モモ
モモがその計画を思いついたのは、1週間後にミオの両親が帰省するという話を聞いた時だった。
「お父さんとお母さんだけ、朝早くから出掛けるんだって。私1人でちゃんと起きれるかな?モモ〜、迎えにきてよ」
「え〜、無理無理。方向逆じゃん」モモはその場は冷たく話を終わらせた。
その4日後、つまりミオの両親の帰省の3日前にモモはミオの家を訪れた。
今日はクラス当番のため、ミオが遅いのは確認済みだ。
ミオの母親は帰って来るまで待っていてほしいと快くリビングに上げてくれた。それとなく帰省の話を振ってみる。
「あの子、最近ボーっとしてるから心配だわ。モモちゃん、朝迎えに来てくれない?」
来た!モモは胸が高鳴るのを隠しながら、無邪気な少女を装って言った。
「もちろんそれは構いませんけど…、そうだ!ミオをびっくりさせたいから内緒で私が朝ご飯作ってもいいですか?」
ミオの母親はいたずらっぽく笑った。
「それ面白い!あの子びっくりするわね。やろうやろう!」
この女ならこう言うのは分かっていた。
「じゃあ、私は朝6時半には出ないといけないから、合鍵を渡しておくわね。何度かミオとうちで料理してくれてるから台所の事は大丈夫だよね…。何使ってくれてもいいから…。モモちゃん、宜しくね。」ミオの母親も乗り乗りだ。
(バカな母親!)1番の難関だと思われた合鍵をも手に入れ、モモは小躍りしたい気分だった。
「あの子、結局帰って来なかったね。モモちゃん本当にごめんね。」
「いえ、ちょっと前を通っただけなので、今日は帰ります。今日私が来たことと例の件、ミオには内緒でお願いしますね。出来たらお母さん達の帰省のこともお母さんからミオには触れないで下さい。」
「オッケー!」ミオの母親は指でオッケーサインを作って笑った
モモもニコッと笑うとミオの家を後にした。
ふぅ〜。これで第一段階終了。あとは…。
モモは家に帰ると、押入れにしまっていた真っ赤な服と、長い黒髪のカツラを被り、鏡の前に立つ。(うん!いい感じ!)
このカツラは髪の本数がかなり多いため、顔を髪でかくせば顔を見られても誰だか分からない。
服とカツラを脱ぐと紙袋に入れ、またそれらを押入れにしまった。
頭の中で計画は完成している。あとは実行するだけ…。