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放課後イベント

 放課後は学生の時にしか過ごせない特別な時間だと思う。

 放課後特有の開放感とワクワクは大人になると二度と味わえなくなる。

 例えば大人でも味わえる開放感と言えば旅行があるだろう。

 しかし、大人になれば常に現実が付き纏う。

 旅行から帰ってくれば日常が待っている。

 仕事や家事と言う逃げ様がない日常が待っているのだ。

 放課後独特のワクワクは経験を積み重ねる事で、根拠のない期待だった事を知る。

 偶然誰かにスカウトされ自分でも知らなかった才能が開花するなんて事は有り得ないし、偶然知り合った素敵な異姓と恋に落ちるなんて事はない。

 全て夢物語で、現実は非常なまでにシビアだと知るからだ。

 菊谷さん曰く星恋の放課後イベントも甘々な物だったらしい。

 そして奇しくも今は放課後である。

 しかし、俺は何故かシビアな現実に直面していた。


「茂さん、学園祭のホットドックはどうなさいますの?」

 そう、現実は幼馴染ことみみの姿を借りて立ちはだかっている。

 

「えー、その件に関してはただ今鋭意検討中でありまして、近いうちに必ず返答をしたいと思う所存であります」


「ど・こ・の政治家の返答を真似てらっしゃいますの?…答えは明確にお願いします」

 琴美お嬢様、追及の手を緩めず。


「いやー、服案はあるんだけどホットドッグを作れる設備が家になくてさ。ほら、バイトもあって忙しい…」


「そうですか。分かりましたわ」

 琴美はそう言ってニッコリ微笑むと、タブレットコンピューターを弄り始めた。


「分かってくれたか。それじゃ俺はバイトがあるので、失礼します」


「茂さん、急がなくても大丈夫ですわよ。バイト先には財閥の方から連絡をしてお休みを頂ける様にお願いしましたし、ホットドッグを作る準備も整わせましたわ」

 琴美の家は世界的な財閥の姫星財閥。

 パン屋のバイトを休ませたり、ホットドッグを作る道具を準備するのは朝飯前である。


「きったね。横暴だ!!姫の横暴」


「あら、バイト先の店長さんは喜んでお休みを下さったそうですわよ」

 そりゃ、そうだ。

 ただのバイトの休みと姫星財閥の依頼なんて比べるまでもない。


「ちなみにホットドッグはどこで作るんでしょうか?」


「我が家に準備させましたわ。さぁ、茂さん行きますわよ」

 確かに琴美の家なら設備は整っている。

 

(どうする?なんとか延期出来ねえか?そうだっ!!)


「分かりました、それじゃ俺は自転車なんで後からお宅にお伺いしますね」


「それでしたら私を自転車に乗せて下さい…茂、私から逃げれると思ってるの?」

 世間知らずのお嬢様なら上手く誤魔化せたかも知れない。

 しかし、琴美に世間を教えたのは皮肉にも俺だったりする。

 

「ですよねー」

 学生でも社会人でも現実は厳しいらしい。


―――――――――――――――


 琴美の放課後イベントは、主人公がお嬢様ことみの知らない駄菓子屋や定食屋に連れて行きキャッキャッウフフするとの事。


「琴美、どっか寄り道していかないか?」


「そんなの時間が勿体ないわよ。ほら、行くわよ」

 残念ながら琴美は駄菓子屋も定食屋も既に知っている。

 俺が教えたんだから確実に知っている。

 ちなみにゲームの琴美は自転車の二人乗りに怯えて主人公にしがみつき顔を真っ赤にするらしい。


「分かったよ。ほら、乗れよ」

 しかし、現実の琴美は戸惑う事なく自転車の後ろに乗った。


「行けっ茂号。全速前進!!」

  

「俺は馬かっ!?ったく、最初はビビってた癖に」

 琴美の家に自転車で行った時に、二人乗りを教えたのも俺である。


「それなら鞭で叩いてあげようか?」


「いらんっ!!動物には優しくするもんだろっ」

 甘々な空気にはならないが、くだらないやり取りの方が心地よく感じてしまう。


「動物には優しくするよ。でも、茂は人間でしょ…これならどう?」

 琴美はそう言うと体を密着させてきた。


「なっ…お、お前!!」


「茂、顔を真っ赤にして可愛いー」

 確かに放課後イベントは起きた。

 顔を赤くしたのはお嬢様ことみじゃなく俺だったけど。


――――――――――――――


 琴美の両親は多忙で家にいない事の方が多い。

 その代わり大勢の執事さんやメイドさんが勤めている。

 しかし、不思議な事に台所には人っ子一人いなかった。

 ニヤニヤ顔のメイドさん達とは何回もすれ違ったけど。


「さてと、まずはドッグロールを作るか…って何でビデオを撮ってるんだ?」


「メイキング映像よ。早く作りなさい」

 粉を振るい合わせ、生地を捏ねていく。

 生地を寝かせてる間にトマトケチャップを煮詰めていく。


「なにしてんの?」


「ケチャップの濃度を濃くして粘性を強くするんだよ。それとケチャップ羊羮を作る」

 ケチャップ羊羮は戦時中に作られていたらしい。

 ケチャップをゼラチンで硬め物である。

 これを薄く切ってドッグロールに挟んで見ようと思う。

 

――――――――――――――――


その日の琴理の日記


 今日、お姉様がキッチン立ち入り禁止令をだしたそうです。

 メイドさんには茂さんを緊張させない為だと言っていたみたいですが、本当の理由は茂さんとの時間を邪魔されない為だと思います。

 ちなみにお姉様は今、パンを作っている茂さんの映像を繰り返し見ています。

  

北海道に詳しい方がいましたら活動報告に協力をお願いします

ちなみに社員旅行に乗じて川の取材もする予定です

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