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幼馴染み1姫星琴美はなんちゃってお嬢様?

一日でお気に入りが70を越えました、感謝です。

 姉さんと早紀さんが買い物に出掛けたので、家には俺一人になった。

 前世で住んでいたアパートの部屋と変わらない広さの部屋にあるのは、テレビとベッド、そして勉強机と本棚ぐらい。

 何とも寂しい部屋だけど、コルクボードに張られた写真だけが華やいでいる。

 主に写っているのは、姉さんに妹の朋子、早紀さんと有詩、琴美と琴美の妹の琴理ちゃん、そして俺。

(うん、俺が写ると、グッと華やぎが減る…いつまで七人で笑い合えるんだろうな)

 前世の経験でいくと高校を卒業したら、人間関係が一気に変わる。

 仕事をすると、どうしても会社中心の人間関係が構築されていく。

 俺は高校を卒業して直ぐにグラン・シャリオで働いた。

 一流のパン職人になると高い志を建てたは良いけど、そんな簡単になれる訳がない。

 そんな事をしていたら幼馴染みだった彼女とも別れたし、合コンで知り合った彼女はお金持ちのお坊っちゃまにとられた。

 俺が必死こいて買った指輪は捨てられ、お高い指輪に場所を奪われているのを見た時は唖然としたのを覚えている。

(あの時は田所さんの前でマジ泣きしたんだよな…さて、過去より今を大事にしなきゃな)

 ベッドに身を沈めて、今後の事を考えていていく。 

 結果、有詩と琴美のケンカは放っておく事にした。

 犬も喰わないケンカに付き合う程、俺は暇人じゃない。

 正確にはケンカじゃなく有詩が一人でいじけて一人で拗ねてるだけなんだし。 

 星空学院にどんなイケメンがいるのか分からないけど、琴美と釣り合う男は滅多にいないと思う。

 多分、俺がただの高校一年生なら琴美の事を好きになって無謀にも告っていたかも知れない。

 それ位に姫星琴美と言う少女は魅力的だ。

 しかし、実年齢は高校一年生でも中身は社会人十年選手。

 愛があれば身分なんて関係ない…そんな事は学生時代にしか通用しない事をよく知っている。

 正確に言えば高嶺の(ことみ)を摘めるのは、同じく高嶺に咲いている(ゆうじ)か高嶺に登れる能力を持った人間(おとこ)だけだ。

 俺が高嶺の(ことみ)を摘めたとしても直ぐに足元をすくわれて崖下に叩き落とされるのがオチだろう。

 もし、結婚なんてしたら最悪だ。

 琴美と結婚する、それは姫星財閥の一員になるという事。 

 そうしたら、それ相応の結果を求められる。

 それが出来なきゃお飾り閑職にされて琴美に捨てられ…


(また琴美を諦める理由を考えている…きっと有詩と琴美が付き合ったら嬉しいけど悔しいんだろうな)

 そして、俺は見た目や家柄を理由にして自分を慰めていると思う。

 蒲田茂、転生しても進歩なしと…。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 いつの間にかベッドで寝ていた俺を起こしたのは、チャイムの連打と鳴り止まないスマホのコール音。

 そしてスマホの画面には琴美の表示。 

(不味いな、琴美の限界が近づいている…何が深窓の令嬢だ) 

 慌てて玄関の鍵を開けると、世間様では深窓の令嬢と言われているお方が立っていた…仁王立ちで。

 純白のセーラー服を着て仁王立ちしている少女は俺の顔を見るなり吠え出した。


「茂、遅いぞ。遅すぎる!!私が飢え死にしたらどうするつもりだったの!?」


「いや、俺は一食抜いた位で飢え死にした奴は聞いた事がないぞ…って、俺の話を聞け。なに勝手に、人の家に上がってるんだよ?お前は姫星財閥のお嬢様だろ?」

 琴美は俺の脇を長い黒髪をなびかせながら、すり抜けると淑やかな表情で笑顔を浮かべる。


「あら?茂さんは勝手に知ったる他人の家と言う言葉をご存じありませんの?」


「言葉だけお嬢様?って話を聞け?」


「やーだよ、茂の言葉じゃお腹は膨れないもん」

 琴美はそう言って振り替えるなり、俺にベッと舌をつきだしてきた。


(ちくしょー、可愛いじゃねーか)

 また新しい言い訳が増えるかもれない。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺は今は台所に立っている。

 そして例のお嬢様はと言うと


「チャーハン、チャーハン、納豆チャーハン♪この前はチーズ納豆、その前はシラス納豆♪今日の納豆チャーハンはなーにかな?」

 勝手知ったる他人の食器棚からスープンを取り出して、リズムを刻みながら自作の歌を歌っている。


「琴美、お前学校で飯食べなかったのか?」


「食べたよ、クロワッサンを二個。私なりに外聞を気にしてるんだよ。友達から、それだから琴美様はお太りにならないんですね、って言われちゃった」

 当然、クロワッサン二個じゃ腹が膨れる訳がなく家に来たと。


「あんなバターをたっぷり使用したパンを食べてか?ほい、カリカリ梅納豆チャーハン」


「待ってました!!いっただっきまーす」

 有詩の家もそうだが、琴美の両親は忙しいらしく家族で食事をする事が希らしい。

 それで賑かな食事に憧れていた琴美は俺の家で飯を食べる様になった。


「しっかし、納豆嫌いだったとは思えない食べっぷりだな」


「そこは茂の腕じゃん。うん、カリカリ梅の食感と酸味が後味をすっきりさせて納豆チャーハンの魅力を引き出している」

 そう言って納豆チャーハンをがっつく琴美。

 深窓の令嬢を納豆チャーハンマニアに変えたのは俺なのかもしれない。

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