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第二曲  夜ニ歌エバ 11


《三十四人目。出ました》

 部下の声。

 同時に現場の地図と画像がクジの視覚野に広がった。

 死体の画像。

 服装から男だと判るが、貌は完全に潰されている。

 手足はちぎれ、引きずり出された内臓が辺り一面に散らばっている。

 下手糞なアートのようだ。

《いたぶった痕か》

 『猫』の習性か。それとも。

 快楽殺人の味を覚えたか。

《死体損壊です。傷口に生活反応はありません》

 だとしても、玩具を壊すように、死体を壊して遊んだ可能性は残る。

 残骸のような死体に、理性のかけらは認められない。

 快楽を求めるようになったら、例外なく、殺害のサイクルは速くなる。

《監視カメラに被害者が映っています》

 雨の映像。

 地上三メートルからの視点。ビルに設置されたカメラだろう。

 男が女に絡んでいる。

 斜め上からの角度では、どちらの貌もまともに捉えていない。

 女の方はかなり若そうだ。ぎりぎりの長さの黒いタイトスカート。白い大腿。

 身体のラインに張りがある。

 未成年かもしれない。

 女が男から離れようとし、頬を叩かれる。

 サイテーな野郎だ。

 街路樹が揺れた。

 男が女を押しつけたらしい。

 この時点でカメラから外れた。この角度では枝しか映らない。

 右下のタイムレコードが時を刻む。

 次の瞬間、カメラが赤く染まった。

 大量の血液がぶちまけられたのだ。

 赤く濡れた画面の中で、男の手足が飛ぶ。

 肉片が散り、臓器が路面に叩きつけられて潰れる。

 映像は無音だが、びちゃびちゃと音が聴こえるような気がした。

 『加害者』の姿は映っていない。

 カメラの外にいるのだろう。

 あるいは、映らない魔物か。

 動きが途絶えた。

《映像はここまでです。この30分後、店から出てきた客が死体を発見。通報に至っています》

《絡まれていた女の行方は?》

《不明です。現場に至るまでの映像は周辺カメラに映っていますが、立ち去った姿は捉えられていません。現在行方を追っています》

《公開手配に切り換えろ》

《魔物として、ですか》

《疑いあり、にしろ。その方が、反応がいい》

 自分こそが真実を知っている――という気になって、ネタを挙げてくる。

《女の画像はあるか》

《お待ちください》

 周辺カメラの幾つかがスキャンされ、状態の良い画像がピックアップされた。

 横顔と右斜め上からの画像。

 若いと思っていたが、どうやらその通りだったらしい。

 十五、六の少女の貌だった。

 鼻が小さく、眼が大きい。

 美人ではないが、充分に可愛いと言える。

 髪は金。あるいは黄色か。

 印象に残りやすい。

《いいだろう。これを使え》

《了解――》

 交信オフに移る気配。

《待て。ひとつだけ徹底させろ》

 オンラインを確認。

《なかすなよ》



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