第0章 手渡された傘
4月5日、朝
今日は高校の入学式だ、少し前に中学を卒業して、少しの日々が過ぎて
桜が舞っている、相変わらず綺麗だなと歩きながら考えていた
空を見上げれば綺麗な青空が広がっている、清々しいスタートを切れそうな気がした
学校に着いて、クラスを確認して、教室へと行く、1年1組、それが私のクラスだ、今日から1年間ここで過ごすことになる、何組だろうが、クラスに誰がいようかあんまり気にしてなかった
私は友達が少ないから、休み時間は本を読み、昼休みは図書室にいる、絵に書いたような文学少女だ、私は昨日見たテレビの話とか人の噂話とかその辺が疎くてついていけないため、気がついたら周りには友達というのがいなかった、話しが苦手で孤立してしまった、おかげでいじめられるわけでもなく、ただそこにいるだけ、必要最低限な会話とか、話しかけられても返事する程度だ
だから友達って呼べる人はいなかった、欲しいかと言われれば多分欲しいと答える、たまに楽しそうな部分を見ると羨ましくなるときくらいはあるから
やがて入学式も終わり、教室で席についてると先生がドアを開けて入ってきた
「今日からお前らの担任だ、よろしく頼むな、早速教科書とか配るな」
そう言って教科書とプリントが配布された、相変わらず初日は多い、先生の話しを聞いて、放課後となった、早速クラスが騒がしくなる、中学から仲のいい人たちで集まって話しをしてるのだろうと思う、私は用がないので帰ろうとして、鞄を持って立ち上がった
そして昇降口へと歩く、何故か、1人は目立つと感じてしまった
みんな友達と帰ってるんだ、誰も話す人なんていない、気がつけば雨が降っていた
私の心が雨ってことではなく、外の天気のことだ
私は靴を履きかえて昇降口で雨を見つめていた、新品の制服を初日から濡らすのは嫌だ、通り雨だろうし待ってればやむかなと思う、こういう時に友達がいれば一緒に傘に入れてもらえるのだろう、その中で1組、気になる人を見つけた、私より少し背が高い人、その隣に元気な感じの女の子が歩いてる、きっと私とは対照的な人だ、見るからに周りから人気がありそうな人だ
あの人に勝てるのはせいぜい学力くらいなものだろうと失礼なことを考えた
そんなこと考えると虚しくなってくる、そしてそのカップルが横を通り過ぎた、その時、男の人と目があった、この人はスポーツ系の人かなって印象がした
きっと彼女になれば応援とか行ったり楽しい日々を過ごせるのだろうか
隣の女の子はそんな感じなのかなとか、そんなことを考えてる自然とため息がこぼれた
目と目が合った、特に何もないが一瞬時が止まったようだった
「もしかして傘ないの?」
そんなことを聞かれるなんて思いもしなかった、私は声が出ずに頷いた
そしたら、傘を手渡してくれた
「これ使いなよ、俺はこいつの傘に入ってくから」
そう言って2人で去って行った、ありがたいことだった
私は傘をさしてその少し後に続いた、少し大きな声を出せば届く距離、なのにありがとうの言葉を届けられなかった
ほんの少しの距離なのに届けられなかった・・・