幕間悪いたずらっ子来部蘭
今日、僕達コメットエンジェルが呼ばれたのは姫星財閥のパーティー。
これが洒落にならない位に豪華絢爛。
日本なのにここだけがヨーロッパの舞踏会みたくなっている。
「ねえ私達って、かなり場違いじゃない」
メンバーの癒し系担当、波恋蒲公英はガチガチに緊張をしていた。
「蒲公英、蘭は私達と違って小さい頃からパーティーに出てるんだよ。緊張する訳ないでしょ」
百合に突っ込みを入れたのはセクシー担当の愛村桜。
「確かにパーティーに出た事はあるけど、こんな所で歌うのは僕も初めてなの。普通に緊張するって」
それどころか昔からの顔見知りが大勢いるから緊張してしまう。
「あっ、姫星のお嬢様だよ。綺麗だよね。まるで絵本のお姫様みたい」
溜め息を洩らしたのは演技派の宝来椿。
琴美は純白のドレスに身を包みパーティーの参加者と談笑をしている。
「あのドレスはオートクチュールじゃん!!高そっ!!でもバレッタは安めの市販品だよね。なんであんな安いの着けるかなー。勿体ない」
愚痴ったのは、オシャレ大好きな西水杏。
「杏、琴美にそれ言わない方が良いよ。確実に不機嫌になるから」
何しろあのバレッタは蒲田君が初めてのアルバイト代で琴美にプレゼントした宝物。
普段は宝石箱の中に大切に閉まっているらしい。
「マジ?でも姫星のお嬢様ってあんまり表情が変わらないよね。なんかお人形みたい」
「あー、今は猫を被ってるの。そうだ!!後から面白いものを見せたげる」
僕は琴美を一瞬で素に戻すマジックアイテムを持っているんだから。
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「コメットエンジェルの皆様、今日は素敵な歌をありがとうございました。お陰でお客様にも喜んで頂けましたわ」
うん、我が親友ながら見事な化けっぷりだ。
「いえ、こちらこそ呼んで頂きありがとうございます。楽しんで頂けたならアイドル冥利に突きます」
まだマジックアイテムを繰り出すのは早い。
琴美を弄りまくってから出してやる。
「お食事を用意しておりますので、ゆっくり召し上がっていって下さい」
にこやかに微笑みながら頭を下げる琴美。
洗練された仕草にメンバーのみんなが溜め息を洩らす。
「それは楽しみですわ。姫星さん、メロンパンはありますか?」
「メロンパン?蘭、パーティーにそんなのある訳ないでしょ。恥ずかしい」
桜が慌てた様に突っ込んできた。
もちろん、メロンパンがない事くらい僕も分かっている。
「この間の夏合宿で焼き立てのメロンパンを食べたら美味しくてはまっちゃったんだよね」
メロンパンは礼緒ちゃんのリクエストで蒲田君が作ったんだよね。
「あー、私達と同い年の男の子が焼いてくれたんだよね。確かに興味あるよね。今度お願い出来ないかな?」
蒲公英がお願いと言った瞬間に琴美の顔が曇って額には縦皺が刻まれた。
「今度聞いてみようか?それに焼いたパンに好きな具を挟むのも良かったな。ソーセージとかキャベツを自分で選んで挟むの、面白かったな」
普段、料理をしない琴理ちゃんや朋子ちゃんは大はしゃぎしていた。
「へー、面白そう。今度の打ち上げに来てもらえないかな?」
「ら…来部さん、蒲田さんはアルバイトが忙しいからご無理を言っては駄目ですよ」
今の琴美の言葉を訳すと”茂を他の女と遊ばせるな”になる。
「あっ、そう言えば蒲田君がパンを焼いてる写真あるんだよね。見る?」
「ちょっ…蘭、いつの間にそんな写真撮ったの?早く見せて!!」
琴美はマジックアイテムパンを作る蒲田君を出さないでも正体を現した。
コロコロと表情を変えるのが本当の姫星琴美。
「いやー、パンを作っている時の蒲田君って良い顔してるよね。今度だす応援ソングのPVに使えるかもね」
「…来部さん…私のお部屋でゆっくりお話しましょうか…」
一転して無表情になる琴美…僕はやり過ぎたかもしれない。
今の琴美に逆らえる訳もなく僕は部屋に連行された。
「琴美、ちゃんと焼き増ししてあげるから、落ち着いて」
「メモリーカード事寄越しなさい!!」
その後、僕の渡したマジックアイテムは宝石箱に仕舞われたらしい。
素直じゃない親友を持つと苦労をするね。
コメットエンジェルの名前は彗星関連と花から来ています
おじさんが女の子視点を書くのは無理がある




