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ギルティ・ヴァンパイア   作者: まっつん
第一章 Guilty vanpaia
1/15

過去ノ罪ニ囚ワレタ闘イノ物語 前編

プロローグ 過去の過ち


その昔、世界は平凡に満ち溢れていた。


国は絶えては栄え、人は散っては咲き


輪廻の輪に乗り、世界は廻っていた。


勿論輪廻には裏も存在する。


世界の理に保つ者が表と表すのならば

世界の理を崩す者が裏。


例えるならば

天国が表、地獄が裏だと思ってもらって構わない。



裏の王と表の王が釣り合うからこそ

輪廻は保たれる。


表と裏の均衡。表裏一体でなくてはいけないのだ。


だが

その均衡はある1人の怪物によって崩れる。


不死者が世界を崩した。

天地を裂き、大地は枯れ、

表裏は全てを失い「0」となった。


しかし輪廻はその程度では途切れない。


滅びた世界はいつか終わる。


不死者は滅び輪廻は元の形へと戻る。


しかし彼は不死者。


輪廻の輪に乗らぬ者。


彼は生と死を永遠に繰り返す。



第一章 Guilty vanpaia


第壱夜 死屍開演(ししかいえん)


「お前、この人数に勝てると思っているのかよ。

餓鬼如きがちょっと調子こいて見栄張ってんならやめて方が身のためだぜ。

今なら金さえ渡せばやめてやっても...」


「うるせぇなぁ。テメェが吹っ掛けてきた喧嘩だろぉが。御託とか遺言とかどーでもいいからよぉさっさとしろや。」


この状況を一言で説明するなら

多勢に無勢と例えるべきだろう。


もちろん普通はという話で

普通でなければその言葉は

弱者虐めに変わる。


「後悔してもしきれない位にボコボコにしてやるよ!行くぞテメェらぁ!」


20歳は超えた男が10人位の団体が

一気に18歳の大学生に畳み掛けてきた。


しかし彼らは2分後誰1人立ち上がる事が出来なかった。


2分前に時は遡る。


「オラァ!

テメェら全員雑魚ばっかかよ!」


その大学生は自動販売機をコートを引きちぎりながら思いっ切りぶん投げた。


それに押し出された男達5人は倒れ

残りの5人も道路標識をへし折って振り回して10メートルは飛んでいった。


「結局少しの運動程度にしかならなかったな。ん?警察か。仕方ない。逃げるか!」


この学生の名は夜帳(やとばり) (きば)

学校内でとてつもなく喧嘩が強く

短気で有名な男だ。


この男は登校中に大人に絡まれて結局

喜んで

「おい。俺は喧嘩が大っ嫌いなんだよ!

誤解を招くような言い方するな!」


訂正。嫌々彼らを正当防衛で倒せる程の

相当な強さだ。


ちなみに今彼を説明しているのは

「どうも、はじめまして。私は

水南雲(みなくも) 世奈(よな)という者でございます。」


「お前、誰に何を説明しているんだよ。

また独り言かよ。」

揶揄うように彼女に軽口を叩く。


「またって何よ!別にいいじゃない!

吟遊詩人みたいな事をしたって。」

そう、このよく分からん変人が

俺と同い年で幼なじみのヨナだ。


ちなみに今いるのは大学の筈だがサボって家にいた所をヨナに捕まったということだ。


「あんた、また喧嘩したんでしょ。

傷はないの?大丈夫?」

そう、昔からヨナは本当の姉のように

心配してくれるやつだ。


「別に何ともねぇよ。あんな奴らなんかに

傷付けられる程弱くねぇし。」


「まぁ怪我がないなら良かった。」

全身を見て安心したようで

そのまま立ち去ろうとした時に


「そういえば今日学校行かないの?」


正直今日はもう行く気がない。

体は別に大丈夫なのだが学校に行って

補導されるのもめんどくさいし


「今日は行かねぇよ。それよりお前こそ大丈夫なのか?もう2時だぞ。授業始まってんだろ。」


うちの学校は12時半から1時50分まで校外に出ていいという規則になっていて

それを使って来たのだろうが


「ホントじゃん!教えてよぉ!」


走って家を出ていった後ろの背を見送って

今日は何するか悩んでいる時に、


カレンダーを見た時に思い出した。

「10月31日。今日はハロウィンか。

そういえば近所のガキどもが菓子が欲しいだの何だのって来るんだったな。」


そういう事で買い物に行くことに決めた


近所のスーパーにはかなり頻繁に行っているから結構顔を覚えられていて


「夜帳くん聞いたよ!今日また喧嘩したんでしょ!学校行ってないし。」


「お菓子を買ってるってことは子供たちにあげるための?こういう所は優しいんだけどねぇー。」


こんな感じで周りのオバチャントークの

話のネタにされていたりしている

というかその話どっから知ったんだよ。


そして買い物を終え帰ってきた時に

1通の手紙が届いていることに気づいた。


「なんだこれ?届け先も書いてないし

赤黒いな。この封筒。」


そうその手紙は業者の勧誘とかにしては

変だった


とりあえず家に帰ってその封筒を開けて

手紙を読んでみることにした


「夜帳 牙様

貴方は自分の力に疑問を抱いていますか?

人間離れした力。人間離れした治癒力。

そして夜に来る喉の乾き。

私はそれについて知っています。もし知りたいのならば今宵の夜12時に学校の屋上へ。」


最初は何かの悪戯だと思っていたがここまで

自分の悩みを的確に

指摘されているとやはり何かあると思った。


「駆け引きに乗るも一興ってな。まぁ行ってみるか。」


夜になってヨナと合流して子供たち

に色々なパフォーマンスをしながら

お菓子を配って

まぁまぁ楽しい時間を過ごして


夜の12時に学校に忍び込み屋上に

来てみたが、


言葉が出なかった。


そこで見た光景はいつも見ている

自分の知っている屋上では無かった。


撒き散らされた血、食い散らかされたとも言える血肉、そしてその正体を教えるように

「人の顔」


「おいおいおい。リァルハロウィンじゃねぇか。なんだよこれ!」

軽口を叩いてはいるが

決して表情は笑っていない。

口も体も震えている。


そして後ろに人の気配があると気づいた時には

もう遅かった。


自分の視界は床に固定されている。

やけに胸が熱い。そしてこの脱力感も

不思議だ。

胸は熱いはずなのにそれ以外の体は

寒い。

そして周りの血に混じって自分の周りにも

血が流れていることに気づいた。


「ぁあ、なるほどなぁ俺の血かこれ、」


胸が熱いと感じるのは胸を貫かれて

その痛みを脳が熱いと認識しているのだろう

そして視界が暗くなっていくと同時に

自分の脳裏には色々な景色が流れた


子供たちの顔


クラスの風景やクラスメイト


教師やもう死んだ親の顔


そしてヨナ


これがいわゆる走馬灯というものだろう

しかし現実はそんなことを考える間に

「夜帳 牙」という人間の人生は

終わりを告げた。


第弐夜 血牙覚醒(けつがかくせい)


俺は昔の記憶が無い。

正確に言うと親といた時の記憶が無い。

年齢で言うと5歳の時だ。

周りからは事故で亡くなって俺もその事故に

巻き込まれてしまい記憶喪失ということに

なっている。


しかし、中学に入るとふと奇妙な話が

舞い込んできた。


吸血鬼を見た


そんなくだらない情報なんかを

信じるはずもないが何を気になったのか

その情報を調べてみた。


そして分かったのは俺が事故にあったあの日、同時に吸血鬼を見たという情報が

あった。只の偶然だと思いたいが

俺はそこからもっと情報を知りたくなった。

しかしこれ以上の進展など無かった。


だが今俺は情報の全てを分かってしまった。

あの日起きたことは事故なんかではない。


「俺がやったんだ。」

その姿は正しく吸血鬼。

犬歯が他の歯よりも飛び出ていて

目は赤く緋色に

そして何よりも傷が治ってしまっている。


あの時の事件の親の死因は事故死だが

正確には裂傷による死と、刺し傷による

失血死だそうだ。


それも全て今の状況で納得した。

そして後ろから声が聞こえた。


「どうじゃこちらの世界は。

儂も苦労したぞ。お前様を見つけるのは。」


その言葉の主は

もしこの状況ではなく普通に会っていれば

見蕩れてしまったであろう

美貌だった。

金髪だが顔は外国人寄りではなく

身長も180cmは超えているだろう。


だが今はこの状況を飲み込むのに精一杯だった。


「お前は誰なんだ。俺の正体を知っているような口ぶりだが。」


おそらくあの封筒の差出人はこいつだろう。

なので確認のためにも一応聞いた。


「儂の名はブラットアイ・レインリーク・メルキデスじゃ。レインと呼んでくれて構わん。よろしくのぉ我が同胞よ」


そう名乗った彼女に気になったことを

俺はぶつけた。


「俺はもう人間ではなく吸血鬼なんだよな」


最初はやはりこの確認だ。恐らくというか

正直に言うと夢であってほしいという

現実逃避の疑問なのだが


「そうじゃな。お主は前に1度吸血鬼になっておるがあの時はまだ未発達だったしのう。」


やはりあの事件の犯人は俺だったのか。

そして悲しいことに現実だ。


「それで俺を吸血鬼にして何か意味でもあったのか?それとも興味本位でやったのか?」


ここがいちばん聞きたかった。正直この一端が興味本位などというくだらない事で

やられたのだったらたまったもんじゃない。


「お主は前世の記憶を失っているようじゃのう。」


その言葉は殺意がこもっていた。

この先でもし言葉を間違えたなら

不味いだろう。


「そうだな。俺の前世が何したのかは知らねぇが間違いなく吸血鬼だろ。」


「そうじゃ。お主は間違いなく吸血鬼じゃ。しかしそれと同時に災厄のじゃ。」


は?


突然とても強い風が吹いてきた。


そしてその言葉を理解する前に自分の右腕がない事に気がついた。

「ぐぅあっ、ぁ、何をしているんだよ、」

しかしその痛みを脳が感じる前にもう右腕は生えてきていた。


「やはりお主はあやつの子孫か。その再生能力が

物語っているのう。」


「何を言っているんだ。お前の言っていることば全く理解できない。それに何故関係の無い人間を殺した!それも説明してもらいたい!」

そう全く理解できないのだ。俺が何をしたのかも。そして奴の目的も。

この時にはもう右腕は生えきっていた。

正直何故人を殺したのかも分からなかったのだ。

しかしその疑問はこのあとすぐに分かった。


「悪かったのう。今のは只の確認じゃ。儂はお主の味方だ。そしてこれからお主は

奴らに狙われる人生を送るしかない。

あと奴らは只の食料じゃ。ただ喰うためだけに殺したまでよ。」


「何を言っているんだよ!奴らってなんだ!なんで俺が狙われるんだよ!それにお前は人間を殺したんだ!そんな奴と仲間だと思われたくねぇよ!」


そう言って思いっ切り踏み出して

レインに向かって何度も殴ったが全て普通に避けられ

そのまま説明を続けた。


「確かに元々は人間だったお主にはまだこの状況を飲み込むのに時間がかかるだろうがまずは説明をしなくてはいけないのぅ。」


いったい何を説明するのかよく分からんがあの攻撃を普通に避けられるということは

俺よりも相当強いと自覚し、

素直に聞くことにした。


「お主は前世にある大罪を犯した

お主にその記憶が無くともその吸血鬼化が

証拠じゃ。そのせいで奴ら、

輪廻の(エデンス)がお主を捕らえに来る

のじゃ。」


「何で俺が捕えられなきゃいけねぇんだよ!俺の前世の奴が大罪を犯したか知らんが

それが何で俺に課せられるんだよ!

だいたい...!」

そう言って胸ぐらを掴もうとした時に

後ろから謎の気配を感じた。

とても嫌な予感がするような。


「しまった!もう気付きおったか!

この場所じゃあ逃げ切るのは不可能じゃ!

応戦するしかない!」

そう言った瞬間に無かった筈の大きな黒い翼が開かれた。


「気づいたって何が来るんだよ!今後ろに感じた気配の正体か!」


こんな短時間でここまでの事を理解するのは不可能だ。


そんなことを読み取ったのかレインは


「この戦闘が終わったら全部説明する!

だから絶対に奴らに捕まってはいけないぞ!できる限りは儂が守るがそこから先は自分でどうにかしてくれ!」


ここまで焦っているということは今から来る奴らは相当やばいと思った。


そして大きな衝撃波が体を通過したと同時に目の前には白い羽を纏いながら

とても長い槍を持った女性が

鎧で武装していた。


その姿は正しく天使。しかしそこから

溢れ出て来るのは救いでも慈悲でもなく

只の殺意と狂気だった。


「私は輪廻の輪、第64翼大隊長ネルセンだ

貴様はあの神々しい輪廻に傷をつけた

輪廻の罪の大罪者!ここで散るがいい!」


そういった瞬間に右手に持った槍をこちらに投げてきた。


そして気づくよりも早くレインが

その槍を掴みそれを投げ返した。


「いきなりチェックメイトはないじゃろ。といっても駒一機は最強のクイーンじゃけどな。」


そう言うとレインの周りに黒い人間の形をした影の眷属が現れた

それと同時にあの天使の周りにも部下のような奴らたちが沢山現れた。


「「総員突撃!!奴らを全員殲滅せよ!」」


どちらの兵力も互角だが弱点である俺がいる

ならば恐らくこちらの方が劣勢だろう。


そう思っている時にレインがこっちに走ってきて荒らげた声で話しかけてきた。


「この状況から脱するにはお主の中のアルカードの力が不可欠じゃ!前世の記憶を一時的に取り戻し

その力を戻すしかない!」


「アルカードって奴が俺の前世の奴なんだな!というかそんなこと言ったってどうすれば出来るんだ!死ぬよりはマシだからやるけど!」


元々護られるのは嫌だったし

戦える方法があるのならば利用したいと思ってた。


だが


「しかしこれをやったらもう二度と人間には戻れなくなる。

ここでお主を人間に戻すことは出来る。

戦うか、逃げるか、二つに一つじゃ。

どうする?」


何度も思っているがやはり考えは変わらなかった。


「ここで逃げるのは俺の心情に反するからな!戦ってやるよ!もう吸血鬼にでもなんでもなってやろうじゃねぇか!」


そう言った瞬間に胸に手をあてられ

衝撃をくらった。


そして頭に初めてあった筈なのに聞いたことのあるような声が聞こえた。


「久しぶりのシャバの空気だ。お前のようなひよっこの憑代だが少し借りるぜ。」


そしてそこで俺の意識は途切れた。



そしてその一瞬の隙を突かれて


「ブラットアイ!貴様はあの忌まわしきアルカードの眷属だったなぁ!安心しろ!

アルカードと同じ道を辿らせてやる!」


槍は肩を通過した


「ぐっ!

なかなかに大きな口を叩くようになったのうひよっこ。だが儂の眷属はお主の部下よりは強いぞ。」


1人ではどうしようも無くブラフでかましたつもりだったが


「私の部下は貴様ら下賎な吸血鬼なんぞにはやられない!死に絶えろ!」


やはり無駄だったようだ。

レインの影の眷属は全てやられたようだ。

本調子が出ないこの状況では

大隊長クラスを止めるのは不可能らしい。

そしてその隙を逃さず

レインは

止めを刺される


瞬間槍は崩れ落ちた。


「久しぶりだなぁ。エデンスゥ!

俺のいない世界はとても退屈だっただろぉ!」


奴がその槍を崩したのだ


夜帳に乗り移った災厄の吸血鬼。


「アルカードぉ!貴様ぁは死すべき存在ぃ!死を!制裁を!断罪をぉぉ!!」


その姿を見た瞬間にネルセンは

アルカードに光を超えた速さで飛び込んで光で造った槍を刺す


前に首が飛んでいた。


「もう少し天使だったんなら上品な言葉を使えよ。まぁ上がアレだからな仕方ないか。」


圧倒的な力の差にほかの天使たちが逃げていくと同時にアルカードの意識が遠のいていった。

「まだこのガキの体じゃ10秒くらいしか持たねぇがそんなに要らなかったな。

じゃあレイン俺の子孫を頼むぞ。」


「もちろんそのつもりじゃ。安心せい

アルカード。」


そして完全に消滅し夜帳は倒れた。


俺はここから先の記憶まで飛んでいた。

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