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酒と涙と男と恋愛ゲーム?前編

 暑い、ひたすら暑い。 

 真夏の太陽が容赦なく照り付け、一歩歩く度に不快な汗が吹き出てくる。

 普段なら家から出ずに暑さをしのいでいると思う。

 しかし、俺にはこの暑さに歯向かってでも行きたい所がある。  

 それは公時市内のデパートで開かれている大北海道展。

 いつもは道民に馴染みが薄いお土産物が並んでいたけれども、今年のラインナップは俺の郷愁をそそりまくった。

 その上、俺を除いた家族は父さんの実家に里帰り中。

 つまり北海道グルメで酒を飲むまたとないチャンスなのだ。


(この暑さもビールを美味しくする最高のスパイスなんだ!!俺は負けない、今日はビールを飲むまで一滴の水分も補給しない)

 カラッカラに乾いた喉にキンキンに冷えたビールを流し込む。

 つまみはジンギスカンをメインにして、ジャガバターに塩辛ジャガ、ザンギも捨てがたい。

 本当はチャンチャン焼きが食べたいんだけれども、一人チャンチャンは辛すぎる。

 北海道展に来た俺は目当ての品を次々に購入していく。


(カ、カツ○ンがあるじゃないか?こっちには焼きそ○弁当が!!バターサンド、これも買いだ)

 奮発して海鮮類も購入。

 道産のイカやホタテは味が違うんだよな。

 ホクホク顔でデパートを出ると、顔見知りと会った。


「あれ?蒲田君?一人で買い物なんて珍しいね」

 そこにいたのは菊谷さん、真っ白なワンピースと麦わら帽子が涼しげな印象を与える。

 

「ここのデパートで北海道展をやっていたから来たんですよ。懐かしくて色々と買ってしまいました」


「懐かしくて?蒲田君は北海道に住んだ事があるんですか?もしかして前世の話だったりします」

 したり顔でにやつく菊谷さん。

 見た目は避暑地のお嬢様なのに、警察みたいな誘導尋問をしてきた。


「まっ、分かっているみたいだし言いますよ。確かに俺には前世の記憶があります。こことは微妙に違う日本の記憶がね」


「やっぱり、同じ転生仲間だから教えてあげるね。ここは恋愛ゲームの世界なんだよ」

 その言葉を聞いた途端、雑踏の音が掻き消えて頭の中が真っ白になった。


―――――――――――――――


 内容が内容だけに俺と菊谷さんはカラオケで話をする事ににした。


「おかしいと思わなかった?同じ日本なのに特定の名前だけが違うでしょ。あれは著作権の関係なんだよ」

 確かに東京ティターンズなんて漫画とき出てきそうな名前だ。


「でもカ○ゲンはそのまんま売ってましたよ」


「それはその商品が星恋に出てこないからだよ。あっ、星恋は星空の恋人達の略ね。知ってるでしょ、星空の恋人達、CMにも流れていたし」

 言われてみれば前世と名前が変わっていない商品が結構ある。


「俺は前世じゃ三十才のおっさんだったんですよ。恋愛ゲームなんてやる訳ないでしょ」


「そうなんだ。君が変に落ち着いていたりフラグを知らないのも納得出来た。でも覚えておいて損はないよ。星空にいる将軍と姫は星恋の攻略キャラなんだから」

 将軍と姫…?


「それじゃ有詩や琴美がゲームのキャラだって言うのか!?彼奴等はキャラなんかじゃなく人間だぞ」


「あの二人は星恋のメイン攻略キャラなんだけど、私の知っているキャラとは違うんだよね。七竹は女子以外とは絡みたがらないナルシストな王子様だったし、姫星琴美は主人公を一途に待ち続ける大和撫子だったんだけどね」

 それはおかしい…。


「有詩は男のダチが方が多いし、琴美はなんちゃって大和撫子だぞ」


「その二人の共通点は何か分かる?それは蒲田茂、君だよ。君と知り合った事で七竹も姫星琴美も本来とは違うキャラになったんだと思うな」

 確かに二人とも俺と知り合ってから性格が変わったらしい。

 

「マジかよ…星恋ってどんなゲームなんだ?」


 菊谷さんの話では星恋は小さい頃に別れた幼馴染みが高校で再会する物語だそうだ。

 ハーレムも逆ハーレムも可能で、結構な人気があり二次創作を大量に作られたらしい。


「ちなみに転校してくるのは一年生の七夕なんだよね。男性主人公はともかく見たこともないキャラも転校してきたからびっくりしたよ」

 確かに俺が恋愛ゲームに出てきたら違和感ありまくりだよな。


「それじゃ薬鳴も転生した人間なのか?」


「多分ね、必死にハーレムフラグを建てようとしたし。まっ、姫星琴美や七竹早紀の攻略は諦めたみたいけど」


「琴美をハーレム?無理、無理、琴美には従順さの欠片もないんだぞ」

 自分が納得しないと梃子でも動かなくなる時もあるんだし。


「あら?本来の姫星琴美ならハーレムを容認するんだよ。男に従順なお人形お嬢様が姫星琴美、男に都合の良いキャラだから女子人気は低かったわよ」


「都合の良いキャラ?琴美は人の都合なんてお構い無しだぞ」

 バイトの休みを報告しないと怒るし。


「だから貴方が変えたのよ。本当、誰が何の目的で貴方を転生させたんだろうね」

 俺を転生させたのは占い師。

 本当にこの世界が恋愛ゲームの世界だって言うんなら、俺はどうしたら良いんだろうか?


――――――――――――――


 結局、俺達は一曲も歌わずにカラオケを後にした。

 菊谷さんは早乙女君との偶然に会うフラグを建てに行くらしい。

 俺は暑さも忘れて歩き続けた。

 確かにこの世界はおかしい。

 特に展庭市、あんな美男美女で溢れ返っている町があったらマスコミが放っておかないだろうし、邪な目的で来る奴も出てくると思う。


(有詩にしろ琴美にしろ、並みのアイドルより顔が整っている。普通に考えたら芸能界が放っておく訳がないよな)

 だけど、そんな話は聞いた事すらない。

 でもここが恋愛ゲームの世界で、日本に似せて作られた世界だって言うんなら納得が出来る。


(琴美は女には人気がなかったって事は男には人気があったんだよな…それじゃ琴美が色々された漫画あるってのか!?決めたっ!!今日はとことん飲むっ)

 俺は胸のモヤモヤを消す為に、酒を飲みまくる事を決めた。

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