法陣に注意していれば、転移した瞬間に始末されかねない。
そんな危険な相手がいるかもしれない場所に、将来有望な若手を送り込まねばならない。
そんなこと、出来ればしたくない。
ただ、聖山は頭では理解している。
それほど危険だからこそ、出来るだけ早く人を送り込み、情報を引き出さなければならない。
でもやっぱり、有望な若手が無駄死にするかもしれないのは我慢出来ない。
「何考えているんだろなぁ…」
もし聖山が自分の考えにだけ従うなら、意地でも幹部以上の実力者を無理やり引っ張って、若手には安全に待ってもらっていた。
ただ、聖山には上から指示のようなものを受けていた。
『天皇の護衛の件、もし転移の魔術が使われるようならば、空間圭を送り込め』
魔術師協会の上下関係は、幹部が十数人、その上の最高幹部が四人、そして世界中の魔術師協会を束ねる会長が三人存在している
聖山は幹部で、最高幹部のある一人から上記の指示を受けた
あの人は何を考えているんだろう、そう思った。
まさか、同じ属性の魔術師相手ならば負けずに帰れる、などと考えているのではないだろうか。
そんなことができるのは貴方だけだ。
ただ最高幹部級からの指示をガン無視するのは、自分の立場が危ぶまれる。
だからせめて、実力者を数人混ぜて送り込むことにした。
敵がこちらをガン待ちしていなければ、帰還はできるような編成にする。
こうすることで、空間圭が無駄死にする可能性が少しでも減るだろう。
自分が行くことが出来ればいいのだが、創造者とかいうふざけたやつがいつ動き出すかわからない。
自分は一応協会の幹部、何か起こったら現場の指揮を執らないといけない。
もしかすると創造者とかいうのと繋がっていて、実力者を送り戦力が減ったところに仕掛けてくる可能性もある。
「俺に出来るのは、祈ることだけかぁ」
ため息を吐き、資料から送り込む戦力を考える。