姫様の漫画
不味い…ホットドッグの解決策も夜鬼先輩のコスプレも、全く思い付かない。
先ず、ホットドッグは腹案ならある。
しかし、家でドッグロール(ホットドッグ様のパン)を作るのは難しい。
次に夜鬼先輩のコスプレ。
「シゲ、どうするんだ?夜鬼先輩マジだぞ」
「ナンパな遊び人に今更一途に目覚めたって言われてもな。夜鬼のお坊っちゃまの女遊びの所為で振られた男は大勢いるんだぜ」
今更、一途になりたいから女関係を清算したって、言われても自己満足乙としか言い様がない。
「お前、正体をバラした途端に毒舌に磨きがかかったな」
「何より姫の好みが読めないんだよな。ぶっちゃけ、ネタしか思い付かないんだよ」
何故なら姫が好きな漫画が明後日過ぎるんだ。
死神○んよりミラクルぷっ○んを推すとか、デスノ○トより臨機○変マンの方が好きらしい。
「でも、お前しかレヴィアターノ姫の話に着いていける奴はいないんだぜ」
「そりゃな。しかし、なんでヨーロッパのお姫様がゴ○ズイを知ってるんだ?あれってトラウマ製造漫画なんだぞ」
星空にゴン○イを知ってる人はいないだろう。
「お陰で姫様は大喜びしてるよ。夜鬼先輩も一曲踊れたら満足すると思うからなんかないか?」
有詩は同じ将軍の夜鬼先輩に感じる物があるんだろう。
「なあ、姫様は、どこで郭言葉を覚えたか分かるか?」
「いや、それが誰が聞いても答えてくれないんだよ。シゲ、何か分かるか?」
俺の予想だと、それはゲームオリジナルの漫画なんだと思う。
でも、それをまともに答える訳のは不味い。
有詩に”お前はゲームのキャラなんだよ”なんて言える訳がないし。
「少女漫画とかだと全く分からないからな。気は進まないが、菊谷さんに聞いてみるか」
学校用のタブレットコンピューターから菊谷さんにメールを送る。
「直接、聞けば良いんじゃねえのか?」
「直接、話し掛けても良いんだけど、早乙女君が気にするだろ?早乙女君はあまり自分に自信がないみたいだから、疑心暗鬼にさせちゃ可哀想だろ」
普通で考えれば俺は戦力外なんだけど。
「早乙女には優しいんだな」
「おじさんってのは、心が傷だらけなんだよ。真面目な坊やが傷つくのを見るのは忍びなくてな」
かこに振られた時は、何も考えれなくなったんだよな。
「シゲ、お前本当に親父臭くなったな」
「なったんじゃなく、今までは親父が若い振りをしてんだよ。おっ、返事が来た…有詩、俺ら親友だよな。これ、丸投げしたら受け取ってくれるか?」
菊谷さんのメールが表示されたまま、タブレットを有詩に手渡す。
有詩の顔がみるみる青ざめていくのが分かる。
そりゃ、そうだ。
何しろ、メールの内容は
〔サッキュンの水着写メで手を打ってあげる(>.<)y-~〕
なんだから。
「残念ながら俺は菊谷さんに避けられているから無理だ」
イケメン有詩と菊谷さんが絡んでいたら早乙女君はヤキモキするだろう。
「くっ、あっさり打ち返しやがって。お前には、年上を敬うって気持ちがないのか?」
結果、早乙女君をプールデートに誘い出す事で菊谷さんに納得してもらった。
――――――――――――――――
菊谷さんとの待ち合わせ場所は公時にあるカラオケ屋。
しかも、俺が先に入って待機していると言う念の入れ様。
「あー、レヴィアターノ姫の漫画ね。知らなくて当たり前。何しろ、ゲームオリジナルの漫画の上に二十年も前の漫画なんだよ」
タイトルは花魁~追い蘭。
貧しい農村に生まれた少女蘭と太平は両思いの仲。
しかし、蘭は吉原に売られてしまう。
太平は商人となり蘭を見受けるする事を目指す。
幾人もの男と関係を持った負い目から蘭は太平を避ける様になっていく。
しかし、太平はそれでも蘭を一途に追い続けていく。
「って事は、その漫画はどこにあるんですね」
「ゲームの中では絶版扱いになってましたよ。でも、男性主人公の母親が偶然持っていた事からレヴィアターノ姫との仲が進展していくの」
男主人公のおかん、花魁の漫画を子供に見せたら駄目だろ。
「ありがとうございます。将軍二人に頼めばなんとかなるでしょ」
「あっ、そうそう文化祭前に下校イベントがあるから楽しみにしていて下さい…まっ、蒲田くんの場合は姫星さんで決定でしょうね」
琴美か…ホットドッグどうしよう。
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恐るべし、将軍の財力。
例の漫画は、二人に話をしたその日の内に全巻が手に入った。
そして恐るべし、少女漫画。
内容が過激過ぎる!!
「すげな、こりゃ女の方が先に大人になる訳だよ」
男が必殺技で盛り上がってる時に、女はドロドロの愛憎劇を読んでるだもん。
「それじゃ、夜鬼先輩には太平のコスプレをしてもらうのか?」
「いや、先輩にこの漫画を熟読してもらって気に入ったキャラのコスプレをしてもらう。姫はこの漫画に思い入れがあるみたいだから、下手は打てない」
第一、遊び人の坊ちゃまが農村生まれの一途な商人になるのは違和感が有りすぎる。
「心配しなくても太平は選ばねえよ。二人共、ありがとな」
照れながらもお礼を言ってくれた夜鬼先輩の顔は妙に幼く見えた。
まるで初めて恋をした少年の様に澄んだ顔をしていた。
…もう、俺はあんな澄んだ顔を出来ないと思う。
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