占い師の忠告
この世界は何なんだろうか?
ゲームの世界だと言うなら、かこは存在しない筈。
しかも、かこの反応を見る限り、こっちの俺は最近死んでいる。
(家に行ってみるか)
実家に行けば、何かが分かると思う。
公園から家までは徒歩で1分そこそこ、家の様子を見て来ても琴美に怪しまれないで済む…筈。
(なんだ、ありゃ?まりも○こり柄のテント?)
家に続く道を一張りのテントが封鎖していた。
まりもっ○り、一時は全国のお土産屋を席巻していた北海道生まれのキャラクター。
しかし、今では北海道のお土産屋ですら生存を危ぶまれている。
「犬も歩けば棒に当たる。ロッキさんの犬棒カルタ占い?」
いや、その当たるは意味が違うし、いろはカルタを使って占うのか?
「おや、蒲田さんじゃないですか?偶然ですね」
テントから出て来たのは、俺をこの世界に転生させた占い師。
「なんで、あんたが北海道にいるんだよ!?」
占い師の県外出張なんて聞いた事がない。
「なんでって、涙を流すニポポ人形を買いに来たんですよ」
また、マニアックなネタを…。
「オホーツクに消えるつもりですか?」
「あれがあるとバスタオルを取れるんですよ。さて紳士の小粋なジョークはここまで…蒲田さん貴方をこの先に行かせる訳にはいかないんですよ」
つまり、狙って実家への道を塞いだと。
「俺が実家に行くと何が起こるんですか?」
「死んだ息子が若返って帰って来たらパニックになりますよ。それに天下の姫星財閥のお嬢様を連れ立っての里帰りとなればマスコミが放っておきません」
確かに、琴美が庶民の男といるのをマスコミが知ったら放ってはおかないだろう。
ある事ない事書き立てるて思う。
(待てよ、今までなんで騒がれなかったんだ?)
琴美は俺の家に良く来てるし、二人で遊びに行ったのも一回や二回じゃない。
マスコミが嗅ぎ付けなくても、琴美の実家にチクる奴がいてもおかしくはないと思う。
「分かりました。この世界の俺が同じ蒲田茂とは限りませんし」
同じ顔と名前の人間なんて、遺族の神経を逆撫でるだけだ。
「分かって頂けて助かります。次いで、ですから占っていきませんか?」
テントの中には、椅子とテーブルだけが置かれていた。
「何を占ってもらえるんですか?」
いろはカルタで何が分かるか分からないし。
「貴方にこれから起きる事への道標だと思って下さい。今から五十音が書かれた札を並べます。そしてその中から六枚を選んで下さい。それが貴方の手助けになります。いろはカルタ占いで言えば”転ばぬ先の杖”ですね」
男はそう言うと、古びた札を次々と机に並べていく。
並べ終わると同時に札を取る様に促してきた。
「六枚取りましたよ」
一枚目はむ、二枚目はろ、三枚目はに、四枚目はふ、五枚目はほ、そして六枚目はわ。
「まずは一枚目は、むですね。む、無理が通れば道理が引っ込む」
普通だ、普通にいろはカルタだ。
「まあ、指針にはなりますね」
「二枚目は、ろですか。ろ、ロッキさんは素敵な紳士。これは大事ですよ、テストに出しますからアンダーラインを引いておいて下さい」
「いろはカルタって、ことわざじゃなかったですっけ?」
確かに、キャラ物のいろはカルタもあるけど。
「三枚目は、にですね。に、にんにくを食べたら牛乳を飲もう。餃子を食べた後にキスは出来ませんしね」
「口臭予防のアドバイス?」
確かに、牛乳を飲めば胃に粘膜が出来るけど。
あまりのおふざけっぷりに席を立とうとした瞬間、占い師の雰囲気が一変した。
抗う事すら許さない圧倒的な威厳。
「四枚目は、ふですね。ふ、フラグは無理矢理建てられる。無理矢理建てられたフラグは人の気持ちも変えてしまいます…そう、無理矢理に」
「人の気持ちを無理矢理に変えるなんて漫画やゲームじゃないんですから…」
でも、ここがゲームの世界だとしたら。
「ほう、五枚目は、ほですか。ほ、崩壊は防ぐには元に戻る事」
息をするのさえ許されないプレッシャーが俺を包み込む。
一体、何が壊れるんだろうか?
「六枚目はわ、災い転じて福と成す。全ては貴方に掛かってるんですよ…それと私があげたストラップは肌身離さず持っていて下さいね…さあ、可愛い彼女さんが貴方を探しに来ましたよ、お戻りなさい」
気がつくと俺は道路の真ん中に突っ立っていた。
「茂!?大丈夫、顔色が悪いよ」
そうだと思う、何しろ全身冷や汗でグッショリだ。
「ああ、かこはどうした?」
「笑顔で帰って行ったよ…顔を見せないで良かったの」
とりあえず、かこは落ち着いたらしい。
「今の俺はお前の幼馴染みであって、かこの幼馴染みじゃないんだぜ。さて、俺のお気に入りのラーメン屋に連れていってやるよ」
そう、かこより今が大切なんだ。
「やった。茂、餃子も頼んで良い?」
「それじゃ口臭予防に北海道牛乳も頼まないと…な」
早速、いろはカルタ占いが当たった。
――――――――――――――――
氷狼館高校は羊ヶ丘展望台の近くに建てられていた。
「あれよ、あれが士武凍狼!!あー、でもゲームとは展開が違うわね」
防犯の都合上、将軍と姫は別席での応援となった。
「展開が違う?」
「うん、ゲームだと七竹の応援は取り巻きの女の子だけなんだよ…まさか、こんなに暑苦しくなるなんてね」
なんでも、ゲームではお金持ちな上に女の子の取り巻きを連れて来た有詩に士武がキレるらしい。
しかし、現実は…。
「我らが友人、七竹有詩の活躍を願ってー!!三・三・七拍子ー!!」
そう、この世界の有詩の友達は男の方が多いのだ。
しかも、俺との関わりからむさい野郎共とも仲がいい。
庶民サイドの応援席には、学ランを着こんだ即席応援団が支配している。
女子の数は圧倒的に士武側がの方が多い。
「全員、有詩のダチなんだぜ。しかも、自腹で来てくれたんだから凄いよな」
実際は姫星航空を使ってるから割安にはなってるけど、学生には痛い出費だ。
つまり、来てる野郎共はそれでも有詩を応援したかったって事。
「蒲田君は応援団に参加しないの?」
「応援練習を見た有詩が大笑いして勘弁してくれって言ったんだよ」
なんでも、一人だけテンポが違っていたらしい。
これでモンスター文庫様の規定文字数を突破しました…一次は通過したい
何気に今回の占いは重要です…一部を除きですが




