神様?ロキ様?
さて、どうしたものか。金髪のイケメンに、質問責めになって早10分。正直、疲れてきました。
「シゲ、手って、どう言うタイミングで繋げば良いんだ?やっぱり三回目のデートなのか?本にそう書いてあったぞ」
白鳥さんへの告白は成功したものの、恋愛経験の乏しい有詩は色々と不安らしい…手を繋ぐタイミングって中坊かよ。
「んなマニュアル信じるな‼自分のキャラとか相手の性格、デートしてる場所、お互いの信頼関係で変わるっての…つうか、その前に白鳥さんをデートに誘え」
まあ、有詩と白鳥さんは四六時中一緒にいるから、このミッションは簡単にクリア出来るだろう。
「デ、デート?やっぱり最初は映画かな?」
「映画はやめとけ。男の好きな映画と、女の好きな映画は間逆だからな。大ヒットしてる話題の映画なら大丈夫だけど」
女性は恋愛映画を好むが、主演俳優と比べられるのきつい。ロマンチックな口説き文句はイケメンの口から出るから様になるのだ。
「いや、雪香は俺とアクション映画に良く行くぞ」
「それは白鳥さんが、お前に合わせていてくれただけだろ?自分だけが楽しんだり、無言になるデートは最悪なんだぞ」
自分が興味がない映画やドラマを見るのは案外苦痛だったりする。自分が楽しめてるからって、相手も楽しめるとは限らないのだ。
「うっ…でも、俺はデートの経験なんてないんだぞ」
「それは白鳥さんも一緒だろ?琴美や佐藤達を誘ってグループデートでもするか。企画は俺が建てるから、お前は白鳥さんを誘え」
何だかんだ言って、この純情イケメンは俺の親友だ。ここはおじさんが頑張ってみせましょう。
「わ、分かった。シゲ、サンキューな」
「あっ、それと女はでかくて長持ちするのを好むってのは、男の妄想らしいぞ」
正確には自分と丁度良い方が好まれるらしい。俺はサイズも耐久時間も日本人の平均だと…信じたい。
「なっ…なに言ってんだよ‼このセクハラ親父っ…そんなくだらない事を言う暇があったら、デートプランを考えろっ‼」
有詩は金魚の様に顔を真っ赤にしながら、口をパクパクさせている。そして、顔を真っ赤にしたままご帰宅。
有詩は白鳥さんと付き合う事を、嬉しそうに報告してくれた。それは見ているこっちまで、嬉しくなる様な最高の笑顔だった。
有詩だけじゃない、佐藤も来部さんともう一度仲良くなれた事を凄く喜んでいる。そして山本と文郎は必死に失恋から立ち直ろうとしている。
(有詩と佐藤の恋は守ってやりてえ。でも、このままじゃ薬鳴に奪われるかもな)
そして琴理ちゃんや早紀さん、下手したら姉さんや朋子の心も奪われるかも知れない。そして琴美の心も…
(冗談じゃねえ‼あんな人の心を玩具みたく扱う馬鹿に琴美を渡してたまるか…)
でも、大切な人達を守るにはどうすれば良いんだ?前世の記憶があるとは言え、俺はただの高校生。転生したと言っても特殊な能力なんて持っていない。
(転生?…あの占い師に会えれば…確か路亀神社の関係者って言ってたよな)
学校から自転車を使えば路亀神社までは片道二時間弱。山道を越えなきゃ行けないが、それよりも1秒でも早くあの占い師に会わなきゃいけない。
全速力で駆け出し教室の扉を開けると、そこは路亀神社の前だった。
「おやおや、そんなに慌ててどこに行くんです?私は神社の関係者とは言いましたが、神社に常駐してるとは言ってませんよ?」
そこにいたのは俺をこの世界に転生させた占い師。今日の服は…そんなの関係ない。
俺は占い師の足元で全力の土下座をした。
「お願いします。他に頼れる人がいないんです。俺の大切な人達を守る方法を教えて下さい」
玉砂利が額に食い込んでくるが関係ない。
「私が悪魔で、貴方の命を代償に欲しいと言ったらどうしますか?」
「俺は一度死んだ身です。助けてもらえるなら貴方が悪魔でも神様でも関係ありません」
皆を守れるなら、地獄で永劫の苦しみを受けても構わない。
「分かりました。力を貸しましょう…でも、私は悪魔じゃありませんよ。まずは頭を上げてください」
「それなら貴方は神様なんですか?」
言われた通りに頭を上げると優しく微笑む占い師がいた。
「うぁっ?とんでもねえ、あたしゃロキ様だ」
ロキ、北欧神話に出てくる悪戯好きの神様。マジで神様だったんだ。
(ここの神社の名前は路亀、読み方を変えれば路亀…まじかよ)
「それじゃロキ様は、この世界の神様なんですか?」
「私はこんな胸糞の悪い世界は作りませんよ。余りにも胸糞が悪いから邪魔をしにきただけです…もう一度、問います。蒲田茂よ、汝はこの世界を救う為に全てを捨てる事を誓うか?」
それは圧倒的な威圧感だった。普段なら身がすくみ身動き一つ出来なかったろう。
「誓います」
俺はロキ様の目を見ながらゆっくりと頷いた。
「それでは契約完了です。あっ、クーリングオフは効かないので注意して下さいね…私が動くのはクリスマスです。それまでは、この世界を楽しんで下さい…そうだ、来週から路亀神社で秋祭りがあるから皆を誘って来てはいあかがですか?特別な祈祷をしてあげますよ」
丁度良い、グループデートの名目で有詩達を誘ってみよう。




