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芸術発表会でパシり?

 ようやく暑さが去り、展庭にも秋が来た。秋…食欲の秋である。秋を感じるパンと言えばリンゴを入れたデニッシュにマロンペーストのコロネ、さつま芋をいれたあんパン。季節物のパンは考えるのも作るのも楽しい。俺は昼飯を食い終えた生徒会室で、一人秋のパン祭り構想を練りまくっている。


「なに、一人でニヤけてるの?かなり、気持ち悪いから気を付けた方が良いわよ」

 生徒会室には俺しかいない為か、今の琴美お嬢様には遠慮の二文字は存在しない。序でに体育祭以来俺から威厳の二文字が消え去ってしまった、


「和楽部の会合お疲れ様。はい、今日の弁当」

 琴美を始めとるする生徒会の面々は、芸術発表会に向けて大忙しである。琴美も昼休みの大半を和楽部の会合に費やしていた。普段のお嬢様琴美はチマチマとゆっくり飯を食べる。しかし、俺しかいない生徒会室なら大口を開けて飯をがっつけるらしい。


「ありがと、それで何を妄想してたの?」


「妄想じゃねえよ。秋から本格的にパン作りを任せてもらえる事になったんだよ」

 ふざけた暑さもなくなったから、パン職人蒲田茂本格復帰なのだ。 今度こそオリジナルパンを作ってやる。


「あっ、その話は芸術発表会が終わるまで延期ね。蒲田茂さん、貴方を和楽部補助役に任命します」

 …なんですと?和楽部補助役?


「補助役って、楽器はカスタネットしか使えないぞ」

 楽譜なんてオタマジャクシの標本にしか見えない。


「音程もリズム感も皆無の貴方に楽器を演奏させる訳がないでしょ。カスタネットが使える?茂はリズムを無視して叩いてるだけでしょ。周りがつられて大惨事になるわよ」

 琴美、甘いな。俺には必殺エアカスタネットがある。カスタネットに物を挟んで音が出ない様にする高等技術だ。 


「それじゃ何を補助するんだよ?知ってると思うが、俺は音楽関係では猫より役に立たないぞ」

 猫の手でも借りたい状況でも、俺の手は誰も借りたくないレベルなのだ。


「知ってるわよ。茂に頼みたいのは荷物運びと軽食の準備。それと物品の買い出しね」


「世間ではそれをパシりって言うんだぞ」

 和楽部の部員は女子しかいないから力仕事に男手が必要なのは分かるか、軽食作りに買い出しって…。


「蒲田さん、嫌ですわ。パシりなんてはしたないお言葉はお使いになられて。パシりなら買い出しだけでしょ。あんたに頼みたいのは部員の補助。知ってると思うけどうちの部員にはお嬢様が多いの。婚約者がいる人もいるから、下手な男を入れて噂でも立ったら大変なの。それに男の人が苦手な子も少なくないのよ」

 確かに、何もなくても下衆の勘繰りって奴がある。


「でも、俺は星空の中じゃ、男っぽい方だと思うぞ」

 考え方が昭和だから、今の子と違って男の化粧なんて信じられない。髪は短くシャンプーはトニ○ク、洗顔は水のみだ。


「あんたのはセックスアピールじゃなく、男臭いだけ。だから悪い噂のたちようがないの。それに直接関わるのを私だけにすれば平気でしょ。パン屋さんにはきちんと話を通しておいたから、安心してこき使われなさい」


「俺に断る権利はある?」

 ただでこき使われるなんて嫌すぎる。


「あら?誰が階段から下ろしてあげたか忘れたの?昔、根性!!って書かれたTシャツを愛用してたそうね。それとキャバクラに行ったのがばれてかこさんに土下座して謝ったって本当?」

 いつの間にそんな事を調べあげたんだ?それより俺の過去恥部をどれだけ掴んでるんだろう。


「くっ…分かったよ。分かりました。手伝わせてもらいます」

 ただ酒が飲めるからって、キャバクラに付き合ったのが運の尽き。涙目のかこに一時間近く説教されたんだよな…。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ラノベやゲームでハーレムを築いてる奴がいるけど、そいつ等に聞きたい。周りが女だらけできつくないかと…いや、あれは自分に好意を持ってくれているのが前提だ。今の俺の状況とは全然違う。


「皆様、もう少しで芸術発表会ですよね。私達、和学部も練習に勤しむ必要がございます。そこでここにいる蒲田さんに雑用係をお願いしました。見た目は怖いかも知れませんが、人畜無害な方なので安心して下さい」

 琴美の紹介を聞いても安心出来ないらしく、和楽部の皆さんの顔色は優れない。琴美の話だと家族以外の男とはあまり話せない子もいるそうだ。


「蒲田です。物運びや軽食の準備を担当しますから、皆様と顔を合わせる機会は少ないと思いますがよろしくお願いします。俺に頼みにくい時は、姫星さんに言って下さい」

 俺の言葉を聞いてあからさまにホッとする和楽部の皆様。大人しい感じの美少女が多いから地味に傷つく。


「ですから皆様が自己紹介をする必要ないと思いますわ。何かありましたら私に仰って下さい」

 後から聞いてビビったのは和楽部には家元の娘さんやお嬢様が多いらしく、何十万や何百万もする楽器を使っているそうだ。ちなみに琴美の琴は何百万もするらしく、俺の前世での年収よりも高い。出来るだけ触りたくないのだが。

 ちなみに琴美に確認した所


「もし琴に傷をつけたら。そうね、一生をかけて償わせるかもね…その時には逃げない様に掴まえておくから安心しなさい」

 慎重に動こう。琴美とはイーブンな関係でいたい。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 同刻、薬鳴愁はグレイトゴッドに不満をぶちまけていた。


「体育祭のあれはなんだよ。琴美だけじゃなく来部蘭や伊庭弓美も攻略出来ないし」


「あれは儂の所為でないわ…まあ、待っとれ。全てを作り変えてやる。お主が全てを支配出来る世界にしてやるわ。そうじゃのクリスマスまでには何とかなるじゃろ…ここは儂が作った世界。儂が全てを決めるんじゃ」

 その瞬間、世界の片隅に小さな歪みが生まれた。それを見つけた占い師は怒りを露にしたと言う。


「やれやれ、馬鹿に付ける薬はないですね。自分で自分の世界を壊すなんて…クリスマスまで間に合えば良いんですけどね」

 占い師は深い溜め息を洩らすといずこかへ消え去って行った。

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