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バイト代ラプソディー

 県立第二高等学校、通称ニコが俺の通っている高校だ。

 ニコは今時珍しい学ランの高校、前世の高校も学ランだったから違和感はない。 

 成績レベル的は中の中ぐらいの典型的な普通高校。

 昔はスポーツが強かったらしいが、最近は星空に連敗中。

 そりゃそうだ、全国から特待生が来る星空と違いニコの生徒の殆んどが公時(きんとき)市の市民。

 六百キロ近く離れている前世の故郷からも星空に生徒が来ていたのには驚いた。


「シゲさんも今日バイト代が貰える日だろ?何に使う?」

 話し掛けて来たのは同じクラスの渡部文朗(ふみお)、文朗はファミレスでバイトをしている…ちなみに文朗も俺と同じくフツメン。


「文朗、同い年なんだからさん付けは止せ。携帯代を払って家族に何か贈って後は貯金だよ」


「シゲさんは落ち着いていて同い年に思えないんだって。初めてのバイト代で家族に贈り物って昭和な感じがするし」

 それは大人だからじゃなく俺の自己満足な贖罪(しょくざい)

 前世の記憶があり前世と同じ容姿をしているなんて、どう考えても普通の子供じゃない。


「昭和って。(ともこ)にバッシュをねだられたんだよ。朋子にだけ一万近い物をあげて他は知りませんじゃ気まずいだろ?」

 昭和って何気に大正解なんだよな。

 ちなみに父さんにはネクタイ、母さんにはハンカチ、姉さんにはレザーのチョーカーを贈る予定。

 一つ五千円が予算だからバッシュと合わせて二万五千円。

 携帯料金を払っても、それなりに残ると思う。

 

「ふーん、そういやシゲさんって姫星のお嬢様と幼馴染みなんでしょ?何かあげるの?」


琴美(おじょうさま)が喜ぶ物なんて(しょみん)のバイト代で買えないって」

 俺のバイト代で買える物を贈っても琴美の持ち物と釣り合わないで浮いてしまうだろう…琴美と有詩と一緒いる時の俺

みたく。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 前世の学生生活との一番の違いは授業を真面目に受ける様になった事。

 昔は睡眠時間に有効活用させてもらった英語の授業も真面目に受けている。

 まあ、寝れない訳もあるんだけど。


「昨日、キモオタをしばいてやったら、ワンワン泣いてキモくてよー」

 授業中に武勇伝を大声で語っているのは雲知(くもさと)(たく)

 髪を茶髪に染めたナリヤン風イケメン、中身はDQNって奴だ。

 ニコは茶髪禁止だが雲知の親父は会社の社長で母親はニコのPTA会長らしく、学校の言う事なんて聞く耳を持たない。

 ちなみに雲知の親父の会社は姫星財閥の傘下企業の一つらしい。

 取り巻きが煽るもんだから、雲知はケンカ自慢やモテ自慢、さらにはセレブ自慢まで始める。


(同じお坊っちゃまでも有詩とは偉い違いだよな。モテやセレブは有詩が圧勝してるけど彼奴は自慢なんてしないし)

 ちなみに俺だと雲知に惨敗する。

 授業が終わってスマホに電源を入れると朋子からラインが来ていた。


(終わったら俺から連絡するって言ったのに待ちきれないんだろうな)

 バッシュを買う次いでに姉さんのチョーカーは朋子に選んでもらうとするか。

 後、朋子が食べたいケーキがあるって言ってたからケーキ屋にも行ってみよう。

 母さんには余り朋子を甘やかすなと言われているが、可愛いからついつい甘やかしてしまう。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 待ち合わせ場所で朋子を待っていると、元気な声が聞こえてきた。

 見ると朋子が大きく手を降りながら駆け寄って来る。


「兄貴ー、お待たせ!!さっ、行こっ」


「茂さん、朋ちゃん朝からずっとバスケットシューズを買って貰えるのを楽しみにしてたんですよ」

 朋子を見ながらニコニコ笑いながら説明をする琴理ちゃん。


(流石に朋子だけには買うのは気まずいな…あれならそんなに高くないしバッシュと一緒に買えるな)

 

「だって兄貴がバッシュを買ってくれるんだもん!!早く行こーよー」

 朋子は玩具を買ってもらう子供みたいにソワソワと落ち着かない。


「急がなくてもバッシュは逃げないだろ」


「僕が欲しいバッシュが誰かに買われるかもしれないじゃん」

 そう言って朋子はプッと頬を膨らました。

 バッシュが朋子を見た途端、逃げ出すなんて事もなく無事にお目当てのバッシュを買う事が出来た。

 

「朋子、落としてなくすなよ」


「兄貴、僕はそんなに子供じゃないよ」

 そう言いながらも、朋子はバッシュが入った紙袋を大事そうに()(かか)えている。


「はいはい、あっ琴理ちゃんにはこれ。安物だけど良かったら使ってね」


「私にですか?…これはリストバンド、良いんですか?」

 良いんですかと言いながらも、リストバンドをしっかりと握りしめている琴理ちゃん。

 俺が琴理ちゃんにあげたのはピンク色で中に赤いハートが書かれているバスケット用のリストバンド。

 リストバンドなら練習でも使えるし、安くても見劣りはしない。


「俺が可愛いリストバンドを着けても仕方ないでしょ?」


「はいっ!!ありがとうございます!!大切にしますね」

 財閥のお嬢様なのに千円のリストバンドで喜んでくれる琴理ちゃんは良い子だ。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺が贈ったプレゼントは予想以上に家族に好評だった。

 母さんは涙ぐんでいたし、父さんは何時もより酒を多く飲んだ。

 姉さんはチョーカーの写メを早紀さんに送ったらしい。

 みんな喜んで笑顔になってくれた…一人を除いては。

 プレゼントを贈った数日後の事、何時もの様に飯を食べに来た琴美お嬢様は不機嫌だった。

 いや、事前に不機嫌になっていると言う情報は手に入れている。


「しーげーるー、何で琴理にだけリストバンドをあげて私には何もないのかなー?」

 朋子の話だと、琴理ちゃんはリストバンドを買って貰えたのが嬉しいらしく琴美に何度も話したらしい。 


「あれは朋子にだけプレゼントして琴理ちゃんに何もなかったら可哀想だからあげたんだよ。それにお前はバスケをしないだろ?」


「それじゃ妹にあげて姉にあげないのはどう言う事だね、茂君。聞く話によると有詩にはサッカー選手モデルのリストバンドをあげたそうじゃないか?」

 あれか、自分だけが除け者にされたのが気に食わないんだろうか?


「それは有詩に星空のサッカー部でレギュラーになってもらいたくて」

 ちなみにあげたのは有詩が好きだと言うイタリアサッカー選手モデルのリストバンド。


「ふーん、へー、ほー。それで?」


「ったく、お嬢様が庶民にたかるなよな。ほれっ」

 泣いた子供が…いや不機嫌なお嬢様は紙袋を渡すと一気に笑顔になった。


「マジっ!!茂分かってるじゃない」


「言っておくけど安物だからガッカリするなよ」


「木のバレッタか、茂にしては良い趣味してるじゃない」

 俺が琴美にあげたのは焦げ茶色の木製バレッタ。

ちなみに早紀さんには姉さんとお揃いのチョーカーを贈ってある。

 明日からまたバイトを頑張らねば。


感想お待ちしています

次回グッバイ、ニコ

川の向こうは今までの作品と毛色が違いますが、どんな人が読んでくれているんでしょうか?

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