合宿会議
新年最初の更新です
金持ちの考える事は良く分からん。
海会長曰く
「私達は執事やメイドに何かをしてもらう事が当たり前の生活を送っています。この合宿ではみんなに一般庶民の生活を体験してもらい、絆を強固な物にしたいと思います」
当然、一般庶民の俺と朋子は呆然となった。
更に驚いたのは、海会長の言葉に驚いていないのが一般庶民と縁が深い七竹姉弟と姫星姉妹だけ。
早乙女君に至っては目が点になっているし、伊庭先輩も表情は変えていないが冷や汗を掻いている。
(兄貴、兄貴。今のマジ?それともボケ?)
朋子が場の空気を読んで小声で話し掛けてきた。
(多分、マジなんだろ?なんつーか浮世離れしてんな)
将軍や姫の感覚では庶民の生活はグリーン・ツーリズム(農家体験)に近いのかもしれない。
「会長、執事とメイドは何人まで連れて行って良いんだ?」
夜鬼先輩が真剣な表情で質問をした。
その態度を見る限り、夜鬼先輩は皮肉を言ってはいないらしい…先輩マジですか?
「一人も連れて来ては駄目です。ただし、安全を考慮して合宿中は爽青家専属のSPに二十四時間体制で警護をさせます」
合宿所の名前を言った時と同じく海会長がどや顔で宣言すると、室内が一気にざわつき始めた。
でも、ざわつき方にも色々ある様で
「兄貴、専属SPだって。ドラマみたいだね。二十四時間体制なら何交代なのかな」
庶民代表の朋子は専属SPの存在に驚き
「メイドさんや爺やがいない生活なんて無理だよ」
早乙女君はうつむきながら不安そうに呟く。
メイド喫茶以外にメイドさんがいた事にも驚いたが、爺やもマジで存在したんだ。
いや、早乙女君以外の生徒も口々に不安を訴えている。
騒いでないのは朋子とリアルメイド白鳥さんがいる七竹姉弟…そして姫星姉妹。
「お静かに、期間は二泊三日。グループに分かれて食料の買い出しから行ってもらいます」
参加者は
生徒会 俺、琴美、爽青姉弟、他五名の計九名
中学生徒会 朋子、琴理ちゃん、星空さん 計三名
各委員会代表 計八名
総勢二十名
海会長の言葉が終わると同時にみんなグループを作り始めた。
人気なのは海会長と空副会長のグループ、ここは主に生徒会のメンバーが集まっている。
次はメイドの白鳥さんがいる七竹姉弟グループ、ここには伊庭先輩や夜鬼先輩、早乙女君が参加していた。
そして
「蘭さん、私達と組みませんか?食事当番は茂さんがしてくれますから」
「琴理ちゃん、礼緒ちゃん一緒にやろ。僕の兄貴がご飯を作ってくれるから」
琴美と朋子を中心に集まっているグループ。
男は俺だけでハーレム展開なんだけれども、確実に飯仕度要員だから素直に喜べない。
その証拠に俺を蚊帳の外にして、みんなワイワイと盛り上がっている。
(来部さんと星空さんも参加するのか…決めたっ!!俺は厨房にこもる)
女子会に野郎が一人混じるなんて、地獄でしかない。
「シゲ、モテモテのハーレム展開じゃねえか」
いつの間にか近づいて来た有詩がニヤニヤしながら俺に絡んできた。
「正確には俺の調理技術がな。その証拠早速こんな物が来たぞ」
俺は有詩に手元にある一枚の紙を手渡す。
「希望メニュー冷製パスタ、納豆チャーハン、冷汁、唐揚げ、卵焼き、クレープ…シゲ、頑張れ。お前なら出来る!!」
「おう、もう一つ正確に言えば俺しか料理が出来ないんだよね。まあ、あそこは大型のオーブンがあるからパンでも作ってるさ」
青少年センターには大型のオーブンがあるから思う存分パンが焼ける。
「シゲ、頑張れ。とうとう琴美達は女子会の話題で盛り上がり始めたぞ」
どうやら料理当番が決まったから、余暇を優雅に過ごすつもりらしい。
「有詩、お前のグループに今から参加出来ない?」
「出来ない!!お前も参加させたら琴美に嫌われるじゃないか。まっ、夜はゆっくり馬鹿話でもすんべ」
有詩はそう言うと、自分のグループに戻って行った。
どうやら、俺がボッチになっているのを見かねて来てくれた様だ。
「蒲田君、ちょっと良いかな?」
有詩と入れ替わりで来たのは現役アイドルの来部蘭さん。
ニコのダチに聞いたらコメットエンジェルはニコで凄い人気らしい。
「来部さん、どうしましたか?」
「なんか話し方が硬いな…今度、番組で料理を作らなきゃいけなくなったから教えてもらえたら助かるんだけど、駄目かな?」
話し方が硬いのは当たり前、俺には一回二回話した女性とフレンドリーに話す度胸なんてない。
「その前に何を作るんですか?それが分からなきゃ教え様がないですよ」
たまにバラエティーでレシピを教えずに料理を作らせる番組があるが、あんなのは料理や素材に対する冒涜だ。
「何を作るのか分かっていたら、テレビ的に面白くないんだって。基礎的な事で良いの。包丁の使い方とか味の付け方とか。お願い、今度のライブのチケットをあげるから」
「ライブのチケットは一枚でもファンに渡る様にして下さい。俺は人に教えれる程、料理はうまくありませんから。だから、一緒に作りませんか?取り合えず、この中から作ってみたい料理を選んで下さい」
パンなら売れる物を作る自信はあるけど、料理は無理だ。
「うー、蒲田君は私達のライブに興味がないの?」
「興味はありますけど、俺よりライブを見たい人は沢山いますから。それでどれにしますか?」
正直に言うと、ライブでうまくリズムに乗る自信がない。
絶対にファンに絡まれると思う。
「納豆チャーハンに手を出したら琴美に怒られるし、唐揚げと冷製パスタかな。それじゃお礼は何が良い?デートしてあげ…」「ら、ら、ら蘭、何を言ってるの?茂が本気にしたらどうするの?」
慌てた様子でやって来た琴美は来部さんの事を必死に止め始めた。
「あのな俺がいくらモテなくても、今のが冗談だって分かるっての」
いや、モテない方が相手の態度を勘繰るから冗談だと直ぐに分かる。
「えー、料理を教えてもらえるんならデートくらいしてあげても良いのに。それに蒲田君一人に料理をさせるのは可哀想だよ」
「ぬっくっ…それなら私が茂を手伝うから大丈夫!!蘭は忙しいんだから、たまにはゆっくりしてね」
「それからいっそうの事、みんなで作らないか?朋子にも料理を教えたいし…おーい、朋子ちょっと来い」
何時まで、この人達と一緒にいられるか分からないんだし。
「兄貴、なに?」
「合宿ではお兄様が料理を教える事になったから覚悟しておけよ」
特に朋子は包丁を握った事は数える程度でしかない…俺が甘やかしたのが一番の原因なんだけど。
「えー、兄貴が作ってよー」
「俺がいなくなったらどうするんだ?」
俺は高校を卒業したら、家を出るつもりだ。
直ぐに朋子が軽口を返して来るかと思ったら、唐突に服の袖をつかんできた。
「兄に、いなくなっちゃうの?僕を置いてどっかにいっちゃうの?」
兄には朋子が小学校まで使っていた呼び方で、不安になった時や落ち込んでいる時に出てくる。
朋子は捨てられた子犬の様な目で俺を覗き込んできた。
「馬鹿茂、朋子ちゃんがあの騒動でどれだけ不安な思いをしたのか分からないの?まだ二ヶ月ちょっとしか経ってないんだよ」
雲知の起こした事件の事はみんな意図的に避けていた。
あの事件は、大人の俺と違い思春期まっただ中の朋子に根深い傷を残したのかも知れない。
感想お待ちしています、
今の時点で好きなキャラがいたら教えて下さい




