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私は貴方が嫌いです

 琴美から電話が掛かってきて、路亀神社の夏祭りに有詩達も参加する事を伝えてきた。

 冷静になって考えてみると、琴美とダブルデートをした事が、有詩にバレたら気不味(きまず)いから俺的にはありがたい展開だ。

 展開だ、展開なんだけど…


「なんで夜鬼先輩や空さんまで参加するんだ?確実に文朗が埋もれちまうじゃないか」

 あの人達と並んだら、俺や文朗は背景モブになってしまう。


「夜鬼先輩は勝手にナンパをするだろうし、海会長だけに声を掛けて空さんに声を掛けない訳にいかないでしょ?山本君が海会長を好きだって、(あんた)から聞いたから声を掛けたのよ」

 確かに山本は海会長の事が好きだ、好きだけど。


「いや、山本と海会長じゃ、山本が一流大学の政治学部を卒業して尚且つ金メダルも取る様なハイスペック柔道家にならなきゃ可能性がないぞ」

 それでも爽青家一族の客寄せパンダにされる可能性が高い。

 その前に山本が海会長に好かれる可能性は半端じゃなく低いと思う。


「茂は結果(ゴール)ばかり考え過ぎなの。海会長と付き合えなくても、山本君にとって夏祭りは良い思い出になるし、勉強や柔道を頑張るエネルギーなれば良いじゃない。何よりまだ話もしていない二人の事を騒いでも仕方ないでしょ?」

 確かに一緒に夏祭りに行ったからと行って、空さんがいるから山本が海会長と話せる機会は少ないだろう。


「まーな、山本は俺と佐藤と回るだろうし」

 有詩と回るのが一番気楽なんだけど白鳥さんが許してくれないと思う。

 なぜか知らないが白鳥さんは俺の事をあからさまに嫌っているし。


「はっ?馬鹿言わないで。佐藤君は蘭と一緒に回るの。そして茂は盛り上げ役として同行してね」


「なんで佐藤と来部さんが一緒に回るんだよ?言っておくけど、来部と親しくないから盛り上げは無理だぞ」

 しかも、突っ込み役の山本がいないから、ボケても寒くなってしまう。


「これは秘密なんだけど、蘭と佐藤君は幼馴染みなのよ。今は佐藤君が蘭の立場を考えて距離を置いてるの。幼馴染みの為に勉強を頑張ってきたのに、一歩引いて見守るなんて素敵よね…どこかの誰かさんと大違い」

 

(それで佐藤は姫星に入ったのか)

 外様で姫星学園に入るには秀でた一芸が必要になる。

 しかし、姫星学園は外様の生徒にとってお世辞にも過ごしやすい学校とは言えない。

 山本は根性の塊の様な性格をしているし、姫星はスポーツ設備が充実しているから疑問には思わなかった。

 でも大人しい佐藤が姫星にいるのは不思議だった。

 進学校は公時にもあるし、成績自慢のお坊っちゃまに潰された外様もいるらしい。


「彼奴も随分と報われない選択を選んだな…下手すりゃ晋代や親藩に潰されちまうじゃねか」

 最も、そんな事をするならパン屋のおじさんが黙ってないけどね。


「だから蘭も学校で佐藤君と話をしないの。佐藤君とは幼稚園からの付き合いみたいだから淋しがってるのよ」

 なんでも佐藤の両親が展庭の会社に勤めているらしく、仕事帰りに寄れる幼稚園を選んだそうだ。

 そこで佐藤は来部さんと知り合ったらしい。

 クラスこそ違っても、小学から同じ学校に通っていたそうだ。

 

「ふーん、でもそれなら二人っきりにしてやった方が良いんじゃないか?」


「そこはそれよ。久しぶりでも会話が盛り上がらなきゃ意味ないでしょ。佐藤君も茂がいたら緊張しないだろうし」

 つまり、突っ込みは琴美がしてくれると。


「文朗の事もあるし、最初は大人数で回った方が良いかもな。どうせ、途中でバラけるだろうし」

 俺は盆踊りには興味はないけど、踊りたい人もいるだろうし。


「そうね、花火の時に二人っきりにしてあげれば良いんじゃない。茂は花火を一緒に見る相手がいないだろうから、私が付き合って上げるから安心しなさい」

 俺にだって一緒に花火を見る相手くらい…有詩は白鳥さんガードがあるから無理だ。

 山本と二人…花火が綺麗な程、ヘコむと思う。


「琴美お嬢様、お願いします」


「任せなさい…よっしゃー!!茂、楽しむわよ」

 うん、嫌がられないで良かった。


――――――――――――


 それは異様な光景だった。

 何しろ、公時駅の前に軽バス位の大きさがある馬車が停まっている。

 そしてそれを牽くのは巨大な六本脚の白馬。

 はっきり言って幻覚とは言われた方が安心出来たと思う。

 何より俺を不安にさせるのは俺以外誰も不思議に思っていない事だ。


「兄貴、兄貴。馬車だ、懐かしいね。昔、ポニー広場で乗ったよね」

 どこで夏祭りの事を嗅ぎ付けたのか朋子も参加する事になった。

 キラキラした目で見られたら、兄ちゃんは駄目って言えませんでした。

 真っ赤な金魚が描かれた水色の浴衣を着て朋子がはしゃぎまくっている。

 (ともこ)よ、あれはどう見てもポニーなんかじゃないぞ。

 それと折角可愛い浴衣を着てるんだから、余りはしゃぐんじゃありません。


「いや、朋子。あれはどう見ても…」「蒲田君、いらっしゃいませ。それと他の人には普通の馬や馬車に見えてるんですよ。下手に騒いだらまた転生させちゃいますよ」

 笑いながら話し掛けて来たのは例の占い師。


「兄貴、早く乗ろうよー。綿飴とたこ焼き食べたいな」


「朋子!!浴衣を着てるんだから大股で歩くんじゃない、足が見えてんだって」

 俺の可愛い妹を、エロい目で見せる訳にはいかない。


「シゲ、相変わらずのシスコンっぷりだな」

 俺に声を掛けてきたのは真っ白な浴衣を着た有詩。

 外人顔なのに浴衣が似合うなんて反則だと思う。


「当たり前だ!!朋子くらいに可愛いと盗撮でもされたら直ぐにネットで広がるんだぞ。それを防ぐのは兄貴の役目!!」


「本当にお前は朋子ちゃんとパンが絡むと暑苦しくなるよな。朋子ちゃんに彼氏が出来たらどうするんだ?」

 くっ、痛い者を見る様な目で見やがって。

 

「俺が納得する男なら祝福する。だが、朋子を泣かせる様な奴なら徹底的に潰す」


「有詩様、馬鹿が移ります…早く乗って下さい」

 俺を馬鹿扱いした白鳥さんが有詩を強引に馬車に押し込める。

 そしてくるりと振り返りと冷たい目で睨み付けてきた。


「私は貴方が嫌いです。有詩様の気持ちも琴美お嬢様の気持ちも分かってる癖にはっきりしないで…好きな人には好いてもらえる幸せを掴もうとしないなんて贅沢過ぎます」

 白鳥さんは有詩を好き、有詩は琴美を好き…琴美は誰を好きで誰と一緒になれば幸せになるんだろうか?


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