泡餓の魔術
更新頻度を上げようかなと
それとともに文章量もたぶん減る
でもサブタイトルが思いつかないので、その2とかになるかも
魔獣騒動辺りで既になってるけど、だいぶ話が離れてその2とか
あと章分けをするかも
「これが、赤炎の魔術か」
「正確には俺個人のっすね」
圭は泡餓の魔術に驚いた。
炎の魔術は火力が高いと、光などで夜はとても目立つ。
金属製のヘリコプターを消し炭にする程の火力であれば遠くから炎が見えるし、この距離でも熱風が来るだろう。
でも泡餓の放った泡炎弾は、火が上がるのではないし、熱風も来なかった。
「あれは、泡か?こんな魔術を、お前凄いな」
「ははっ、そう言ってくれると嬉しいっすね。でも赤炎家じゃ、炎っていうのを重視してるっていうか、俺みたいな搦め手で上げた火力はあんま良く見られないんすよね」
「面倒な家だな」
「そうなんすよ。この方法って結構便利なんすけどね」
泡餓の魔法陣には、炎と泡が含まれている。
もともと泡餓は家族と比べて、赤炎家の炎魔術の火力がうまく使えなかった。
それならと、自分で魔術を作ることにしたのだ。
赤炎家の魔法陣を泡餓は理解することが出来なかった。
でもそれで泡餓が魔術師になれないということは無い。
思考回路は人それぞれなので、こういうことは稀にある。
なので自分で、一から炎魔術を組むことにした。
だが泡餓の魔法陣に対して、赤炎家の魔法陣は長い歴史がある。
当然、威力は遠く及ばない。
だから泡餓は、自分なりに十分な威力にする方法を考えた。
それが、泡を混ぜることだ。
泡は空気が入った球体。
その中には勿論酸素も含まれている。
雨雲令に助言を貰い、炎と水を混ぜるという発想により、中に酸素を詰め込んだ燃える泡が出来上がった。
酸素により上がる火力は、赤炎家の魔術に近付いたのだ。
「あなたは赤炎家の方でしたか」
「あ、はいそうっす」
それまで完全に空気になっていた天皇が、泡餓に話し掛ける。
「やっぱりあなたって、天皇陛下っすよね?握手いいっすか?」
「ええ、良いですよ」
「いやぁ、圭さんと一緒に走って来たときは驚いたっすよー。連れてくるなんて一言も言ってなかったっすからねー」
「あっちで決めたからなぁ。それよりさぁ、運転そろそろ代わって欲しいんだが」
「あっ、そうでしたね」
完全に忘れていた泡餓に、運転を代わるよう言う圭。
運転が泡餓に代わった後も車は走りつづける。
ふと、泡餓が気付いたように圭に聞く。
「今ってどこに向かってるんすか?」
「どこだろうな。どこに向かってるんだ?」
「え、私ですか?」
「ええ!まだ決めてなかったんすか!」
「あっちで思いついたからなぁ」
悪気も無く言う圭に、泡餓は溜め息を吐くしかない。
「じゃあもうどこいきます?」
「私の御用邸はどうですか?」
「御用邸?こっから近いのか?」
「いいえ。ですが、このままどこかへ向かわれますと、政府に追われますよ?現状、あなた方は誘拐犯という組み分けになるでしょうし」
圭はなんのアポも無しに皇居へ侵入し、そのまま天皇を連れてきている。
今頃、警察組織や政府高官は大慌てだろうと、泡餓は焦る。
「えっマジっすか!?何してるんすか圭さん!とんでもないっすよ!」
「うるせえよ」
「いや、マジどうすんすか!逮捕っすよ逮捕!このままだと檻の中で、凶悪犯のいいおもちゃっすよ!」
「じゃあ俺が仕事を続けとくから、お前は遊んで貰ってろ」
「そんな酷すぎっすよ!」
軽口を叩く圭。
泡餓は慌て過ぎて、圭の全く変わらない余裕の態度に気付かない。
「すみません、それなら協会の方へ連絡するのはどうでしょうか?」
「あっ、そうしましょう!それで問題なくなるっす!」
「既にさっきしたぞ」
「…え?マジ?なんで早く言ってくれないんすか、めっちゃ焦っちゃったじゃないっすか」
「一人で楽しそうだったから、いいかなって」
「楽しくないっすよ!」
からかわれて怒る泡餓は、焦ったー、と言いながら運転に集中力を向ける。
「あー、天皇陛下、どこに行けばいいと思います?」
「そうですね、一度御用邸へ向かわれてはいかがでしょう?そこなら、警備は万全ですし、先ほどしていた仕事の続きを行えます」
御用邸とは、天皇が年に数度、公務の休暇を取り避暑避寒のために訪れる別荘だ。
ここにはメディア等も立ち入り禁止なため、皇族の武器を扱う練習場にもなっている。
皇族は常に危険と隣り合わせなのだ。
「仕事の続きはいいがよぉ、警備は万全でもねぇだろ。元々の家があの様じゃねぇか」
あっさり制圧されていた皇居を思い出し、呆れたように言う圭。
「あぁ…。そうでしたね」
「え、じゃあ変えます?」
「もうどこでもいい。天皇が仕事をしねぇと行けねぇって言うならどこでも変わらねえ。一番安全って点で言えぁ協会だろうがな」
「そうっすね。天皇陛下、協会本部でいいっすか?」
「構いませんよ」
「了解っす」
圭の考えに賛成を示した天皇。
泡餓はハンドルを切り、協会方面へ向かう。
ついでにポケットに入ったスマホを取り出し、この仕事の立案者である聖山にその旨をメールで伝える。
『わかった。政府高官にも伝えておく』
その返信に目を通した泡餓は、スマホをポケットにしまい再び運転に集中する。