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蒲田茂、外様デビューしました。

 私立星空学院

 展庭市にある幼稚園・小・中・高・大学が一ヶ所の敷地内にあるエレベーター式のマンモス学校。

 広大な敷地に西洋の城を連想させる白亜の校舎が何棟も建っている。

 朝と夕方には高級車の展示場さながらに世界の名車を見る事が出来るらしい。

 お陰で今朝ママチャリでチャリ通をした俺が目立ちまくった。

 それと自転車置き場にあったロードレーサやオフロード仕様の自転車の持ち主に言いたい。

 お前らの自転車にはスーパーの袋をつける篭もないし、学生時代の憧れシチュエーション彼女を後ろに乗せて帰る事が出来ないんだぞ。

 俺には乗せる相手がいないけど…それと一擦りでバイト代が消えてしまうから余り、俺のママチャリの近くには停めないで欲しい。

 星空学院に通えるのは良家の子女か学業やスポーツに秀でた特待生のみ。

 しかも在籍しているのが殆んどが美男美女という嘘みたいな学校。

 早い話が俺は浮きまくっている、自分でも分かる程に浮いていた。


(だからって、親の仇を見る様な目で睨まなくても良いんじゃね)

 俺と同じく七月七日に星空学院に転校してきた薬鳴秋君と菊谷晴香さん。

 その二人が俺をめっちゃ睨んでいる。

 あれか、憧れの星空学院に来たのに、雰囲気を壊すガッカリ君がいたのがそんなに嫌なのか?

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺が転入したのは一年C組、ざっと見ただけでイケメン・美少女率が半端じゃない。

 クラス三十人の中で非イケメンは俺を含めて三人のみ。

 そうなると転校初日から格差が生まれてしまう。


「薬鳴君の趣味はなんですか?」


「僕はスポーツをやるのも見るのも好きなんだ」

 女子の質問に炭酸飲料ばりの爽やかさで答えてみせる薬鳴君、でも俺にはドロドロオーラ全開の視線。


「菊谷さんの好みのタイプは?」


「私は優しい人が好きかな…」

 男子の質問に照れながら答える菊谷さん、俺には照れなくもデレなくても良いから睨まないで欲しい。


「薬鳴君は彼女いますか?」


「募集中だよ。星空で素敵な恋がしたいな」

 そうか、なら思う存分女子と青春してくれ…そして俺への敵意をなくせ。


「菊谷さんの好きな食べ物は?」


「イチゴが大好きだよ」

 イチゴの沢山入ったカスタードデニッシュを作るから、俺を敵視しないで下さい。

 はい、ここまで俺への質問が一切ございません。

 そりゃそうだ、誰も好き好んで問題を起こして転入してきたフツメンとは関わりたくないだろうし。

 ちなみに有詩は俺の惨状を見て机を叩いて笑っている。

 

「はい、シゲに質問。昨日のハレトーク録った?」

 やっと俺にきたのは親友(ゆうじ)からの質問ってより確認。


「ああ、パン大好き芸人だろって…それ聞くのラインで良いだろ?」


 有詩に続いて琴美も手をあげてくれた。

「茂さんの今日のお弁当はなんでしょうか?」


「いなり寿司を三種類と鳥の唐揚げって…自己紹介の要素ゼロだよね?」

 これは俺を弄ってクラスに溶け込ませようとする二人(おさななじみ)の配慮だと信じたい。

 事実、クラスメイトは俺に親しみを持ってくれたらしい…あの二人を除いては。


(ますます視線がきつくなっている?)

 今や転校生の二人はゴミでも見る様な目で俺を見ていた。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 マホガニー製の重厚な机に人体工学に基づいて作られたと言う流麗なラインの椅子、更に個人用のタブレット型のコンピューター。

 至れり尽くせりであるが、どうにも落ち着かない。

 多分、人体工学は庶民感覚までは考慮してくれないんだろう。

 タブレット型のコンピューターのアドレス帳がゼロ件なのが寂しい。

 ちなみに俺の席は琴美の隣で有詩の後ろ…腐れ縁過ぎて怖い。

 ついでに俺がこの席に決まった時に薬鳴君は

”またフラグを壊された”

って怨めしそうに呟いていた。

 少年におじさんから一言…席が隣になっただけで、フラグがたつ程、琴美は甘くない。

 完璧王子様の有詩が何回破れたと思ってるんだ。


(つうか現実にフラグなんてないっつーの…。まっ、俺は琴美に惹かれない様にしなきゃな)

 そう思いつつも、隣の幼馴染みの笑顔に一々ドキリと胸を高鳴らせてしまう。


(琴美の奴、大人っぽくなったもんな。前までは子供だからスルー出来たけど…駄目だ!!琴美を好きになっても無駄だ)

 モヤモヤし始めた心を振り切る様に俺は、無理矢理授業に意識を集中させた。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 転校生の最初の休み時間と言えば大勢のクラスメイトに囲まれての質問タイム…の筈なんだが。

 現在進行形で暇である。

 クラスの女子の三分の一は薬鳴くんの所に男子の三分の一は菊谷さんの所に集まっていた。

 そして他の生徒の殆んど、いや他のクラスからも人が来ていたから、かなりの人数が有詩や琴美の所に集まっている。


(噂には聞いていたけどすげぇな…やっぱり、住む世界が違うんだ)

 普段は見慣れている幼馴染みが、何故か違う人に見えてしまう。

 

「蒲田君だよね。ちょっと良いかな?あっ、僕の名前は佐藤孝よろしくね」

 俺に話し掛けてきたのはクラスで貴重なフツメンの二人。

 ちなみに佐藤君は眼鏡を掛けた大人しそうな少年。


「大丈夫だ、それで何の用事?」


「蒲田も展庭の生まれじゃないんだろ?同じ外様(とざま)同士仲良くしようぜ。俺は山本三平よろしくな」

 山本は坊主頭でがっしりとした体格をしている。


「山本って柔道の全国大会で優勝した一中の山本か?」

 確か階級は重量級の筈。 


「ああ、蒲田は二中の柔道部にいたろ?」


「おう、それでとざまってなんだ?」

 大名とかじゃないんだし。


「内と外の外に様子の様で外様、早い話が展庭出身じゃない生徒の事だよ。ちなみに普通の生徒は普代、ある程度の家柄は親藩、飛び抜けて凄いのを将軍か姫って言うんだぜ。最も普代でもかなりの金持ちだけどな」

 

「将軍と姫ね。学生なのにか?」

 今流行りのカースト、しかも和風カーストかい。

 

「学生だからだよ。分かりやすく言うと普代はグループ企業の重役の子供。親藩はグループ企業の社長の子供。将軍や姫は本社の経営陣の子供って感じかな。今の星空学院には将軍が五人と姫が五人いるんだ。本人より取り巻きがうるさいから色々と気を付けた方が良いよ」

 佐藤君の話でいくと既に俺はアウトっぽい。


「ちなみに姫星さんや七竹さんは?」


「姫星財閥のお嬢様と医療法人七竹会のお坊っちゃまだから、当然姫と将軍だぜ」

 うん、とりあえず他の将軍や姫とは関わらない様にしよう。

感想お待ちしています

そういや関東の夏休みって何時からなんだろ?


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