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ピンチはチャンスじゃなく本当にピンチ

 プリンセンスランド、姫星財閥が建設した総合アミューズメント施設。遊園地の他にも屋内プールに動物園もあるそうだ。さらに宿泊施設も完備している…そして一番の売りは多種多様な絶叫マシンらしい。

 その内容は俺の様な高所恐怖症の人間からしたら、プリセンスと言うよりドSな女王様クイーンである。

 菊谷さん曰くプリセンスランドでは選んだ場所で発生するイベントが違うとの事。

 でも、この世界は本当にゲームの世界なんだろうか?菊谷さんの覚えている内容と現実が違いすぎる。


「確かゲームだと姫星琴美は絶叫マシンが大嫌いで、男主人公が絶叫マシンを選ぶと泣いて逃げ出しちゃうんだよね」

 

「いや、あいつ絶叫マシンフルコースのプランを建ててるんですけど」

 むしろ泣いて逃げ出すのは俺の方だと思う。


「後はゲームだとお弁当イベントがあるよ。どのキャラも好感度でお弁当の中身が変わるんだよね。姫星琴美の好感度がマックスなら五段のお重になるんだよ」

 いや、五段のお重なんて二人じゃ食いきれないし、嵩張るから持ち歩きに不便だぞ。


「ちなみに今回も弁当の担当は俺だからな…待てよ、弁当を持ってれば絶叫マシンに乗らなくても済むじゃないか!!」

 そして俺は遊園地での母親の様に下で手を振ってれば大丈夫だ。


「無理だと思うなー。琴美ちゃん気合いが入ってたし。まっ、私は翔太君と動物園デートを楽しむから君も頑張り給え」

 …翔太君?今、菊谷さんが早乙女の事を翔太きゅんじゃなく翔太君って言ったよな。


「早乙女とプールに行くんじゃないのか?」

 あれだけ翔太きゅんの水着が見たいって騒いでた癖に。


「翔太君が私の水着を他の男に見せたくないんだって…琴美ちゃんと蒲田君を見て思ったの。ゲームキャラとしての翔太きゅんに夢中になるんじゃなく、一人の早乙女翔太って言う人間と恋をしてみようって思ったの」

 菊谷さんの話によると、最近早乙女が男らしくなってきたらしい。


「そういやゲームには他にどんな人が出てくるんだ?」


「まだ出てないのは二年の時に赴任してくる蟹座の座丹家たんげ定家さだいえと三年の時に新入生として入ってくる水瓶座の美厨みくり華芽吹はなめ。それに隠しキャラで蛇使い座の塚家つかいえ戸美こみと鳳凰座の宝桜たからざくら一里いちり。secondの新キャラオリオン座の壇守だんり織音おりねと南十字星の美南びなん住次すみつぐよ」

 丹家は渋い国語教師、美厨は小悪魔な新入生、宝桜は外様のスポーツマン、壇守はアイドルで来部さんのライバル、美南は姫星財閥と双璧をなす美南財閥の次男坊。まあ、ここまでは良かった。


「彼氏持ちの教育実習生!?なんだ、そのゲームは?彼氏持ちが攻略対象とかトチ狂ってんだろ」

 隠しキャラの塚家戸美は二年生の時に教育実習生として星空に来るらしい。セクシーなお姉さんキャラで幼馴染みの彼氏がいるとの事。


「でも、塚家の彼氏は仕事ばっかりで塚家を放ったらかしにしてるんだよ」


「はっ?彼氏が仕事を頑張ってるのに寂しいから浮気!?馬鹿じゃねーの」

 俺は他人の恋人に手をつける奴が大嫌いだ。男の浮気は解消だとか女は彼氏がいても他の男と恋をする生き物だとか聞くと胸糞が悪くなる。

 

「うーん、でも塚家の彼氏は男主人公の愛に負けたって言って、塚家と別れるんだよ」

 何、そのご都合主義は?単に彼氏が塚家に愛想を尽かしただけじゃないのか。


「浮気をされた方って死ぬ程辛いんだぜ」

 経験者の俺が言うんだから間違いない、寝盗られた直後は何ともないが後から来る。


「どのキャラも出てくるのは二年生以降だから、まだ警戒する必要はないと思うよ」

 確かにゲームなら登場する時期は決められているかも知れない。でも現実にはその人達は日本のどこかで暮らしている。


「薬鳴も酒納先生を本気で愛すれば良いのにな」

 酒納先生も生徒と恋愛をするリスクを知ってると思う。それでも恋人になるなら薬鳴も本気で応えるのが筋だ。

 

「無理かもねー。薬鳴はハーレムフラグを蒲田君に邪魔されたって逆怨みしてたし」


「あいつ、ハーレムなんかを作って本当に相手を幸せに出来ると思ってんのか?」

 一人のかこも幸せに出来なかった俺からしたら、想像も出来ないししたくもない。 


「そう言う蒲田君はどうなの?まさか琴美ちゃんの気持ちに気付いてないなんて言わないわよね」


「知らない振りをする方がお互いに幸せになれる事もあるんだよ」

 俺なんかじゃ琴美の隣に立つのは役者不足だ。琴美を笑顔にする事は出来ても幸せには出来ないと思う。 


―――――――――――――――


 いよいよプリンセンスランドに遊びに行く日が来てしまった。


(弁当良し、水筒良し、オムツも良し…これで準備万端だっ)

 今日の弁当は2人分、朋子は一人で一生懸命サンドイッチを作っていた。

 形はいびつだけど、気持ちが篭った美味しそうなサンドイッチだ。

 空さんは先輩だけれども、一口でも残したら絶対に絞め落とすと思う。ちなみに俺の作った弁当は三色丼風にしてあり、絶対に逆さまに出来ない。 

 つまりは絶叫マシンに乗れないって事になる。絶叫マシンの感想は乗らなくても分かるんだし。

 琴美には来部さんと回ってもらい、俺は佐藤と回らせてもらう。そして昼に合流すれば問題ないだろう。

 それに琴美は姫星家の代表として来る。つまりはロングスカートと言うお嬢様モードで来る可能性が高い。

 その格好じゃ絶叫マシンは無理だと告げて、観覧車かメリーゴーランドに乗れば問題なし。

 今回は姫星家の招待とあって迎えの車が来た。

 

「茂さん、お弁当をお預かりしますわ…せっかくのお弁当が悪くならない様にプリンセンスランドの冷蔵庫に預けておきます」


「琴美、その格好は…」

 今日の琴美は黒のカーディガンに白いシャツ、そしてスキニージーンズ…。


「あら?ファッションのTPOには気を使うのは当然ですわよ。茂、私から逃げれるとでも思ったの?人生経験が豊富な割りには甘いわね」

 どうする俺?お漏らし確定なのか?

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