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幕間来部蘭の恋愛相談コーナー

短めです

 その葉書を見つけたのはラジオ局での打ち合わせの時。


「蘭ちゃん、この中から来週の恋愛相談コーナーに使うのを決めるから意見を聞かせてもらえる?」

 ディレクターが机の上に置いてくれた葉書をチェックしていると面白いのを見つけた。


 コメットエンジェルのみんなこんばんは。

 私、最近気になる人が出来たんです。

 私がバイトしているファミレスの隣にパン屋さんがあるんですけど、そこでバイトしている男の子が気になるんです。

 顔はお世辞にも格好よくないし、普段はだるそーな顔をしてるんですけどパン屋さんの制服に着替えた途端、顔がキリッとして別人みたくなるんです。

 ギャップ萌えってヤツなんでしょうか?

 名前も分からない彼と仲良くなるにはどうしたら良いでしょうか?

 私は公時市にあるトコスでバイトをしていて彼はグランってパン屋さんにいます。


 公時市のグラン、行った事はないけどよく知っている。

 正確には嫌になる位によく聞かされているんだよね。

 私にグランの事を話してくるのは琴美。

 何しろグランでは蒲田君がバイトをしているのだ。

 だからパン屋さんの話でも内容はどのパンが美味しとかじゃない。

 茂がバイトを始めたから構ってくれる時間が減ったとか、パンの話をしている時の茂は良い顔をしているとかの甘ったるい惚気話。

 前から琴美が話す内容の五割は蒲田君絡みだったけれども、高校生になってからは平均七割は越している。

 それでいて琴美は蒲田君と付き合うとうしないし、告ろうともしない。


(琴美、うかうかしていたら蒲田君を盗られちゃうぞ)

 琴美はこの葉書を読んだら焦るかな?

 それとも不安になって泣くかな?

 今までさんざん惚気を聞かされてきたんだ。

 これ位の悪戯は許されると思う。


―――――――――――――――

 私は仕事が終わると、大切な話があると言って琴美の家にお邪魔した。


「私の番組に、こんな葉書が届いたんだよね」 

 葉書をコピーした紙を琴美に手渡す。

 さあ、焦るか、それとも泣くかな?


「こいつ何様っ!!茂の顔が格好よくない?目が腐ってんじゃないの?だるそうな顔?あれは癒されるのっ」

 予想外に怒った琴美は紙をビリビリに破いた。


「おーい、何でそんなに怒るの?」


「だって悔しいじゃない!!この馬鹿女は私が知らない茂を知ってるんだよ!!」

 …そこかい!!


「そんなに好きなら付き合えば良いじゃん」


「無理だよ…だって私は姫星の跡継ぎなんだよ。好きだからって簡単に付き合えないよ」

 さっきまで怒っていた琴美が一気に落ち込みだした。


「別に結婚するんじゃないんだから」


「それでも不味いのっ!!周りにバレたら茂が狙われるかも知れないんだよ?私の従姉妹で彼氏が襲われた人もいたんだから!!」

 確かにお嬢様で美少女な琴美と付き合ったら嫉妬されまくりだろう。


「それなら諦めて他の男と付き合ってみれば?例えば七竹君とか」

 七竹君は琴美の事を好きなのは公然の秘密だ。


「有詩?有詩が本当に好きなのは白鳥さんだよ。まっ、有詩自身も気づいてないけどね」


「それじゃ蒲田君は諦めるの?」

 蒲田君と付き合えないなら琴美はどうしたいんだろう。


「学生の時は私が茂を独占する。他の誰にも茂の学生時代は渡さない。ワガママなのは分かってる…分かってるけど、私は結婚相手は選べないから。せめて心の中に宝物(おもいで)が欲しいの」


「蒲田君に頑張ってもらえば良いじゃない」

 お飾りになるかも知れないけど、蒲田君なら当主になった琴美を支えてくれると思う。


「茂は昔からパン屋になるのが夢なんだ。その為に色んな努力もしてるんだよ…私が普通の女の子だったら、茂と一緒にパン屋をやれたんだけどな…」

 琴美の事を羨ましいって話す女の子は多い。

 でも琴美は普通の女の子を羨ましく思っている。

 大好きな男の子と結ばれる、そんな平凡な夢も叶えられないから。



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