ティムとの日常
タイトル詐欺かな?
ルイアが誘拐されかけた事件から1ヶ月ほど経った。
もうあと1ヶ月ほど経てば俺たち…というよりルイアの誕生日だ。
俺とウィーテの誕生日も同じ日に祝っている。
事件以来、3日に1回ぐらいはティムがやってきて色々話をしている。
家にいるとルイアがうるさいので森まで行くことが多い。
魔法を使うのを人に見られたくないしな。
ティムに前世の魔法を教えていたが、何故か一定以上の威力を持つ魔法は使えないみたいだ。
だいたい《ランス》系辺りから使えない。
「炎よ穿ち貫く一槍となりて飛べ《ファイアランス》」
シュボッ
炎は出るのだが詠唱中に情けない音を出して消えてしまう。
「むぅ……何故消えるんだと思う?」
「なんでだろうな、皆目見当もつかない」
魔力をある程度扱えるなら普通に出来るはずなんだがなぁ……何故だろう。
この世界の人間に適性が無いのかも知れない。
「今日はここまでにするか……ありがとうな」
「いやいいよ、口止め料だし」
魔法の練習が終わると、この世界の勉強が始まる。
この世界はとてつもなく高い大山岳に囲まれている。
山が無いのは北側にあるヤトシ海のみらしい。
山の内側は北から北西にかけてヤトシ海、西から南東にかけて広がるシルメ大森林があり、その他の部分はひたすら平地が広がっている。
俺たちが住んでいるのはシルメ大森林の中央寄りの端っこにあるメートンという町だ。
ヤトシ海にはタツビトという名の魚人?が、シルメ大森林にはエルフが、大山岳にはシカビトという獣人が、平地にはヒト種が住んでいる。
そして、山の外側には精霊と契約出来ない魔族や魔獣たちが住まう魔境があるらしい。
魔境……いい響きだ……いつか行ってみたいな……
魔境には戦争直後は行けなかったらしいが、魔族との交流が進み、現在では割と行きやすいらしい。
何でもスキューチュアの学園の選択コースには魔境で魔獣を倒して報酬を貰い生活する『開拓者』になるためのコースがあるそうだ。
定期的に訪れる魔獣の大量発生と山の内側への侵攻に対する予防策なんだそうだ。
「その『開拓者』コースでは何をやるんだ?」
「俺は別のコースだったから詳しくは知らないが、戦闘用の魔法と武術、野営の仕方とか魔境の店の相場の勉強とかもあるらしいぞ」
「楽しそう」
ウィーテが言うように、何とも楽しそうなコースだ。
他のコースも一通り教えてもらったが、やはり『開拓者』コースが一番面白そうだった。
学園では『開拓者』コースを選択することにしよう。