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それぞれの文化祭

ようやく展開が進みました

 準備期間も学園祭の楽しみの一つだと思う。

 夜遅くまで教室に残り、何かを仲間で作り上げていく。

 買い出しや無駄話も大切な思い出になる…筈なのに。

 蒲田茂、ただ今一人でドッグロールを焼いてます。

 いや、生徒会でパンを作れるのは俺だけだから、パンを一人で作るのは仕方がないと思う。

 演劇の衣類も裁縫が得意な女子がやってくれたし。

 でも、俺には手伝いすらいない。

 清々しいまでの丸投げである。

 俺のいる第三調理室に響くのはオーブンの音だけ。

 他の教室から笑い声や明かりが漏れてきて少し寂しい。


「シーゲ、調子は…切なそうだな」

 そんな所に来てくれたのは有詩。


「俺は前世じゃ独身のパン職人だったんだぜ。一人仕事にも慣れてるよ…ボッチ耐性もある…と思う」


「それで他の生徒会の連中は何してんだ?」


「会長達は明日の来賓への対応準備、琴美は和楽部の演奏会の準備。他の人達は爽青家の取り巻きだから会長達のお手伝いだよ」

 まともに家事をした事がない人ばかりだから、逆に助かると言えば助かる。


「それでお前は寂しくてへこんでると」


「さっきも言ったろ。一人でパンを作るのには慣れてるって…ただ会長の取り巻きをしてる子達が寂しく思えたんだよ」

 学年は先輩になるが、俺からしたら若い子達扱いになる。


「寂しいって、彼奴等は自分で会長の方に行ったんだろ?」


「学生時代の思い出って無理矢理作るんじゃなくて、後から思い出した時に出来上がるんだよ。教室での馬鹿話、体育で誰かが失敗した事、ダチの恋愛話で盛り上がった時間。その時は何気ないものでも後から思い出すとキラキラした宝物に変わるんだよ。でも先輩達は打算と都合で会長達に着いてる…あれじゃ、どっちも掛け替えの無い宝物にはならえねよ」

 少し遠くを見て、年上の渋さを演出する。


「シゲ…今のかなり親父臭いぞ」


「当たり前だろ、中身は親父そのものなんだからなよ。ほれっ、パンおじさんからのプレゼントだ。そこにあるホットドックをサッカー部への差し入れにしてやる」

 焼きムラや焼成に失敗したドックロールで作ったホットドックを有詩に手渡す。


「ありがとう、パンだおじさん」


「だを着けるな!!さて、俺はパン配りの旅に出るとするか」

 行き先は中等部の生徒会や和楽部等。


「シゲ、リアルジ○ムおじさんになるのか。一人で作ってるのに大変だな」


「仕方いなだろ。朋子からお腹が空いたってメールが来たんだよ。朋子がコンビニに買い出しに行ってナンパされたらどうするんだ!?帰ってくるまで心配でパンが焼けなくる」

 何より男と二人で買い出しなんてなったら…。


「いや、展庭でナンパをする奴は滅多にいないぜ」


「それは朋子の愛らしさを計算に入れてないからだっ!!何より”兄貴のホットドックを食べたいな”ってねだられたら断る訳にいかないだろ」

 シスコンと言われ様が何と言われ様が俺は朋子が可愛くて仕方がないんだっ


「そういや朋子ちゃん達には前世の話をしないのか?」


「微妙だな。家族が突然知赤の他人かも知れないってなったら困惑するだろ?しかも異性となれば同じ家には住みにくくなるしな」

 朋子に茂さんなんて呼ばれたら、確実に泣いてしまう。


「一回DNA鑑定をしてみないか?医学を志す者としては興味がある」


「頼みたい所だけど辞めとくよ。もし、違ったらお袋の浮気騒動に発展しかねないからな」

 俺には蒲田家をどうこうする権利なんてないんだから。


「確かにな。そうだ、今度札幌に遠征に行くから観光案内をしてくれないか?」

 そこは俺の知っている札幌ふるさとと違うかも知れない。

 でも、俺は里帰りの衝動を抑える事が出来ずにいた。


―――――――――――――――


 今日は待ちに待った学園祭。

 茂と二人でお店を開く…それは叶う筈がない夢。

 でも、今日は茂と二人で屋台を切り盛りするんだ。

 限定でおままごとみたいだけど、私の夢が叶う。

 茂が作ったホットドックを私が売る。

 忙しい時間もあると思うし、暇な時間もあるかも知れない。

 でも、それは掛け替えの無い宝物になると思う。

 それは私だけの心の嫁入り道具。


「さあ、茂。張り切って売るわよ」


「気合いが入ってんな…味には自信があるから売り子は頼んだぜ」

 自信に満ちた茂の笑顔に、私の胸が疼く。

 こんなやり取りをしながら二人でパン屋を営めたら、どんなに幸せなんだろう。


「任せておきなさい。内助の功を発揮してあげるわよ」

 それはとっても幸せな時間だった。

 茂のホットドックを食べた人達は、みんな喜んでくれた。

 お客さんの笑顔を見た茂は満ち足りた表情をしている。

 出来る事なら、この笑顔をずっと隣で見ていたい。

 でも、それは叶わない夢。

 だから、私は今日の思い出を心のアルバムに閉まっておく。


―――――――――――――――


 おかしい…絶対におかしい。

 ゲームならヒロインからダンスに誘われてる筈なのに。

 僕は自称神によって星恋の世界に転生してきた。

 男性主人公薬鳴秋として生まれ変わった筈なのに。

 誰にも馬鹿にされないリア柔な人生になる筈だったのに

 でも、ハーレムフラグどころか一人もフラグを建てれていない。

 誘ってくるのはモブ(ブス)だけ。

 

(何でヒロインの殆んどに男がいるんだ。みんな幸せなそうな顔をしやがって!!)

 その汚い手を離せ。

 星恋のヒロインは、全員僕の嫁なんだぞ。

 それもこれも彼奴が悪い。

 姫星琴美と踊るモブ…蒲田茂。

 彼奴が僕のハーレムを邪魔したんだ。


「うわっ、男の嫉妬は醜いわよ」


「菊谷か…ショタと話す事はない」

 菊谷は僕と同じ転生者。

 逆ハーには目もくれず、早乙女とイチャイチャしてる。


「何とでも言いなさい。でも、女としてこれは言わせてもらうわよ。ハーレムなんかを作ろうとしてるあんたにあの笑顔は作れないわよ。姫星さん、イベントの一枚絵より幸せそうな顔をしてるじゃない」

 悔しい、妬ましい、悔しい、妬ましい…。

 僕が主役なのに、あの神を会ったら文句を着けてやる。

次回は薬成幕間、そして札幌が舞台に。

社員旅行を取材旅行にします

ちなみに薬成を転生させたのは占いししょうではありません

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