自ラノ手ガ血デ濡レヨウトモ 中編
第五夜 罪裁血闘
月欠けし夜
闇夜に浮かぶ鬼と蝶の気は
周りの獣を恐れさせ
その気の正体を持つ者達は
お互いの明確な意思を持ち
殺意の血戦を行う。
その血戦より一時前(2時間前)から
この話を始めるとしよう。
レインの話だと
奴ら12神の1人がどうやら近くにいるらしく
俺はその1人を目指し
向かうことにした。
「そういえば12神ってのは俺の前世の
アルカードとはどういう関係なんだ?」
決して仲が良いとは思っていないが
それなりに勢力関係を知っておけば
後々の戦いにも
勝機が見える可能性があると思って聞いたのだが
「お主とアルカードの力が一緒だと思っているならそれはお門違いもいいとこじゃ。」
何故か知らんが貶された。
俺は別にアルカードと12神の強さの差を
言葉では聞いた訳ではないのだが
「まぁ、12神と彼奴は勿論敵同士
じゃったよ。じゃが特別仲が悪い
って訳でも無くてのぅ」
意外な言葉が返ってきて
少し表情に出てきて
疑問を返した
「そうなのか?俺はてっきり
12神は総隊長的な感じで皆の見本
だから罪を犯したアルカードとは
仲が悪いのかと、」
「実際そういう奴もいたのじゃが
基本的に12神は一人一人自分の
正義を持っているからのう。
考えが違うのじゃよ。」
なるほど、エデンスにも色々な
別勢力があるんだな。
その答えに補足をするように
折鶴は説明を足した。
「そもそも彼ら12神は種族が違うのですよ。
ちなみに勿論の事なのですが私達は
吸血鬼、今向かっている12神の一人は
妖精王なのですよ。」
なるほど。神というよりは種族の王
が基本的なのか。
「しかし牙様。もうそろそろ気を引き締めて下さい。奴らにもう警戒されているようです。」
12神の一人がいる場所は折鶴の社があった
岩手県からかなり近い青森県なのだが
どうやら徒歩で2時間もあれば到着するらしい。普通に行こうと思えば自動車で
2時間だが吸血鬼の状態なら
そちらの方が早い。
「だがまだ目的地から20kmはあるぜ。
気を感じるのは俺もだが
それにしても広すぎねぇか?」
元々奴らのテリトリーはかなり狭いらしく
ここまで警戒態勢を張るのは
明らかにこちらを警戒しているということ
になる。
「そんな無駄な考察なんぞ要らんぞお前様よ。もう来とるわい。」
そう言われ目の前を見ると
かなり遠くに大勢の羽音が聞こえた。
「にしても確かに不自然じゃのう。
あやつはそこまで仲は悪くなかったのじゃが。何かあったかのう?」
この独り言を聴き
一つの考察が折鶴の中で生まれたらしく
それを説明しようとしたのだが
「まさかだとは思いますが
妖精おぅ...」
その会話を断ち切るように
羽音の正体は真空波をこちらに撃ちながら
攻撃を繰り出してきた。
「この話は後です!
とりあえず奴らを殲滅するのが先でしょう。」
真空波を影で打ち消し
辺りを見回した。
この量の妖精を見ると
先兵だろう。
だが量としては千匹は越している。
「仕方あるまい。一気に片付ける!」
そう言いながら俺は
両手の平をお互いの手のひらにくっ付けその後
両手の平を地面へ叩き付けた。
その瞬間影が円に広がり
そこから無数の針が
妖精の身体を貫いた。
「悪いな。お前らに恨みもねぇが
俺は過去を知りたいんだ。」
そしてその横では
レインが何かの術式を
書きながら
「地獄に燃えし炎王の獄炎よ。
我が血を代償とし、現世へその憎悪と
怨嗟の炎を顕現したまえ。
炎王の爆炎」
その術式から出てきた炎は
妖精を飲み込み粉すらも残らない形へと変えた。
「儂等はお主らに用などない。
その奥の奴にようがあるのじゃ。
死にたくなければ即刻立ち去れ!」
しかしこんな縅で逃げるような兵ではなく
応戦する結果となった。
そして折鶴も
「闇の影に飲まれし哀れな命よ、救いと
いう名の死に身を任せよ。
黒影飲渇」
折鶴から黒い翼が大きく広がったと同時に
折鶴の目が光りそれに引き込まれて
しまったかのように
黒い翼へと吸い込まれていった。
「私達はあなた方に用事などございません
なのです退かないというのであれば
死んでいただきます。」
やはり数では妖精の方が多いが
勢力ではこちらの方が有利らしい。
そしてその現状を見兼ねたか
やっと本丸である妖精王が
顕現した。
妖精王が来ただけでも勢力関係がひっくり
返ってしまいそうな程奴からは
気迫を纏っていた
「我は妖精王セイラース!
貴様らがあのアルカードの末裔とその眷属!
我が主のため、我が正義のため、ここで散るがいい!」
そう言って右手にある杖を
天に掲げ
「天戒聖救邪滅、輪廻の敵を
滅する我が意志に応えよ!
フル・シャイニング!」
呪文を唱えると
天に掲げた杖の先から
光の線が天を貫きそこから
無数の光穿の矢が降り注いだ。
「ばかな!これは奴ら、天使の専門
の術式の筈じゃ!
それに何故奴から天使の羽が生えておるのじゃ!?」
そうレインが焦って言った通りに
セイラースの背中からは翼が生えていた。
それは蝶のような妖精の羽が二つ、そして
鳥のような天使の羽が二つ
間違いなく奴は天使になのだろう。
「やはり、牙様。セイラースは
恐らく彼らエデンスに戒律を付けられていると推測できます。」
「戒律ってのは何かは後で説明してもらうが、それをどうにかすればあいつは元に戻るんだな!」
しかしその疑問の答えの前に
光穿の矢がこちらへ届いた。
「仕方ありません!こうなったら
私達が牙様を全力で矢を防ぎます!
そのまま右手にアルカード様の力を
全開放してセイラースを殴ってください!
そうすれば奴は天使から解放される筈です! 」
かなり無茶な作戦だが
現状この状況でそんなことを言ってられない。
「分かった!二人とも防御は任せたぞ!」
牙は自分が出せる速度を限界まで出して
そのまま真っ直ぐに走っていった。
「貴様!そのような策の無い動きで我が意志に勝るなど!身の程を知れ!」
そう言いながらセイラースは
無数の光の光線をこちらへと撃ってきた。
「分かっておるな!お主と手を組むのは
本当に嫌じゃが彼奴を護るためにやることじゃ!」
「私だってテメェとなんか組みたくないけれど牙様の為に仕方なく組んでやるよ!」
そう言い争いながら
二人は攻守を分担しながら
「我らが敵の放つ光の矢を
我らの王を護るためにその力を
解放せよ。
夜ノ帳!」
折鶴が唱えると牙の身体には影が纏われていた。
そして向かってくる矢や光線を
飲み込んでいった。
「儂もこの力を使うのは久しぶりじゃのう。
我の肉体を契約の糧とし我が血に眠る
悪鬼羅刹の力を我が肉体へとその力を
顕現せよ!
鬼血!」
その瞬間にレインの周りから血のような
色の煙が少し吹き出てきた。
目は緋色に光り
身体からは血管が浮き出てきた。
何より額からは鬼の角が出ていた。
「これをすると少し歯止めが効かなくなるからのう。」
向かってくる妖精の援軍を
1kmも離れているレインは一歩で
その妖精の前に辿り着き
そこに振りかぶった拳は
風圧を纏い妖精を塵にした。
「折鶴!レイン!恩に着る!」
そして二人の活躍ですぐ目の前に
辿り着いた牙は
右手の力を解放した。
「その気は!
アルカードの臭いだ!貴様ァ!
殺す!殺ス!殺スゥ!」
その殺意の波動を断ち切るように
「ウオォォォォォ!!!」
右手をセイラースの胸へと
その拳を打ち込んだ
その瞬間セイラースの体が光り輝いて
天使の羽が消え去った。
「とりあえずこれで!」
打ち込まれたセイラースは消え去って
いる時に苦しんでいたが
完全に消えるとそれも無くなったらしい。
意識が覚醒したのは10分後の事になる。
「俺は何をしているんだ?
この気は、アルカード!何でこの世界に!?」
そう言いながらこちらを見て
驚いたらしく
しかしすぐに理解したようで
「お前からあいつの臭いがする。
成程な
お前はアイツの末裔か。」
そしてその会話を交わした時にはもう
光の矢も止まり
妖精も居なくなっていた
「俺はエデンスに操られていたのか?
記憶が曖昧な所を見るとそうだと思うが。」
そして気付いた時には後ろには
もう二人がいた。
そして折鶴は怒り狂った様な
気を出していたが態度には
出さず無慈悲に
「堕ちたものだな。セイラース。
貴様も王ならば分かるだろう。
我らが王にエデンスなどという力に
頼り抹殺しようとした罪。
貴様の死で償ってもらうぞ。」
そう言いながら右手を出し
それを認めるかのようにセイラースも目を閉じた。
その間に俺は立った。
そして
「セイラースは単純に操られていただけだ。
ケジメは俺とセイラースの一騎打ちで決める。それでどうだ。」
そう、一方的に殺すのは俺は気が進まないのだ。
「まぁいいのではないかのぅ。
お前もそれでよいな?」
「そもそも俺は死にゆく運命だったんだ。断る理由もない。
受けようアルカードの末裔よ。」
何故牙はこの行動を行ったかは
彼に伝えるにはまだ
早い。
そして二人の王は最後の決闘場へと向かった。