表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/64

川の向こうは?

説明回になります

 俺の家からは三つの川が見える。

 まずは家の脇を流れる雨野(うの)川。

 そして雨野川は二つの支流に別れていく。

 東に分かれた川を牛引(うしびき)川と言い、西側に分かれた川を機織(はたおり)川と言う。

 そして二つの川は東西に大きく分かれて行、雨野平野を作り出す。

 雨野平野には展庭(てにわ)市という町がある。

 何故かこの展庭市には、才色兼備な完璧超人さん達が大勢住んでいてる。

 そう、川の向こうはまるで別世界なのだ。


(まあ、俺にしてみれば、この世界自体が別世界なんだけどな)

 俺にはいわゆる前世の記憶ってやつがある。

 前世の俺は日本人で名前は蒲田茂、今の俺も日本人で名前は蒲田茂。

 前世の俺は見た目は外角ギリギリのフツメンで、今の俺も外角ギリギリのフツメン。

 早い話がパン職人の蒲田茂が、そのまま転生してきて二回目の高校一年生をしている。

 ただ、この世界は俺の知っている世界と微妙にずれていた。

 プロ野球のチームが東京ティターンズや阪天レオポンズだったり、名前も聞いた事がない俳優が大御所と言われ、見た事もないタレントがベテランと言われている。

 でも常識や歴史は俺の知っている日本とあまり変わらない。

 あまりと言うのは主に川の向こうの事だ。

 俺の家からは、大きな家…お屋敷が二つ見える。

 そして何の因果か、その屋敷には俺と同い年の少年と少女が住んでいる。

 いわゆる幼馴染みという奴だ。

 東側、牛引川寄りに洋風な豪邸に住んでいるのが七竹・アークイラ・有詩(ゆうじ)

 七竹家は代々医者の家系で有詩の父親は七竹総合病院の院長。

 母親のジュリアーナさんはイタリア人で元モデルだそうだ。

 だから有詩は金髪碧眼のイケメン。

 西側、機織川寄りのでかい日本家屋に住んでいるのが姫星琴美。

 姫星家は昔からの豪商で、琴美の父親は姫星財閥の当主。

 琴美の母親はお琴の家元だそうだ。

 琴美は見た目だけはお淑やかな大和撫子。

 いや、正確には俺と有詩の前以外では大和撫子の皮を被っている長い黒髪を持つ美少女。

 二人とも小中と私立の学校に通っていたから、同じ学校に行った事はないけれども仲良くやれている。

 まあ、俺の中身は良い大人だから親戚の子供に接する感じで、二人の面倒を見てきたのが一番の要因なんだけれど。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺が前世の記憶を取り戻したのは小学三年の工場見学の時。

 見学に行ったパン工場でパン独特の発酵臭を嗅いだ瞬間に全てを思い出した。

 臭いは脳に直接インプットされていると言うが、発酵臭で記憶を取り戻すなんてなんか社畜っぽい感じがする。

 記憶を取り戻したからといって、大きな行動には移さなかった。

 一時的には天才児として扱われるかも知れないが、俺の知識だと高校生にもなれば、ただの人になってしまうんだし。  

 その代わり、家の手伝いは積極的にする様になった。

 特に料理は両親が共働きと言う事もあり、いまや蒲田家の主夫。

 自分の弁当の他に、両親や姉妹の弁当も作っている。

 前世の記憶がある普通じゃない俺の罪滅ぼしでもあるんだけど。


「茂ー、いるんでしょ?早紀が話がるんだって」

 扉越しに声を掛けてきたのは一才年上の姉、蒲田小夏。

 当たり前だが俺とは似ていないボーイッシュな美少女。


「早紀さんが?良いよ」

 七竹・アークイラ・早紀。

 有詩の姉で金髪ナイスバディな美少女、しかも癒し系。

 見るだけでも癒されるハイスペックなお方。


「シゲちゃん、ごめんね。せっかくアルバイトがお休みの日なのに」

 ちなみに俺のバイト先はパン屋、まだ生地には触らせてもらえないが仕事を見ながら感覚を取り戻していくつもりだ。


「早紀、気にしないで良いよ。バイトがない日は寝てるんだから、少しは有詩君を見習ってデートでもすれば良いのにさ」

 当たり前だが有詩はモテる…そして当たり前だが俺はモテない。

 折角、転生したのに特典がないどころか、顔もそのまんまってどうよ。


「俺は一日も早くパン職人になりたいんだよ…第一、デートに誘える相手がいない!!」

 

「情けない事を堂々と言わないの!!もう五月になるんだよ?高校に入学して一ヶ月も絶てば、誰か可愛い()が見つかるでしょ?ラインでもアドレスでも交換しなさいよ」

 いや、まだ野郎としかラインを交換してないんだけど。


「無理です。それに今は早紀さんの話が先約だろ?早紀さん、話は有詩の事だよね?」


「うん、琴美ちゃんとケンカしたみたいなんだけれどもシゲちゃんなんか聞いてる?」

 有詩は昔から琴美の事が好きだ…俺も琴美は可愛いと思うが有詩には敵わないからとっくの昔に諦めた。


「あー、星空学院ってイケメンが多いじゃないですか?琴美に声を掛けてくるイケメンが多いらしくて有詩は不機嫌なんすよ」

 いきなり強力なライバルが増えた上に、琴美がそいつらを邪険に扱わないから有詩は不機嫌になってケンカしたらしい。


「そんな事で?もう子供じゃないんだから」

 早紀さんは若干飽きれ気味だ。


「有詩位の年の時は身近な存在に対して素直になれないもんなんですよ」


「あんたは精神的に老けすぎだけどね。星空は可愛い娘も沢山いるから茂も行けば良かったじゃない」


「金はどうすんだよ?星空は私立だから高いだろ?それにあんな真っ赤なブレザーを俺が着たら猿回しの猿にしか…見えない…よ」

 前に似たような事を言った気がする。

感想お待ちしています

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ