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新しい世界

 気づくと真っ暗な空間に浮いてた。闇は果てしなく広がり、何も見えない。


(ここはどこだ?俺は死んだのか?)


「蒲田さん、お疲れ様です」 

 呆然としているとロキ様の声が聞こえてきた。


「ロキ様、ここは?俺は死んだんですか?」


「ここは世界と世界の間。全ての場所と全ての時に繋がる場所です…まず、お礼を言ます。貴方のお陰で何十億もの魂が救われました」

 ロキ様の説明によると、あの世界があのままだと何十億もの魂が輪廻の輪から外れてしまい色んな世界に悪影響を与えてしまうらしい。


「あの世界に住んでた人々は仮初めの姿です。永遠に同じ世界で同じ時を繰り返していくんですよ。幸せな人はまだ良いでしょうけど、過酷な運命を持つ人達は堪らないでしょう。普段ならラグナロクでも起こして滅亡させるんですが、あそこは輪廻から切り離れた世界です。下手に滅亡させると、全ての魂が未来永劫に迷ってしまうんですよ。だから、私は大いなる矛盾を送り込む事にしたのです。あの世界の矛盾を加速させる為に」


「それが俺ですか?」

 ただのおっさんより、もう少しまともな人選があったと思うんだけど。


「ええ、あの世界がコピーされたのは貴方が死んだ数時間後です。だから私は貴方の魂を輪廻の輪から外して、プログラム化させてあの世界に送ったんですよ。あるコンピューターウィルスに感染させてね。そのウィルスに感染したキャラクターは、プログラムに縛れなくなり、自分の意思で動き出します」


「だから琴美や有詩はゲームとは違う人間になったんですか?」

 俺が送られたのはゲームの隙間にあたる期間だそうだ。琴美達は主人公達と別れ、想いをです募らせていく時間。しかし、その期間に琴美や有詩は俺と接した事により、ウィルスに感染し独自の人格を持つ様になった。


「ええ、所詮は小手先で作られた世界。死んだ筈の人間が生きているという矛盾やプログラム外の動きをです見せるキャラクターに堪えられず綻びを見せ始めました。そして私はその綻びから私は侵入しました」

 ゲームの世界に侵入したロキ様は路亀神社を作ったり雲知に幻術を掛けていたらしい。


「皆は無事なんですか?あの神はまだ生きてるんですか?」

 彼奴が生きてたら、琴美達はまたゲームのキャラクターに戻されかねない。


「ああ、あらですか。反省を促す為に輪廻の輪に放り込みましたよ。ちなみにスタートは植物プランクトンからです」

 植物プランクトンになり動物プランクトンに食われたら、動物プランクトンに転生。そして虫に食われたら、虫に転生。本当に反省するまで、それを永遠に繰り返すらしい。


「皆は琴美や有詩は?」


「そては追々分かりますよ。さてこれを貴方にお返しします」

 ロキ様の言葉と共に現れたの俺の体。正確に言うとおっさんsだった時の俺の体だ。そして俺は再び意識を失った


 目を開けると、知らない天井…ではなく見知ってる田所(おっさん)さんが俺を見ていた。


「おっ、目を覚ましたか。しかし、蒲田も悪運が強いよな。通り魔に刺された後に偶然通りかっかた医者に助けられたんだからよ」

 周囲を見てみると、どうやらここは病室らしい。個室の割りに広く、支払いが自己負担だと怖い。


(田所さんがいるって事は、元の世界に戻って来たのか…命が助かっただけでも、儲け物だな)

 元の木阿弥ならぬ元のおっさんに戻っただけだ。


「田所さん、わざわすいません。俺どれ位寝てたんでうすか…なんか随分と長い夢を見ていた気がするんですよ」

 もうあの夢の様な十五年間も幻になってしまった。琴美達が無事かどうかを確かめる術すらない。


「刺されたのが6の日夜で、今は7日の夜だから、丸一日寝てた事になるな。どうせ休みだから気にすんな」

 そういや、コンビニに酒を買いに行って刺されたんだよな。貴重な休日だけど命には替えられない。


「人手が足りないのにすいません。有給使えまますかね」

 何かがなきゃ使えない有給だから、入院日をカバー出来る位はたっぷりと残っている。


「言葉が足りなかったな。俺も今日は休みだったんだ。正確に言うと明日も明後日も休みさ…グラン・シャリオが潰れたんだよ」

 元の世界に戻ったら、会社が潰れてプー太郎になってました。


「へっ?うちの会社、赤字でしたっけ?」

 大繁盛と言わないが赤字ではなかった筈…人件費安いし。


「買われたんだよ。上層部も混乱していて、俺もお前もどうなるか発表されてない」

 一日で会社を買うなんて半端な金じゃ無理だろ。言っちゃなんだが、そこまでおいしい会社じゃないぞ。


「どこの物好きです?…でも、退院したら職安通いですかね」

 俺みたいな末端が残れる可能性は極薄だ。


「聞いて驚くな。あの姫星財閥だぞ、これで少しは待遇が改善されると良いんだけどな。まっ、それも財閥のお眼鏡に叶って残れたらの話さ」

 …空見医だろうか。今、田所さんの口から聞き覚えのある言葉が出たんだけど。


「ひ、姫星財閥ですか?」

 頭が混乱する。元の世界には姫星財閥はなかった筈。そして姫星財閥があるんなら、琴美もいるんだろうか。


「ああ、有無を言わせずの買収だったらしいぜ。元々今の社長はパン作りに情熱がなかったから直ぐに応じたらしい」

 確かに俺の知ってる姫星財閥ならグラン・シャリオを買う位は余裕だろう。もし、うちの会社を買ったのが俺の知ってる姫星財閥でも今の俺には関係ない。琴美と仲が良かったのは、幼馴染みの蒲田茂であって、おっさんの蒲田茂ではないんだから。


(まっ、琴美ならイケメンで優しい旦那と結婚出きるだろう)

 もう、大口を開けて笑う食いしん坊お嬢様琴美と会えない。

 もう、イケメンの癖に恋愛はへたれな有詩と馬鹿を言って笑い合えない。

 もう、甘えん坊の妹朋子が甘えてくる事はない。

 もう、姉ちゃんの優しさに触れる事は出来ない。

 大切な人達は同じ世界にいるかも知れないが、会う事すら叶わないのだ。

 知らず知らずの内に、涙が零れ落ちていく。


「蒲田、傷が痛むのか…っと、意識が戻ったらナースセンターに連絡を入れるんだった」

 大丈夫ですと言おうとした瞬間、病室の扉が開いた。入ってきたの一人の女性。


「失礼します。蒲田茂様の病室はここでよろしいですか?」

 嘘だ…なんであいつが俺の病室に来るんだ?何より俺の知ってるあいつと微妙に違う。


「そうですが…貴女は蒲田の知り合いですか?こいつ傷が傷んでるみたいなので、後からにしてもらえませんか?」

 女性はたおやかに微笑むと、田所さんに名刺を手渡した。瞬間、田所さんの顔が強張る。


「田所雅真生さんでよね。彼が目を覚ました事を、ナースセンターに伝えてもらえますか?」


「は、はい。分かりました」

 そして田所さんが病室から出ると同時に女性の顔の顔に怒りの色が浮かんだ。


「こっの馬鹿茂っ‼勝手に居なくなるなんて、何様のつもり?私がどれだけ泣いたか分かってんの?鈍感、身勝手、女たらし」


「ひ、姫星琴美様ですよね」

 もし、そうだとしたら、ため口は不味い。


「様?そうよ琴美よ。みんなの前であんたにファーストキスを奪われた琴美よ。告白の返事も返せないまま何年も待たされた可哀想な琴美ちゃんよ。あんたに心を持っていかれたたままの琴美よ」

 うん、琴美だ。大人っぽくはなってはいるが、こいつは俺の知ってる姫星琴美だ。


「ち、ちょっと待て。俺、元の世界に戻ったんじゃないのか?」

 元の世界に姫星財閥はないし、琴美も存在しない。でも目の前には琴美がいる。


「あの後、神様がロキ様が約束して下さったの…努力してそれぞれの目標を叶えたら、七年後の七夕に茂と再会できるって」

 琴美の目から涙が零れ落ちていく。涙を流しながらも、真っ直ぐに俺を見つめている。

 

「そっか、今は何してんだ?」


「大学を卒業して、うちの会社に入ったんだ。そしてグラン・シャリオを買収したの…私の目標は(あんた)の居場所を作る事」

 琴美はぐずつきながらも、説明をしてくれた。何でも俺が消えた後、ロキ様は俺と関わりが深かった何人かに課題を出したそうだ。


「蒲田さん、失礼します」

 ノックの声に返事をするとナースが部屋に入って来た。その後ろには見覚えのある白衣を着た金髪のイケメン。


「私が見ますので、貴方は戻って下さい…よお、シゲ久しぶり。しかし、老けたな」

 ちなみに有詩のイケメン度は更にアップし、白衣が憎い位に似合っていた。


「有詩、なんでお前まで?」


「ここはうちで経営してる病院だぜ?そして俺の目標は医者になる事。一応、お前の手術に医学生として参加したんぜ。まだ親父の助手だったけどな」

 琴美達の話によると、あの世界と似た新しい世界を作るには七年掛かり、その間にそれぞれが成長を遂げれば俺を戻すと言う約束だったとの事。つまり、ここはゲームの世界を基にした現実の世界。


「そっか、他の皆は元気なのか?」


「一番、凄いのは山本だな。彼奴、山本は金メダルを取ったんだぜ。佐藤はオックスフォードにストレートで入ったしな」

 文朗は和裁の職人になって、夜鬼先輩は新進気鋭のジュエリーデザイナー。空先輩は実家に頼らず、この間初当選したそうだ。朋子もきちんとサポートしたそうだ。


「皆頑張ってるんだな…薬鳴はどうしたんだ?」


「お前が元に戻ったのと同じく、彼奴も元に戻ったらしいぜ…っと呼び出しだ。シゲ、またな」

 何でも薬鳴は池英美男子って、男に戻り引きこもり中との事。ハーレムも薬鳴の正体を知ると解散したそうだ。


「来部さん達は元気なのか?」


「蘭は佐藤君を追い掛けて、向こうでシンガーとしてデビュー。伊庭先輩達も目をさまして、元鞘に戻ったわよ…蒲田茂に辞令を出します。自由(リベルテ)路亀神社本店勤務を命じます。オーナー兼店長は私ね。茂、転生した位で逃げれると思ったら大間違いよ。貴方は私の大切な人。どんな手を使っても捕まえてやるんだから」

 琴美はそう言うと俺にキスをした。これが俺達の新しいスタートだ。

 


とりあえずはこれで本編は完結となります。元々はゲームの世界に転生する話を見て、なんでそんな世界があるんだろうって疑問から生まれた話です。細かいフォローは、幕間か短編集でやります。菊谷さんと早乙女君の話や姉妹との再会、二人の今後とか…とりあえずご愛読ありがとうございました

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