放課後の付き合い
私はあの日から、放課後に恭平さんに勉強を教えた
期間としては1週間ぐらい、外も秋色に染まって行く、そんな中で教えてた
「ねぇ人1倍ってあるんだけどさ、なんかおかしくない?」
「あぁそれね、普通の人を1とした時に倍になるって考えればわかる?」
「あっ、なるほど、ありがとう」
自分としては復習する時の感覚だ、あれやこれやと教えてるうちに私はふと思った、こんなにしゃべってるなんて珍しいかも、教えてる時に思わず笑ってしまった
「人に勉強教えるのも悪くないね」
「今まで教えたことなかったの?」
「まぁ・・・うん、私ってさ友達いないから」
「あ、確かに、じゃあ俺が初めての友達?」
私が頷くと恭平は嬉しそうに笑った、私も見てて楽しくなってくる、
ここはこうとか、それは違うよとかただ教えるだけ、私はそう思っていた
でも恭平は雑談とか交えながらやってくれてるおかげでなんか楽しい
勉強では私の方が上手なのに、彼にこの場をリードされている、普段閉じこもっている私はこうでもされないと自分から動けないだろうからありがたいことだ
室内に響き渡るシャーペンの音、風で窓が揺れる音、微かな話し声、この部屋にはいくつもの音がある
普段意識しないだけで周りにはあるんだ、いつも本を読み勉強をしていたからその音は人1倍聞いている
今はそれらを感じることはなく、彼のノートと顔を見て話しをしてる
「そういえばさ、明日の放課後は暇?」
「うん、ってか追試は明日だっけ?」
「そうだよ、追試終わったら図書室で待ち合わせしない?」
私はOKした、追試終わっても彼は次のテストに向けて勉強するのだろうか
恭平の性格的にそうは思えない、1人では無理かもしれないが2人なら続くかもしれないとかそんな理由かもしれない、私はそう思った、また勉強を教えることを理由に話せることを何故か楽しみにしていた
「じゃあ、また明日ね」
そう言って、彼と別れて次の日、教室では相変わらずほとんど話さない
おはようくらいしか言わない、私の平穏は保たれたままだ
私はそれでよかった、でも恭平はなんだか色んな人と楽しそうに話している
何を話してるのか気になるというより、私も少し混ざってみたいかなと少しだけ思った
放課後になり、私は席を立ち教室を出る、その時にちらっと恭平の方を見たら目が合った
特に言葉を交わすことはなく「さて、追試頑張るか」そんな独り言が聞こえてきた
私は心の中で頑張れと言うと、図書室へと向かった、彼が終わるまでここで本を読む
本を読み始めて1時間くらい経った、ごめん、お待たせと私の横に恭平が歩いてきた
「じゃあ行こうか」
「えっ?勉強するんじゃないの?」
「ははっ、違うよ、追試が終わったし打ち上げだ、篠田に世話になったし、ご飯でも奢ろうかなと思って」
なんか恭平らしいと思い、私は思わず笑ってしまった、そして恭平の後について行く
そしてやって来たのはファミレス、家族以外で行くのは初めてだ、店へ入ると席へ案内された
自分と同じ制服を着てる人がちらほら見える、どうやら学校帰りに寄るのは普通のようだ
「好きなもの選びな」
私は素直にありがとうと言って注文をした
「恭平はよく放課後に来るの?」
「たまにだよ、友達と来てそのたびに騒いでる」
料理もきて、しばらく話をしていた、ついつい時間を忘れて話しこみそうになる、そんな時に意外な出来事とはおこるものだ
「おっ恭平、女の子と2人で何やってるんだよ」
「飯食ってるだけだよ」
なんとなく聞いたことある声に振り向くと名前は分からないが見たことある男女がたってた
男の方は背が高くすらりと宮永君は笑顔が特徴的だった
このカップルどこかで見たような気がする
「あ、紹介するね、同じクラスの篠田」
「俺は宮永健、よろしくな」
そう言って、隣に座った、向かいに座った人はそれ以上に衝撃的な人だった
見た目はすごく可愛いなと思った、女の子って感じの印象だ
髪は肩にかかるくらいの長さで頭には金色のクロスヘアピンをしている
「なーにゃです」
そう声が聞こえた瞬間、場が凍った気がした、でもその作った声は可愛くて思わず黙ってしまった
「・・・ちょっとなんで誰も何も言わないのよぉ」
「なーにゃ可愛いよ」
そう言った宮永君がばかっと叩かれるのがおもしろかった
私もこの輪の中に入れるのかな
「三森奈々、奈々ちゃんって呼んでね」
「奈々ちゃん、よろしくね、篠田です」
そう言って手を差し出された、私はその手を掴む、小さくて握りやすい、いつまでも握って痛くなるような手だ
でもこの手をいつも握ってるのは隣の宮永君なんだよね、少し羨ましい
「あのさ、そろそろ放してくれないかな?」
あ、ごめんといい慌てて手を放す、私の顔は少し熱くなった
その後4人で食事を楽しむ、この3人は昔からの幼馴染で仲が良く、もうすでに出来上がっていて、私が話題に入ってくことは少なかった、相変わらずいつも通りな静かな私でした
「じゃあ俺らそろそろ行くな」
恭平と店を出て2人になる、こっちのが気が楽だ、恭平は伝票を持ち、私の分まで払ってくれた
「ありがとね、楽しかった、ところであの2人って付き合ってるの?」
「いいや、付き合ってないよ、ただ仲が良いだけ、奈々も健には甘かったりすることもある、羨ましいよね」
「恭平ってさ、奈々ちゃんのこと好きなんだね」
そう言うと恭平は顔を赤くしてうつむいた、今話したことはもちろん内緒だ
付き合ってないってことは、つまり
「まだ狙ってるんだね、がんばれ」
そう言って、わたしたちは帰り道を歩いた
なんかいつもと違って、私の心が晴れ渡った帰り道だった