表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

1-2

「仕方ないな」


 イーニアスは仔猫を抱き上げた。


「ユアン、お前も来い」


 そう言われ、私とイーニアスは兵舎に向かった。


 すれ違う団員達は、彼が仔猫を抱いている事を不思議そうな目で見ていた。無理もない。あの動物嫌いのイーニアスが、嬉しそうな顔で猫を持っているのだから。


 兵舎の休憩室。隅に動物用の古いケージを置いて、簡易のトイレと寝床を設置。仔猫を中に入れて鍵をかける。


「やけに詳しいな」


「ええ。小さい頃、猫を飼っていたものですから」


「そうか。なら、猫の世話係を頼むぞ」


「私がですか?」


 そう聞いた時には、彼は休憩室を出て行こうとしていた。だが、私が実際に世話する事なんてほとんどなかった。



 仔猫が兵舎にやって来てから五日が経った。


 イーニアスは仔猫を「ナイン」と名付け溺愛し、訓練の時にも側には猫。仕事の時にも猫がくっついて歩いていた。


 動物が嫌いな人間がこうも変わってしまうと、逆に気味が悪いものである。


 あまりの溺愛ぶりに、私は何か嫌な予感がしていた。

 具体的な理由はないのだが、何となく胸騒ぎがするというか……他の団員にその事を打ち明けると、数人ほど私と同意見の者がいた。


 ある昼間の休憩中。丁度、休憩室にイーニアスがいたので、気になっていた事を話そうと近寄った私。


「団長、一つよろしいですか?」


 話しかけた時、彼はナインと猫じゃらしで遊んでいて、返事はしたもののこちらには顔すら向けてくれない。


「休憩中などは構いませんが、さすがに仕事の時まで猫を連れ出すのはどうかと思いまして……」


「だからどうしたっていうんだ?」


 大声を出して私を睨むイーニアス。こんな返事をされるとは予想もしていなかったので、私はつい怯んでしまった。居合わせた団員達も驚いてこちらに注目している。


「い、いや……ですから、立場上、そういった事は控えて――」


「黙れ!」


 身体が震えた。イーニアスは立ち上がって私を威圧する。


「二度と口を出すな」


「はい……申し訳ありません……」


 強い権力を持たない私は、黙って従う他なかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ