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  作者: 守利上 響
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愛と九条

「ほんとに俺の事女の子だと思ってたんだ。」

「そりゃそうですよ。だってルルだよ!?普通しなくない??そんな名前。」

いつのまにか九条と普通にしゃべっている愛がいた。不思議な感じだった。

ルルと会うことを楽しみにしていたのにいざ会ってみたらタメの女の子ではなく33の男だった。

だが、今その男とふつうにお茶している。普通の高校生に33の男とお茶する機会なんて滅多にないだろう。

端から見たら援交に見られかねない。なかなか異様な二人組だ。

愛は九条の手元を見た。

「結婚してるの?」

九条の左手の薬指には指輪があった。

「あぁ、これ?結婚はしてないよ。」

九条は笑って言ったが愛にはそれが苦笑に見えた。

「彼女いるのにあたしみたいなのと会っていいの?」

「彼女もいないけど、、、」

今度は明らかな苦笑だった。

彼女がいないのならその左手の薬指にはめている物は何なのだろうか。ただのファッションか、、、

「ちょっといろいろあってね。」

「ふぅん。」

九条の過去にさほど興味はなかったが、一瞬見せた悲しい顔が気になった。

あまり深くつっこんではいけない気がしてそれ以上何も聞かないことにした。

「愛ちゃんこそ、彼氏いないの?」

「いるよ。」

「いいの?こんなおっさんと会ってて。」

愛は少し怪訝な顔をした。

初めはルル、タメで女の子のメル友と会う予定だったのに、それを狂わせたのは九条である。

「だってなんだかんだ言ってお茶してるしさ。いやなら帰ったっていいんだし。」

九条は頼んだコーヒーを一口飲みながら言った。

「確かに、、、

最初は不安だったけど変なことするような人には見えなかったから。」

「まあね〜。俺って年のわりには若く見えるし、かっこいいしね〜☆」

「え〜。」

「え〜ってなんだよ。え〜って。」

二人は笑った。

九条は若い子の扱いがうまいというか、自分自身が若いのか、なかなか話がはずんだ。

いつの間にか彼氏の洋平の話までしていた。

「受験勉強でストレスがたまってるんじゃないかな〜。」

九条が言った。そしておもむろに胸ポケットから煙草を出した。

「えっ?」

愛はびっくりして九条を見た。

「ん?」

煙草に火をつけた。

「おっさん!」

愛はいそいで九条のくわえていた煙草を取り上げ空いたカップに押しつけて消した。

「ここ禁煙席だよ!

喫煙席混んでたから禁煙席にしたんじゃん!」

「あ、、、」

九条はしまったという顔をした。

「ごめんごめん。すっかり忘れてた。」

「も〜。しっかりしてよね〜。大人なんだから〜。」

そういいながら上着を着始める。

「あれ?出るの?」

「煙草吸いたいでしょ?近くに公園あるから行こうよ。」

「あ、すいません。」

九条も支度を始めた。

「1150円になります。」

愛が財布からお金を出そうとすると、九条はそれを止めた。

「こうゆうときは大人が払うの。」

と言って九条は上着のポケットから財布を取り出し一万円札をぽんっと出した。

愛は目を疑った。

ちらっと見えただけだが九条の財布の中には札束が入っていた。

少なくとも17、8枚は入っているだろう。

おそらく一般の人で現金で二十万近く持ち歩いている人はなかなかいないだろう。

たまたまお金をおろしたのかもしれないが、、、

「どうも、ありがとうございます。」

札束に驚いてお礼を言うタイミングが遅れたが、九条は愛ににこっと微笑んで見せた。

二人は店を出ると、愛の先導ですぐ近くの公園に来た。

丁度お昼時だからかあまり人がいなかった。二人は灰皿のある奥の方のベンチに座った。

九条は早速煙草に火をつけた。

一口目は吸わずにそのまま吐いた。

二口目でようやく肺に煙草の煙を入れると、深呼吸をしているかのようにゆっくりとけむりを吐き出した。

「ふぅ、落ち着く〜。」

「九条さんってヘビースモーカーなの?」

「ん〜、まあね。ないと落ち着かないね。それに、、、」

煙草を吸う手を止めた。少し間があったが愛は何も言わず次の言葉を待った。

「愛ちゃんがね、すごく似てるんだ。」

「誰に?」

九条は少し悲しげな顔をして愛の方を見た。

そして左手の薬指にはめている指輪を見せた。

「元カノとか、、、???」

「そんなとこ。」

また煙草を吸い始めた。

風の流れで愛の視界の所々が白い煙で覆われる。

上を見るとさっきと変わらずいい天気で、太陽の陽が木々の隙間から二人を照らす。

だが風は冷たく、愛は少し身震いをした。

「寒い?」

「うん、少し。でも平気☆」

「ほんとかよ〜。手貸してみ?」

と言って愛の手を握った。

「冷たいじゃん。どっかあったかいとこ入ろうか?」

「大丈夫大丈夫。あたし冷え性だから手はいつでも冷たいんだよ。」

そうかぁ。と言ってまた煙草を吸う。握った手はそのままだった。九条は何も気にしていないようだが、愛はどうしようかと困っていた。父親と洋平以外の男の人に手を握られるなんて初めてで緊張した。しかも自分の手が冷えているからか余計に温もりが感じられる。愛の鼓動が早くなり大きくなる。九条は自然に手を離した。ほんの十数秒のことが愛には五分にも十分にも感じられた。顔が赤くなってるかもしれなかったので愛は俯いたままで言った。

「ね、ねぇ。煙草っておいしいの?」

九条は驚いて愛を見た。そして短くなった煙草を灰皿に押しつけた。

「吸ってみたいの?」

「ま、まぁ。」

九条は次の煙草に火をつけて一口吸った。そしつそれを愛に吸う?と渡そうとした。

「俺は中学んときから吸ってるからなぁ。」

笑いながら言った。

愛は煙草を受け取るとなれない手つきで右手の人差し指と中指の間に挟んだ。

「俺のちょっと重いからおもいっきり吸っちゃだめだよ。」

愛は頷くと煙草に口を近づけた。口をつけた。ほんの少しだけ吸う、、、

「うぇっ、げほっっごほっっ」

ほんとにちょっとだけしか吸ってないのに気管が苦しくなって咳が出た。

「大丈夫かぁ〜?」

九条は危ないので煙草を受け取り、愛の背中をさすった。

咳がなかなか止まらなかった。

咳のせいで涙も出てくる。よくこんな苦しい物をうまいと言って吸えるものだ。

「お子様に煙草はまだ早いよ。」

九条はからかうように言った。

いつの間にか九条によっかかっていた。

煙草のにおいがした。

自分がいま吸った煙草のにおい、、、。

実際そうだが大人の男な感じがした。

咳は止まったが、もっと寄りかかっていたいと思いそのままでいた。

九条も何も言わずそのまま寄りかからせていた。

不意に九条の手が愛の顔に触れた。

何かと思い九条を見る。目が合うと、心臓が激しく鳴った。

手はまだ顔に触れたままだ。だんだん九条の顔が近くなっている気がする。

どうしよう、、、

鼓動が高鳴る。

目を開けていられなくなった。

そして、さっき吸った煙草の香りが再び口の中に広がった、、、

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